「あの発言が原因じゃない」守田英正がW杯落選…森保監督が最後まで消せなかった“ある違和感”
なぜ守田は選外となったのか
しかし、今大会を臨む上での戦略には、2人の考えに決定的な隔たりがある。 森保監督は今大会のW杯で優勝するためには守備がキーになると考えている。「隙をつくらず失点をしないことを大切にする」という方針をエース・三笘薫のケガによる欠場が決まる前から明らかにしている。 例えば、以下の2つの要点がある。 ・守備をベースにしたチームを作る(2018年のベルギー戦も2022年のクロアチア戦も「打ち合い」と言えるような試合をしてしまったことが敗因の1つだと分析している) ・決勝トーナメントでの最大5試合のうち、2〜3試合はPK戦になると覚悟している 実際、W杯メンバー26名のうちディフェンスラインの最後の砦となるセンターバックの本職が7人もいて、中盤の守備的なポジションにも本職のセンターバックを起用する方針をたてているのもその一環だ。 そこが、攻撃的なサッカーにトライしたい守田とのサッカー観や勝負勘の違いだ。戦術的・戦略的で守田は落選したとも言い換えられる。
大迫勇也と重なった?守田の姿
ただ、やはり、守田がいないのはあまりに惜しい。その理由をいくつか挙げよう。 大一番で彼が見せる個人の能力の高さはどうなのか。 今年4月7日に行なわれた、チャンピオンズリーグの準々決勝。サッカーの競技面のレベルだけを考えると世界最高峰で、W杯をしのぐレベルにある。欧州CL準々決勝のアーセナルを迎えた試合で、守田のデュエル勝率は73%だった。デュエルの勝率はどうしてもセンターバックの選手たちが高くなりがちだ。それでも、世界屈指のセンターバックであるフランス代表のサリバと並ぶ2位の数値をたたき出した。 何より世界最高峰のプレッシャーと熱量の下で行なわれる試合でここまでのパフォーマンスを見せるというのは、W杯に向けて選手の力量を証明していた。しかも、その種のデータは森保監督が選手を選考する上で大切にしているものでもある。 守田が試合にかける想いの強さはチームの武器にならないのか。 アーセナル戦の前半31分、ルーズボールを巡る争いでみせた守田のスライディングがファールと判定された直後のシーンだった。ファールをアピールして転がったトロサールに駆け寄り、守田は一喝した。接触があったにせよ、「激しく痛がる必要などない!」と伝えるかのように。トロサールを一喝したときの守田の目は"イって"いた。この試合に命を懸けている者の目だった。 そんな想いの強さが本人の意図に反して、別の方向に働く。そんな恐れも森保監督の頭の中にはあったのかもしれない。 例えば、2019年のアジアカップでの前例がある。森保監督が就任してからおよそ半年の時点で行なわれたあの大会は、現在の主力選手たちの多くが日本代表として初めて挑む国際大会だった。当時のエース大迫勇也はチームが勝つ確率を上げるために周囲に強く要求し続けた。大迫は心優しい青年であり、決してエゴイストではない。 ただ、勝利のために要求する。 そして、それは正しい。しかし、当時まだ若手だった現在の主力メンバーたちがその強度に萎縮してしまったという事実があった。大会途中で大迫がケガで欠場していた時間があったため、当時はあまり話題にならなかったが。 「想いの強さ」がチームの空気を乱すことがある。選手たちにそれぞれの特長をいかんなく発揮してもらうことを森保監督は特に大事にしている。ポゼッションサッカーへの強い信念を持つ守田を招集することで、あのデリケートな代表チームの統一感が崩れるのではないか。そう考えたとしても、不思議ではない。 それでも――。 思えば、2022年カタールW杯でクロアチアとのPK戦で敗れた直後、多くの選手が涙を流した。多くの者の涙の理由は「なぜ、勝てなかったか」「自分がPKを蹴るべきだったのか」という、"過去の"悔しさの涙だった。それも大いに価値がある。 守田の場合はちょっと違った。 あの試合の後、「カタールW杯までの4年間が終わり、次の北中米W杯に向けた戦いが始まりますが、どのように過ごしていきたいですか?」と筆者が問うと、少し考えてから、こう話し始めた。 「この4年、本当にあっという間で。自分は(W杯)予選から(代表に)入ってプレーしましたけど、本当に"いっときも"無駄にしていなかったですし……」 そこまで話すと、言葉を詰まらせた。こぼれそうになる涙をぬぐい、それでもぬぐい切れず、消え入りそうな声で「すみません……」と一言ことわってから、続けた。声は震えていた。 「本当に、これからは1日も無駄にできないので」 涙腺は、これからやってくる厳しい日々に想いを馳せたとき崩壊した。 守田英正とは、「未来」を見つめて、涙を流す人間なのだ。 だからだろう。2025年の7月19日、守田はお参りに出かけている。ちょうど1年後のその日、2026年W杯の決勝が行なわれるからだった。決勝から逆算して、やれることは何でもやりたい。その一念からだった。 そんな強い想いを持っているものがチームのために100%コミットできれば、それは大きな力になる。 そうなるための作業を、森保監督が十分にできなかったのか、したけれども無理だったと判断したのか。あるいは、限られた時間をそこには割けないと思ったのか。それは森保監督が胸の中にしまっておくたぐいのものだ。 ただ、この結末はあまりに残念だった。 守田の能力と想いの強さが日本サッカーにもたらす影響について考えれば考えるほど、そう感じずにはいられない。 取材・文/ミムラユウスケ
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