なぜ4000億円あっても幸せになれなかったのか?金の亡者に群がられた「孤独な相続娘」の悲劇
全米にディスカウントストア帝国を築いたウールワースの孫娘、バーバラ・ハットン。約4,000億円という莫大な遺産を得たことをきっかけに、彼女の人生は常に孤独に覆われてしまいます。 【写真】「孤独な相続娘」30年間固形物を口にせず50代で車いす生活に… 自死した母の第一発見者となり、父の育児放棄、そして最愛の息子の死など、「可哀そうなリッチガール」と揶揄された彼女が、生涯を通じて問いかける「真の幸福」の正体を紐解きます。
黄金の揺りかごであげた産声
1912年、全米にディスカウントストアを展開したフランク・ウィンフィールド・ウールワースの孫娘として生まれたバーバラ・ハットン。当時の国家予算にも匹敵する莫大な資産と、誰もが羨む社交界の頂点の座を生まれながらに手にした、リッチベビーの誕生でした。その輝かしいバックグラウンドとは裏腹に、彼女の瞳には幼少期からどこか深い影が宿ります。 父フランクは仕事と愛人に夢中で家を空けがちであり、母エドナは夫の不貞に悩み、精神的に不安定な日々を送っていました。バーバラは巨大な邸宅の中で、多忙な両親の代わりに、雇われた大勢の乳母や使用人に囲まれて育ったのだそう。幼い子供がもっとも必要とする、親のぬくもりはそこにはなく、彼女にとって家は冷たい牢獄のような場所だったのです。
「ママ、起きて」母の冷たくなった遺体を目撃
バーバラがわずか6歳のとき、彼女の人生に大きな影を落とす悲劇が起こります。ニューヨークのプラザホテルで、母エドナが夫の浮気に絶望し、自ら命を絶ったのです。その遺体を発見したのがバーバラでした。彼女はこの時、冷たくなった母親の耳元で「ママ、起きて」とささやき続けたと言われています。 この凄惨な体験に対し、大手投資銀行に勤めていた父フランクは、娘を抱きしめるどころか妻の死を思い出せる彼女を疎ましく思い、遠ざけるようになります。寄宿学校や親戚の家を転々とたらい回しにし、親の愛という土台を一度も与えなかったのです。 6歳で母親が持っていたウールワース家の遺産を引き継ぎ、12歳で祖母の遺産を相続。21歳になった時にはその資産総額は約4000億円にものぼり、この莫大な資産が、孤独な少女を守る盾ではなく、世界中の金の亡者たちを呼び寄せるための残酷な招待状となってしまうのです。
七度の結婚。信じた愛は幻想
生涯で7度の結婚を経験したバーバラ。「今度こそ真実の愛を」と願うも毎回裏切られ続けました。最初の夫であるムディヴァニ王子をはじめ、その多くは彼女自身ではなくウールワース家の資産に恋をしていた者ばかり。夫たちは彼女の資産で贅沢の限りを尽くし、浮気を繰り返し、離婚の際には莫大な慰謝料をむしり取りました。 唯一、名優ケーリー・グラントだけは彼女の金を求めず、真摯に向き合おうとしましたが、すでに精神を病み、依存症に苦しんでいたバーバラにとって、ケーリーもまた安らぎにはなりませんでした。愛を求めれば求めるほど、資金と精神が削られていき、彼女の心は冷え切っていったのです。
Kyoko Uehara