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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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領主のタウンハウス エリオットside

 エリオットは王城を辞して、タウンハウスに戻った。


 都会の流儀に合わせた、洒落た屋敷。

 領地の館に比べると建物も庭も小さい。王城に近い、大貴族の豪邸に比べたら、おもちゃのように見える。


 領主のタウンハウスに戻ると、賑やかに出迎えられた。

 領地に比べて、気取っているというか礼儀正しい使用人が多く、いつもは静かすぎるくらいなのに。



「フォンとトーマは元気だったん?」

 猫耳をピクピクさせながら、冒険者のサァラが駆け寄ってきた。

 貴族ならあり得ない無作法だが、客人に対して眉をひそめる使用人はいない。きちんと教育されているようで、何よりだ。


「トーマは元気だったよ。

 フォンには会っていないけど、魔塔でいろいろと調査しているようだ」

 思わず頭をなでたくなるが、平民でも女性に対しては失礼に当たるのだったか?

 耳と尻尾が、反則級にかわいい。


「そっかー。フォンは、ちゃんと食べてるかな」

 ルナは領主軍の制服ではなく、ビキニアーマーで屋敷の中をうろついている。

 どうしよう。注意すべきか。

 使用人ではないので強制はできないが……若い男の使用人も多い。目のやり場に困っている者もいるだろう。



「フォンって基本的に我慢して、耐えきれなくなると突然爆発するんだよねん」

「トーマって、あれ、見たことあったっけ?」

 サァラとルナが二人で会話を始めた。


「んー、まだ、なかった気がするにゃ」


 感情を爆発させるということだろうか? 

 魔力が暴走するなら、対策が必要だろう。オルドに伝えなければいけない。

「そんなに、すごいのかい? 暴言を吐いたり、魔力暴走を起こしたり?」


 サァラが首を振って、否定する。

「黙り込んでしゃべらないんにゃ」


「それなら、そんなに困らないんじゃないか?」

 八つ当たりするわけでもないのなら……。


「無言の圧がすごいんだって!

 しゃべらないのに怒っているのがわかるって、体験したことない?

 しかも、敬語のレベルが上がって、慇懃無礼というか」

 ルナが自分の腕を抱えて、怯える仕草をした。


「馬鹿丁寧で、目が据わってて――怖い」

 サァラが眉を寄せ、きゅっと目を閉じた。

 そんなに……か。



「ああ、貴族でそういう奥方いるなぁ」

 大人しい奥方が、夫の浮気が夜会で発覚して――という場面を見たことがある。結局、許されずに離縁していたよ。


 穏やかな人を怒らせたら怖いと、いい反面教師になったものだ。



「フォンもトーマも、国との関わりがあっさり終わるか長引くかわからない。

 状況が流動的だから、君たちにはしばらく屋敷にいてほしいんだけど、大丈夫かな?」

 冒険者活動に出て、暗殺されたり人質に取られたりすると困る。


「王都観光とか、したいにゃ」


「今なら『光牙の道標』がいるじゃん。強い人たちと一緒ならいいでしょ?

 それに、冒険者目線で案内してもらえるの、ありがたい」


 これは、もう事前に打ち合わせているんだろう。

 もしかしたら、光牙の道標にも打診済みか?



「王都内での私の護衛は、騎士が中心になっているから大丈夫だ。

 だけど、てっきりトーマ君たちを待つのかと思ったよ」


「あたいたちが詳しくなって、案内してあげるんにゃ」


「そのころまで、光牙の道標たちがまだ王都にいるかわからないじゃん。

 エリオット様と領に戻ってる可能性もあるんだろ?」


「そういえば、そうか。よく考えているね」

 少し感心した。

 Cランク冒険者とはあまり接点がないが、こんなにいろいろ考えるものだろうか。



「事前に考えて準備すると、慌てないですむってわかったからさ」

 ルナが私の驚きを察知したようで、自慢げに胸を張った。

 胸が強調されて……ああ、ビキニで屋敷をうろつく問題は、なにひとつ解決していなかったな。


「それは『下ごしらえ』かい?」

 トーマは自分のスキルを、地味スキルだと思っている。

 自己評価が低いんだよな。


「そーゆうことにゃ!」


 サァラの満面の笑顔――これが一番の励ましになるだろう。

 近いうちに顔を見せる機会を作ってやりたいものだ。


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