5千万円投資した高齢被害者も…ある仮想通貨プロジェクトの非道な手口

「立派な方々」を広告塔に20億集め…

仮想通貨は詐欺の巣窟

またも仮想通貨被害である。

今回は、サイバーセキュリティの専門家である松田学元代議士や東京エレクトロンの風間善樹元副社長らを広告塔に、仮想通貨ジュピターコイン関連事業に投資すれば、3ヵ月で元本が1.5倍から2倍になると勧誘、最低でも20億円の資金を集めながら、ほとんど配当することなく実質経営者らが、大半を費消したというもの。

仮想通貨は、今や詐欺の巣窟である。株式でいえば目論見書に相当するホワイトペーパーで壮大な夢のある事業を語り、数十倍の投資リターンを匂わせて勧誘。トークン(通貨引換証)を手にして上場を楽しみにしていれば、上場後、即、暴落で利益どころか購入価格の100分の1、1000分の1となって塩漬けのうえ、諦めるしかない。

ジュピタープロジェクトパンフレットより

ジュピターコインを発行するジュピタープロジェクト(会社名も同じ)はもっと露骨。ジュピターコインは見せるだけ。「3ヵ月で1.5倍」に惹かれてカネを預けると、渡されるのは関連会社TMTなどの金銭消費貸借契約書とアドバイザリー業務委託契約書。トークンを渡されるわけではない。

ジュピタープロジェクト関連に投資した6都道県の被害者11名は、10月29日、同社オーナーの城浩史氏や幹部社員、それにアドバイザーらを相手取り、約1億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

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代理人の加藤博太郎弁護士が説明する。

「仮想通貨事業は形だけ。もともと空気清浄器の預託商法を行なっていたオーナーが、民事刑事で訴えられ、ジュピタープロジェクトを創業して、仮想通貨に乗り換えた。詐欺的要素の強い事件であり、他に被害者もいることから刑事告訴も視野に入れている」

投資は自己責任である

仮想通貨とそれを成り立たせるブロックチェーンが、世界の金融システムを変えてしまう可能性は否定できない。

米フェイスブックが計画を主導するリブラが、米を始め各国の金融当局を揺さぶるのは、通貨発行権という国家の権益を侵すからで、その危機感は逆にリブラの簡便性と利便性の高さを象徴している。

だが、現在発行の夢を売る仮想通貨は、いずれも偽物ばかり。私は本サイトで、野田聖子氏が総務相時代に関与した歌手で俳優のGACKTが広告塔のスピンドル、歌姫マライア・キャリーのコンサートで集客したノアコインを紹介したが、いずれも事業が成り立つ仮想通貨ではない。

・野田聖子と『GACKTコイン』をめぐる圧力騒動の全舞台裏
https://gendai.media/articles/-/56716
・マライア・キャリーも登場!仮想通貨「ノアコイン」本当の実力とは
https://gendai.media/articles/-/58035
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上場して暴落したスピンドルは、発行体が都内千代田区の事務所をたたんで英ロンドンに“逃避”し、GACKTはプロジェクトを外れて知らん顔。

「海外送金コストを安くして、フィリピンの貧困問題を政財官が一体となって解消する」という触れ込みのノアコインは、「そんな事実はない」と、フィリピン政府が否定した代物である。

そういう意味で、詐欺紛い商法が横行する仮想通貨の現状を認識せず、しかも「3ヵ月で1.5倍」というあり得ない投資リターンを信じたのは、投資家の責任と思えてくる。「投資は自己責任」である。

60代女性被害者の後悔

だが、29日、提訴のうえで記者会見した被害者の声を聞けば、ジュピターグループは疑いを巧みな勧誘で消しつつ、有りガネを吐き出させるテクニックに長けており、「騙される方は初めてだが、騙す方は手慣れている」という原則が、ここでも生きている。

約5000万円を投じた60代女性被害者の後悔は痛切だ。

女性は、昨年7月29日、LINEで知り合った投資アドバイザーが勧めるセミナーに参加する。そこで手渡されたのが、「JUPITER PROJECT」と喫されたパンフレット。

グループの幹部が務める講師は「情報セキュリティ産業において独自のブロックチェーンを開発、セキュリティサービスを提供して、その決済をジュピターコインで行なう」というプロジェクトの意義を説明する。

女性が信用したのは、事業の中身より、ジュピター社の代表が風間氏であり、プロジェクトリーダーに松田氏が就いていたこと。ほかにも伊藤秀俊、植木秀憲といった著名企業の役員経験者が関与。「立派な方々の事業」と、“錯覚”した。

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加えて高利の魅力。最初、2500万円を持参したが、「後、500万円で2倍の儲け」という勧誘に乗って金額は積み増され、その間に、松田氏が講師となった仮想通貨カンファレンス、銀座の高級レストランで開かれたシークレットパーティなどで、信用をつなぎとめられた。

10月31日に満期を迎え、スライド(再投資)を持ちかけられ、一度は応じたものの心配になって解約を求めるが、会社側は応じない。

最後は年末の12月28日に、担当幹部が「申し訳ないが、返金はこれだけ」と、20万円を渡すと、その後は居留守が大半で、まともに対応をしなくなった。

ジュピター社とその関連会社の幹部を含む従業員は、今年に入って次々に退社、残っている人間は少ない。倒産は折り込み済みということだろう。

オーナーによる「パワハラ支配」

今年退社した男性幹部は、オーナーである城浩史氏の信じられない「パワハラ支配」を明かす。

「(空気清浄器販売の)ソフトイーエックスもジュピターもTMTも形式上、法人は別ですが同じメンバーで構成された同じ会社です。すべて城さんが取り仕切っていました。毎朝9時に朝礼が行なわれ、成績が悪いと、殴ったり蹴ったり、エアガンを撃ったり、エルメスのムチで背中を叩かれたり、といった暴行を城さんから受けました。その恐怖支配と、迷惑をかけたお客さんに少しでも多く返したいという思いで、必死に働いていました」

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だが、しょせんは自転車操業。しかも「広告塔」が高い報酬を得ており、それ以上に城氏と今回、同じ被告となった城氏の内縁の妻が、高級車(ベントレー、フェラーリ、ポルシェ)、ブランドの服やバック、高額宝石類などに費消していったのだという。

仮想通貨は詐欺の道具――現段階ではそう断定せざるを得ず、仕掛けた城氏はもちろん、単なる広告塔ではなく、もっと深くプロジェクトに関与した著名人たちが同罪であるのはいうまでもない。

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