FRaUwebでは、40年にわたって4000組以上の不登校の親子と向き合ってきた相談員・池添素さんの言葉と実践を、ジャーナリストの島沢優子さんが取材し、連載「子どもの不登校と向き合うあなたへ~待つ時間は親子がわかり合う刻」として届けてきた。連載は大きな反響があり、池添さんのもとには全国、そして海外からも相談が舞い込んでいる。この連載に大幅な加筆・修正を加えた書籍『不登校から人生を拓く――4000組の親子に寄り添った相談員・池添素の「信じ抜く力」』(講談社)が、2025年9月に発売。発売から8カ月経った今もAmazonでベストセラー1位をキープしている。
この記事では、島沢さんが、不登校の子どもに悩み、「〇日で再登校できます」と謳うサポートサービスに入った父・ハジメさん(仮名)を取材している。前編【高校生の子に「罰としてスマホやゲームを取り上げて」…「不登校ビジネス」に救いを求めた親が見たもの】では、デジタル機器の使用を厳しく制限するなど、悩みながらも決められたルールを子どもに課していく様子を伝えた。後編では、その結果、娘さんにどのような変化が起きたのか、そしてハジメさんが池添さんと出会ったことで起きた変化を追う。
【注】本記事は、取材協力者のプライバシーに配慮し当事者の了解を得たうえで部分的な脚色を施しています。
「もう死んでやる」警察が来た夜
約50万円も費やしたのに、何もかもが逆効果だった。ようやく部屋から出てきた娘が「自分の貯金でアニメのグッズを買いたい」と言ってきたが、妻は「そんなのはダメ。ルール守ってないんだから」と毅然とした態度で断った。業者からのメールに書かれている通りの行動をとった。
すると、娘は「もう死んでやる」と暴れ出し、家から出て行こうとした。午前1時をまわっていたが「暴れたときは躊躇せずに警察を呼んでください」がルールなので、妻は110番し「少人数で来てください」と頼んだ。
だが、やって来た警察官は想定よりも多い人数だった。ハジメさん夫婦と娘に事情聴取する途中で青少年課の職員も来て「場合によっては児童相談所に連れて行くことになります」と言われた。最終的に「ただグッズが欲しかっただけみたいですね」と全員帰って行った。
16歳にとってショッキングな出来事だったに違いない。再び部屋にこもるようになった。ハジメさんによると「そもそも会話があまりないので、褒めるにも褒めようがない。ちょっと褒めたら、そんなわざとらしい褒め言葉は気持ち悪いと言われて。逆に態度を硬化させてしまった」という。その後アルバイトを自分で見つけて始めたが長続きせず、秋から通信制の高校に転学した。
そのタイミングで、継続する場合はさらに数十万円支払う必要が出てきた。その頃のハジメさんはもうメールの指示通りには動かず、ルールを無視するようになった。そんな夫の態度に、妻も諦めたようで支援業者との契約を打ち切った。
「夜12時に寝てないと翌日はデジタル機器全部撤去がルールなので、妻が取り上げようとする。でも、もうそこまでやる必要ないよねと言いました。それ逆にやられたらどんな気持ちになる? と妻に言って。妻はなんで協力してくれないの? みたいな話になって、じゃあ私が出て行くみたいな話になったりして……」
振り回された家庭は大きく傾きかけた。
「完全に子どもとの関係も冷え切ってしまって。なんかおかしい、不登校の対応はこれじゃないだろうなと思った」ハジメさんは「ネットじゃダメだ。本を読もう」と書店に飛び込んだ。そこで見つけたのが拙書『不登校から人生を拓く――4000組の親子に寄り添った相談員・池添素の「信じ抜く力」』だった。
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