とにかく悩む顕彰馬選定……オジュウチョウサンに今年も投票しなかった理由(日曜日はガチ#13)
■JRA賞と顕彰馬の投票、似ているようで全く違う
2026年の顕彰馬選定の投票が始まりました。
締め切りは5月31日なので、色々と話題になるのは6月でしょうけど、すでに僕は投票を終えましたので、JRA賞のときと同じように、投票に関しての話をしましょうかと。
このような投票結果には賛否が必ずあり、競馬ファンの方はそれを指摘する権利があると思っています。
さらに言えば、僕らのような投票権を持っている人間は、それを説明する義務があるとも考えています。
説明する人は少ないですし、これまでの僕もしてきませんでしたが、現在は説明をする場所があるので……。
このnoteですね。
ならば、自身の投票に関しての説明をちょっとしていこうかな、という感じですね。
■範囲が広い=記者の視点(プライオリティ)にも幅が出る
JRA賞と大きく違う点は、当該年度においての活躍という、狭い範囲での成績などから判断するのでなくて、様々な観点から中央競馬の発展に特に貢献があった馬を選出するということ。
違う年代、違うカテゴリーの馬を同じステージに立たせ、そこで序列を付けるのですから、同世代、同ジャンルで判断するJRA賞よりも、はるかに難解ですし、どこにプライオリティを置くかで、選択する馬も大きく変わってきます。
昨年でいえば、オジュウチョウサンが選出されなかったことが話題になりましたが、批判を覚悟で言えば、僕はオジュウチョウサンに投票していませんし、昨年は74%を集めていますから、マイナーな26%に属している立場。
でも、これもプライオリティの話になるんですよ。
オジュウチョウサンの偉業にケチを付けているのではなく、残した実績に関してのリスペクトもしています。
でも、僕の中のプライオリティは他のところにあるよ、ということなんですね。
「あの馬を選出しないのなら、今後も障害馬からは選出しないんだな?」
そんな声もありましたけど、僕に関してはそうです。
今後も障害馬から選出することはないと思います。
もちろん、そこだけで線引きしているわけでなくて、グランドナショナルなどでの勝利のような、世界レベルでのエポックメイキングな出来事。
繁殖入りしてからの優秀な成績(GⅠ馬などを輩出)など、さらなる理由が付加されれば、当たり前のように投票するでしょうね。
その部分こそ、僕がプライオリティを置いている部分なので。
そのあたりのことも含めて、ちゃんと説明していきたいと思います。
あくまで僕の個人的な意見なので、批判はしないでくださいね(苦笑)
■顕彰馬の選出理由は3つの理由から成り立っている
最初に顕彰馬に選定されるための条件を。
①競走成績が特に優秀であると認められる馬
②競走成績が優秀であって、種牡馬又は繁殖牝馬として、その産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬
③その他、中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬
記者クラブ経験通算10年以上の僕は4頭への投票権が与えられています。
で、僕のような権利を持った人間=投票者数の4分の3以上に支持されると、晴れて顕彰馬となるわけですね。
オジュウチョウサンを推す人は①なのでしょうが、僕が最も重きを置いている選出理由は②。
なぜなら、競馬の発展=競走馬の進化が重要と考えていて、その根底に生産があると認識しているため。
イクイノックスやアーモンドアイのように、「世界レベルの認知度を伴った成績を残した馬」であれば、選出対象になった初年度から迷わず投票しますが、ほとんどの場合はちょっと様子を見ます。
キングカメハメハもそうでしたし、ロードカナロアもそのような配慮をした記憶があります。
■近年になって、評価を上げた日米のオークス馬
最初は選出の対象に考えていなかったにも関わらず、この数年で一気に評価を高めた馬がシーザリオ。
今回の最初の1票は彼女に入れました。
自身が国内外のGⅠ馬というだけでは物足りない顕彰馬(それでも十分にすごいことなのですが、そのレベルの馬が複数いるので)の選定において、3頭の産駒(エピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリア)がGⅠ馬になり、その3頭が種牡馬になって、GⅠ馬の父にもなりました。
優秀な息子たちを通じ、シーザリオの名前は血統表の中に長く刻まれていくでしょうし、年間で1頭しか産駒を残せない牝馬であることを思えば、これは本当にすごいこと。
これからの日本競馬を考えた場合、②だけでなく、③にも値する功績ではないかと思うんですよね。
繁殖成績に注目している記者は僕だけでなく、彼女への得票率は2023年=4%、2024年=9%、2025年=17%と3年で4倍以上になっています。
もっとも、75%の数字はあまりにも遠いものであり、タイムリミットが迫っていることを思えば、彼女が選出されることはないでしょう。
でも、このような視点で見ている記者が全体の17%もいることを、個人的に嬉しく思っているのです。
■2頭目の選出はあの女傑
今年、新たな選定対象として、ドウデュースが登場します。
2歳時に朝日杯FS。
3歳時に日本ダービー。
4歳時に有馬記念を制して、引退年度となった5歳時に天皇賞・秋、ジャパンカップを勝ちました。
4年連続でGⅠを勝っているだけでなく、そのどれもが中央競馬のメインストリームと呼べるGⅠ。
非常に人気の高かった馬で、中央競馬の発展にも貢献しましたよね。
その部分を評価して投票する人はいるでしょうし、僕もそこを高く評価している1人。
しかしながら、ドウデュースを評価して、未だに選出されていないブエナビスタを評価しない理由がないのも事実です。
彼女も2歳時に阪神JF。
3歳時には桜花賞とオークス。
4歳時にはヴィクトリアマイルと天皇賞・秋を勝ち、5歳時には悲願だったジャパンカップを制覇するなど、4年連続で主要GⅠを勝っている馬ですから。
ドウデュースに投票するのであれば、ブエナビスタにも投票しないと整合性が取れませんし、逆の観点で言えば、これまでの僕はブエナビスタに投票し続けてきましたが、同じ理由を持つドウデュースの登場によって、投票に悩まざるを得なくなりました。
この部分が顕彰馬の投票は難しいんです。
結果的に僕は今年もブエナビスタに投票し、ドウデュースは翌年以降に持ち越すことにしました。
先ほどに少し触れた②の動向を見るという形ですね。
僕の選出した馬が卒業(顕彰馬に選出、もしくは選出される権利を失う)しない限りは、この形でいくつもりですが、ブエナビスタの繁殖成績は芳しいものでなく、逆にドウデュースには産駒のブレークが予想できる。
ドウデュース産駒からGⅠ馬が誕生した場合は、ブエナビスタへの投票を飛び越えて、ドウデュースを選ぶ未来もイメージしているんです。
何度も引き合いに出して申し訳ありませんが、オジュウチョウサンとの比較で言えば、単純な競走馬としての価値、馬券の売り上げという形での貢献度、なによりもキャリアを通じたメディア露出という点で、ブエナビスタのほうが上との認識を僕は持っています。
競走成績を理由にした投票をするのであれば、その部分も含めて考えたい。
ちなみにブエナビスタの過去3年の得票率は28%→25%→34%。
まだ時間があるとはいえ、早い段階で顕彰馬に選定してあげたい馬です。
■3頭目は香港で活躍した馬
モーリスの評価が思っている以上に低いことに驚いています。
すぐに選出されると思っていました。
6つのGⅠを勝ち、そのうちの3つが香港でのもの。
スーパースターがいる現在の香港競馬と状況が違うとはいえ、マイルGⅠだけでなく、別カテゴリーの香港カップまでを制覇している。
①の稀有な競走成績の評価をしていい馬と考えています。
世界に出ていくことが当たり前となった現在、ワールドワイドな活躍は国内の主要GⅠと同じように扱うべきと僕は考えていて、特にモーリスのような自身の能力に見合わないカテゴリーしか用意されていない馬は、それしか評価を上げる術がない。
これはフォーエバーヤング、テーオーエルビスと一緒ですね。
ちなみにカーインライジングのおかげで、結構な苦労をしているサトノレーヴも、自身の価値の証明という意味で、素晴らしいチャレンジをしていると僕は考えています。
しかも、モーリスはジャックドール、ジェラルディーナ、ピクシーナイトにアドマイヤズームなどの活躍馬を輩出し、シャトル種牡馬として渡ったオーストラリアでヒトツというGⅠ馬も出している。
爆発的な成功ではないかもしれませんが、現役時代の評価を下げるものではないんですよね。
なので、近年の僕はモーリスへの投票を続けているのですが、この馬の選出も厳しいかもしれません。
ちなみに過去3年のモーリスへの得票率は、16%→22%→31%となっています。
■選出にはタイムリミットがある
その年の活躍を単純に評価するJRA賞と違い、顕彰馬の選出は「該当馬であるかどうか」の確認も結構な難易度です。
顕彰馬の選定を行う年(今年は2026年)の前年の3月31日(基準日という表現をします)までに、競走馬登録を抹消された馬となっているんですね。
ちょっとややこしいですけど(苦笑)
2024年12月25日に抹消されたドウデュースの基準日は2025年の3月31日。
なので、今年から彼も選定対象になりました。
一方で、選定対象には期限もあり、これがまた難しい表現をされているのですが、規則には「基準日の翌日において、競走馬登録を抹消した日から起算して20年を経過していない馬に限る」とされています。
2006年11月30日に登録を抹消されたハーツクライ。
細かい規則を書けば、「2027年の顕彰馬選定は2026年3月31日が基準日で、判定日(基準日の翌日)が同年の4月1日になるため、抹消から19年5か月が経過した状態」ということなのですけど、わかりやすく言えば、チャンスは残り2回ということです。
■ハーツクライを選出する理由
ハーツクライの競走成績はブエナビスタ、モーリスなどよりも見劣り、産駒のドウデュースよりも下で、オジュウチョウサンのようなインパクトもありません。
しかしながら、彼が種牡馬として残したもの。
この大きさは②の価値が素晴らしいと評価したシーザリオ(彼女の抹消日は2006年4月19日)に優るとも劣らないものです。
ディープインパクトと並ぶサンデーサイレンス系の大黒柱として活躍し、先のドウデュースの他にリスグラシュー、スワーヴリチャード、ジャスタウェイにシュヴァルグラン。
表彰に値すると思うんですよね。
もちろん、繁殖成績の話をすれば、キズナやドゥラメンテのような馬の名前を出さなくてはいけませんし、ハーツクライの権利が失効すれば、僕はそちらに目を向けると思います。
実際、この2頭のどちらかをハーツクライと入れ替えようか……すごく悩みましたし。
どちらが正解だったのかの答えは出ていませんが、取捨選択をしなくてはいけないので、残り2年のハーツクライを選び、キズナやドゥラメンテのような、選出期限の失効までに時間のある馬は様子見させてもらっている。
ハーツクライの得票率は2%→5%→15%と上がってはいるものの、75%にはかなり遠いので、選出することなくリミットを迎えるでしょう。
それでも、僕は前述した理由からハーツクライに投票しました。
マイナーサイドの意見でも、明確な理由があるのであれば、その投票に問題はなく、僕はその理由を持っている。
なので、批判は受け付けませんよ(苦笑)
■選出のためのわかりやすい〝区別〟が必要か?
最初に言いましたけど、よほど特別な馬でない限り、競走成績だけでなく、繁殖成績も加味した選考を僕は心掛けています。
それでも、票数が足りないんです。
投票したい、選出されてほしい名馬はたくさんいるんです。
三冠牝馬で産駒4頭がオープン馬のアパパネ。アカイトリノムスメというGⅠ馬まで出している彼女が選ばれない理由がわかりませんが、前述したように僕は投票していません。
できない……との表現が適切でしょうね。
初子のベレシートがGⅠを勝つようなら、グランプリ競走を3勝もしているクロノジェネシスも、いずれは対象に入ってくると思います。
競走成績をメインにするのなら、日本馬として初めてドバイワールドカップを勝ったヴィクトワールピサも選んであげたいですし、無敗で三冠を制したデアリングタクトが選ばれない理由もない。
でも、一定数に届いていないので、選出されないんです。
一定数に届かせるための手持ちの票数がないんです。
わかりやすく、GⅠの数で……なんて言ってくる人もいますが、それだと自身のカテゴリーに国内GⅠが多い馬が有利になる。
ちなみに現在の日本馬で、僕が最も注目している存在はテーオーエルビスですが、彼がGⅠを10勝することはないでしょう。
なぜなら、彼の走るカテゴリーに、テーオーエルビスにふさわしい舞台が用意されていないからです。
なので、単純作業で決めるのでなく、競馬サークルに極めて近く、それでいて一定の距離感を持つことが必要な僕らの声を、JRAは必要としてくれているわけですね。
◾️顕彰馬は名馬の中の名馬
繰り返しになりますけど、オジュウチョウサンの成績は素晴らしかった。
スター性も申し分ありません。
僕だって1票を投じたいですし、1票を投じる記者に対して、異論を挟むこともありません。
グランドマーチス以来の障害馬の受賞を心の底から願ってもいますよ。
同馬の主戦騎手だった寺井千万基さんも喜ぶでしょうし!
でも、限られた票数の中で、それらの名馬と比較したとき、僕の中で「断然上」と言える部分が見つけられなかった。
だからこそ、このような形になってしまっているのです。
◾️顕彰馬は高き頂
僕がピックアップした4頭全てが今回も選ばれないでしょうが、それも仕方のないこと。
JRA賞と違い、顕彰馬表彰は高い頂。
限られた名馬の中から、さらに限られた名馬のみに与えられる名誉であるのなら、ほとんどの人間の声を集約しなくてはいけない。
選ばれないことが当たり前の世界だからこそ、選ばれた馬の名誉はJRA賞の何倍もの価値があるのです。
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