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なぜ若者は「使い捨ての凶器」になるのか――トクリュウ型犯罪の心理 #エキスパートトピ

筑波大学教授
写真:イメージマート

 栃木県で起きた強盗殺人事件は、現代の犯罪の構造変化を象徴しています。実行役として逮捕・補導されたのは16歳の少年らで、背後にいた指示役2人も逮捕されました。「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」「闇バイト」型犯罪では、従来の不良集団や暴力団とは異なり、匿名性の高いSNSを介してその場限りで集められた若者が、重大犯罪の実行役となる構図が目立ちます。匿名のネットワークが人を「使い捨ての実行犯」に変える新しい犯罪心理として捉える必要があります。

ココがポイント

16歳の高校生の少年は(中略)富山英子さんの胸部などを凶器で突き刺すなどして殺害した強盗殺人の疑いがもたれています。
出典:FNNプライムオンライン 2026/5/15(金)

栃木県警は(中略)「匿名・流動型犯罪グループ(匿流(トクリュウ))」による犯行の可能性も視野に、(中略)全容解明を急ぐ。
出典:読売新聞オンライン 2026/5/17(日)

竹前海斗容疑者(28)が強盗殺人の疑いで新たに逮捕されました。(中略)羽田空港の国際線ターミナルにいた(中略)。
出典:NHKニュース 2026/5/17(日)

エキスパートの補足・見解

 本件は、いわゆる「トクリュウ」の危険性を象徴する事件です。従来の暴力団などのような固定的組織とは異なり、SNSなどを通じてその都度集められた人間が、短期間だけ犯罪のために結びつくところが特徴です。

 このため、実行役同士に信頼関係も規範もなく、犯罪を抑制する内的ブレーキが極めて弱いという特徴があります。しかも、今回のように若年で犯罪経験の乏しい「素人」が実行役になると、犯行はより危険になります。

 職業的犯罪者であれば、逮捕リスクを下げるため不要な暴力を避けるという「合理性」が働くことがありますが、未熟な実行役は恐怖や焦り、興奮に支配されやすく、想定外の抵抗や混乱に直面すると一気に暴力がエスカレートしやすいのです。

 結果として、犯行は雑で非効率である一方、過剰に残忍になる傾向があります。これは単なる凶悪性だけではなく、統制の欠如と心理的未熟さの表れでもあります。被害者を一人の生活者としてではなく、「指示されたミッションを妨げる障害物」としてしか認識できなくなる非人間化も起きやすいといえます。この事件は、トクリュウが若者の未熟さそのものを「使い捨ての凶器」として利用する犯罪構造を示しています。

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筑波大学教授

筑波大学教授。博士(保健学)。専門は, 臨床心理学,犯罪心理学,精神保健学。法務省,国連薬物・犯罪事務所(UNODC)勤務を経て,現職。エビデンスに基づく依存症の臨床と理解,犯罪や社会問題の分析と治療がテーマです。疑似科学や根拠のない言説を排して,犯罪,依存症,社会問題などさまざまな社会的「事件」に対する科学的な理解を目指します。主な著書に「あなたもきっと依存症」(文春新書)「子どもを虐待から守る科学」(金剛出版)「痴漢外来:性犯罪と闘う科学」「サイコパスの真実」「入門 犯罪心理学」(いずれもちくま新書),「心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門」(金剛出版)。

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