ベッセント財務長官のぶっちゃけ政策:All-In Podcastより(前編)
人気のポッドキャスト「All-In Podcast」がワシントンDCのホワイトハウスに訪れて、スコット・ベッセント米財務長官に行ったインタビュー・コンテンツを紹介します。
ぶっきらぼうなトランプ大統領の発言によって市場は右往左往しがちですが、最近メディアへの登場回数が増えているスコット・ベッセント米財務長官は、そのトランプ大統領の宙に浮かんでしまいがちな発言に隠れた話(つまりトランプ大統領の説明が足りない部分)を補完して、マーケットや社会とのコミュニケーションの役割の一端を担っているように思われてなりません。
一時間を超える長尺のコンテンツのため、前編と後編に分けて投稿したいと思います。まずは、前編からです。
尚、インタビュー前のイントロについては省略しています。
1. インタビュー(前編)
(1)経歴、金融への関心、マクロ投資
[チャマス・パリハピティヤ]
本日はとても重要な日です。本日は第79代財務長官のスコット・ベッセント氏にご参加いただいています。
この機会は、経済の仕組みだけでなく、今この瞬間の状況について詳しくお話しする良い機会だと考えています。
具体的には、財政赤字、関税、予算、経済、金融政策、財政政策などについて触れながら、米国を再び偉大な国にするための計画を皆さんにご理解いただけるようお話ししていきたいと思います。スコットさん、本日はありがとうございます。
[スコット・ベッセント](財務長官)
こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。
[チャマス・パリハピティヤ]
では、まず少し過去にさかのぼってみましょう。サウスカロライナ州でお育ちになり、お父様は不動産デベロッパーをされていましたよね。金融に対する情熱はどのようにして生まれたのでしょうか?
[スコット・ベッセント]
正直に言うと、金融そのものに対する情熱がどこから来たのかははっきりとは分かりません。おっしゃる通り、父は不動産デベロッパーを営んでいて、いわば景気の波に乗ったり、逆に苦しんだりという、いわゆる好景気と不景気を繰り返すタイプの人でした。そういう姿を見ていたからこそ、リスク管理に興味を持ったのかもしれません。幸いなことに、私はイェール大学に進学する機会に恵まれましたが、その頃は自分が何をしたいのか、はっきりとは決めていませんでした。
1980年に入学した当時は、今では信じられないかもしれませんが、「パンチカード」というものがありました。ちょうどその頃、イェールのコンピューターシステムがパンチカードから画面操作に移行した時期だったんです。私はコンピューターサイエンス専攻を考えてみたり、あるいは新聞記者になろうかとも思っていました。というのも、当時は新聞が多くの人に読まれていた時代でしたから。まさに過去の時代の「パンチカードと新聞」の話です。
そんな中、ある方のもとでインターンとして働く機会がありました。その方が投資ビジネスについて本当に丁寧に教えてくださり、私はそこから多くを学びました。そして...
[チャマス・パリハピティヤ]
その方は誰ですか?
[スコット・ベッセント]
その方はジム・ロジャーズです。彼は有名な方で、ジョージ・ソロスの最初のパートナーだった人物です。彼はちょうど世界一周のバイク旅行を終えたばかりで、『インベストメント・バイカー』という本を書いていた頃でした。本当に興味深い人物でした。
私はそこで投資の仕事に携わり、これこそが自分がやりたいことだと思いました。投資は数字を扱うので、自分の得意な計算スキルを活かせるだけでなく、物語を組み立てるような側面もあります。そして何より、人の感情が大きく関わる点がとても面白かったんです。
[チャマス・パリハピティヤ]
当時は株式だけでなく、債券や通貨など、幅広く取引されていたのですか?
[スコット・ベッセント]
いえ、最初は株式から始めて、何年かその仕事を続けました。その後、最終的にソロス・ファンド・マネジメントに入りました。そこで、私のメンターであり素晴らしい投資家でもあるスタンリー・ドラッケンミラー氏の下で働くことになったんです。
彼は驚異的な人物で、確か40年以上、一度もマイナスの年がないんです。彼の隣に座って仕事をしていると、「自分は一日中何をしてるんだろう?」と思うほどでした。
[デイビッド・フリードバーグ]
そして、彼はキャリアの中で幾度となく、全力投資として知られていますよね。
[スコット・ベッセント]
そうです、まさに全力投資。本当に思い切った投資をされる方です。そして…
[デイビッド・フリードバーグ]
それも、彼が正しいと確信したときだけですよね。
[スコット・ベッセント]
そうですね。でも、彼は、考えを変えることにおいても最高の人物なんです。
[デイビッド・フリードバーグ]
その通りですね。
[スコット・ベッセント]
私がこれまで見てきた中で、最も優れた判断力を持った人だと思います。
[チャマス・パリハピティヤ]
ドラッケンミラー氏には有名な格言がありますよね。投資してから調査せよ、という。
[スコット・ベッセント]
そうですね、彼の名言はいくつもあるんです。だから私は、彼にぜひ本を書いてほしいと思っているんですよ。素晴らしい言葉が本当にたくさんあるので。ぜひ、あなたからも彼に働きかけてみてください。投資してから調査せよ、とか、貪欲であるには勇気が必要だ、とか、有名な言葉がいくつかあります。
それで私は、マーケットにすっかり魅了されました。というのも、マーケットはすべてが詰まっているからです。数字を扱う定量的な面もあれば、直感や判断が求められる定性的な面もある。そして何より、常にリアルタイムで結果が返ってくるんです。
長期的な視点を持ちながら、同時に短期的な動きを見極める必要があるという点がとても面白かったですね。私はその世界に夢中になり、35年間、いわゆるマクロ投資という分野に携わってきました。
最終的には、通貨、債券、商品、株式、そして一部のクレジット投資も手がけるようになり、世界中を飛び回りながら、各国のリーダーと会って次の政策の動きを見極めるという仕事をしていました。
[デイビッド・フリードバーグ]
それはとても重要なことだと思います。マクロ投資家やマクロトレーダーと話していて感じるのは、その役割の大部分が中央銀行の動きを読むことにあるということです。
政府債券の動向を見極めることはもちろん、中央銀行だけでなく世界中のエコノミストたちと関わりながら、資本がどのように世界を流れているのかを学ぶことが重要なんですよね。マクロ投資家の役割としては、そういう説明がしっくりくるでしょうか?
[スコット・ベッセント]
そうですね、確かにその通りです。マクロ投資にはそういった側面が多くあります。
もうひとり素晴らしいマクロ投資家に、ブルース・コフナーという方がいます。彼が言っていた言葉に、自分が成功したのは異なる未来を想像し、それが現実になると信じることができたからだ、というものがあります。
重要なのは、その未来が起こり得ると信じること、そしてリスクを管理することです。たとえば、もし鉄のカーテンが下りたらどうなるか?といったシナリオを思い描くことですね。これは皆さんがベンチャーキャピタリストとしてやっていることと同じかもしれません。つまり、世界がこれまでとは異なる状態で成り立つとしたら?と考えてみることなんです。
(2)伝説のトレード(イングランド銀行破綻)
[チャマス・パリハピティヤ]
では、その話を少し掘り下げて、1992年に話を移しましょう。おそらく、その出来事はあなたのトレードが広く知られるきっかけになった、最も有名な瞬間の一つですよね。あなたとドラッケンミラー氏、そしてソロス氏が、いわば、イングランド銀行の背骨を折ったと言われる出来事です。
当時の状況はとても興味深く、さまざまな要素を見極める上で重要な視点があります。そこで、あのときのイギリスの状況や、あなたがどのような新たな現実を見出したのかを教えていただけますか? その話を基に、今の米国と比較する流れでお話を伺えればと思います。
[スコット・ベッセント]
そうですね。あの出来事は良い歴史的な事例ですし、3つの重要な側面が絡んでいます。
私はアナリストとして関わり、スタンはポートフォリオマネージャーとしての役割を担っていました。そしてある意味では、ジョージがリスクマネージャーの役割を果たしていたんです。
[チャマス・パリハピティヤ]
なるほど。
[スコット・ベッセント]
私は当時、イギリスのオフィスを担当していて、現地で働いていました。あるとき、まさに「ひらめき」がありました。
私が気づいた点、つまり他の人とは違う視点を持ったのは、イギリスではちょうど住宅ブームが起きたばかりだったということです。当時のイギリスの住宅ローンは長期固定金利ではなく、すべて変動金利でした。ですから、もしイングランド銀行が水曜日に金利を引き上げれば、その影響で住宅ローン金利が金曜日には上がる、というような状況だったんです。
さらに、イギリスは当時、欧州為替相場メカニズム(ERM)という制度に参加していて、ドイツマルクと一定の為替レートの範囲内に収めなければなりませんでした。私は、「もしイングランド銀行が金利を引き上げて通貨防衛を図れば、イギリスの住宅ローン利用者が破産してしまい、そんな状況はとても長くは続かないだろう」と考えました。
スタンの優れた分析力が光ったのは、こうした条件がとても有利な非対称な賭けを生むと見抜いたことです。為替相場のバンドの上限に通貨を押し上げると、イングランド銀行の方針としては、その動きを押し戻そうとするはずです。ですから、最悪でも2.5%程度の損失で済むという計算でした。
スタンがジョージ・ソロスにこの作戦をやろうと思います、と話した際、ジョージは、いくら投資するつもりだ?と尋ねたそうです。スタンは、ファンドの100%くらいですかね、と答えたのですが、ソロスは不機嫌そうな顔をしたそうです。スタンは、何か間違ったことを言ったかなと思ったそうですが、次にソロスは、なぜ3倍の額を投資しないんだ?と言ったそうです。
結果として、私たちはその為替相場のバンドの上限に押し上げる戦略を取りました。イングランド銀行、つまりイギリス政府は無制限にポンドを買い支えなければならなくなり、金利を引き上げ続けました。これは1992年9月のことです。
結局、イングランド銀行はその高金利の圧力に耐えきれず、ポンドは為替相場のバンドから外れて暴落しました。私たちはこの非対称な賭けによって、1日で約20%の利益を上げました。
そして、ここでスタンの真の才能が発揮されました。ご存じかもしれませんが、バックギャモンというゲームでは、次の手の次の手を考えるのが重要です。スタンは、この先に次の取引があると見越していたんです。
1日で20%の利益を上げましたが、実はその後の「次の取引こそが本当の妙手でした。この部分はあまり知られていませんが、その年の残りの期間でさらに約20%の利益を上げることができたんです。
[チャマス・パリハピティヤ]
それはすごいですね。
その瞬間に見えていたのは、いわゆる実体経済と金融経済の間に、ある程度、もしくは大きな乖離があるという状況だったのではないでしょうか。
これについて、あなたはこれまでに何度も、メインストリートとウォールストリートの二極化という言葉を使われていますよね。では、2025年の現状についてはどのように見ていますか? 1990年代初頭など、これまでの取引経験と似ている部分はありますか?
(3)米国経済の現状と将来の展望
[スコット・ベッセント]
そうですね、結局のところ、持続不可能なものは、いずれ持続できなくなるという話に行き着くのだと思います。
実は、私が今ここにいる理由の一つは、約18か月前にトランプ大統領に会いに行ったことなんです。私は30年ほどトランプ一家とは面識がありましたが、大統領ご本人とはそれほど親しいわけではありませんでした。それでも、当時のバイデン政権が進めていた債務と財政赤字の状況に強い危機感を抱き、自分も選挙活動に関わりたいとお伝えしたんです。
[デイビッド・フリードバーグ]
終わりのない景気刺激策、終わりのない支出が続いていますよね。
[スコット・ベッセント]
そうなんです。しかも、景気が安定している時期、あるいは戦争状態でもないのに、そうした支出が行われているのは今回が初めてのことです。私は非常に冷ややかな見方をしていました。というのも、支出、支出、支出と続けた結果、最終的には増税せざるを得なくなると考えていたからです。
そうなると、抜け出せない均衡状態に陥ってしまい、最終的にはヨーロッパ型の社会民主主義、いわば停滞した社会のようになってしまうのではないか、という懸念がありました。
それに加えて、移民政策に対しても非常に冷めた見方をしています。たとえば、公式に言われている移民の数は約1,200万人ですが、大統領は2,200万人と言っています。真実がどちらなのかは分かりませんが、私は大統領の数字に近いのではないかと考えています。
問題は、これだけ多くの人が国境を越えてきた以上、もはや彼らを帰国させるのは不可能に近いということです。問題があまりにも大きくなりすぎて、現実的に対応ができない状況になっているのです。
とはいえ、私は金融の専門分野に集中するようにしています。金融の観点から見ると、今の状況は、引き返せない地点に向かって進んでおり、国全体に進歩主義的な金融価値観(Progressive Financial Values)が押しつけられているように感じます。そして、その先には抜け道がないのではないかと危惧しています。
[チャマス・パリハピティヤ]
その時期には、かなり深刻な賃金の抑制が見られましたよね。そして、株式市場は非常に活況でしたが、それは単にマネーサプライが常に供給され続けていたからに過ぎませんでした。
[スコット・ベッセント]
そうなんです。資金が常に市場に流れ込んでいたというのが大きな要因です。さらに、これは先ほどの「メインストリート対ウォールストリート」の話にもつながりますが、カマラ・ハリス副大統領が、私は中間層のために闘うと発言したときには、本当に腹立たしく感じました。
というのも、実際には彼女やその政策が、意図的かどうかは別として、中間層、さらには社会の下層50%の人々を事実上壊滅させてしまったからで、私たちは今、まさにそのような状況に直面しているのです。
[デイビッド・フリードバーグ]
つまり、購買力が低下し、インフレが進行したということですよね。
[スコット・ベッセント]
そうです。特に資産を持っていなかった人々にとっては、まさにその通りです。
[デイビッド・フリードバーグ]
それは非常に重要なポイントですね。この点を理解していない人が多いように思います。株式などの資産を持っていた人は、その資産がインフレによって価値が上がりました。
しかし、資産を持っていなかった人にとっては、生活費などのあらゆるものが値上がりする一方で、給与は上がらないため、購買力が著しく低下してしまったのです。
[スコット・ベッセント]
そうなんです。しかも、インフレが上がっただけでなく、ジェイソン・トレナート氏が提唱している「エブリマン・インデックス」と呼ばれる指標を見ると、その影響がより明確になります。
消費者物価指数(CPI)はその期間中に約22%上昇しましたが、「エブリマン・インデックス」は30〜35%以上の上昇だったんです。というのも、所得層の下位25%や50%の人々は、私たちとは異なる生活費のバスケットを持っていて、そちらの方がより急速に値上がりしたからです。
たとえば、中古車の価格、自動車保険、家賃、食料品などが急激に上昇しました。これは単に不公平なだけでなく、社会的に不安定な状況と言えます。
[デイビッド・フリードバーグ]
社会問題としても非常に大きな課題ですよね。
ところで、あなた方がこの状況を分析していた当時、つまり2023年の夏頃の話だったかと思いますが、その時点で、本来どのような対策が取られるべきだったのかという視点があったのでしょうか? そして、その状況はその後どのくらいの期間続いたのでしょうか?
[スコット・ベッセント]
そうですね、民主党側は、大規模な支出法案は救済のために必要だったと主張していますよね。
確かに、その観点は理解できますが、私としては、2021年3月の時点で経済はすでに回復していたのではないかと思っています。ですから、あの時点で行われた支出は、救済規模のパッケージとしては過剰だったのではないかと考えています。
実際、ラリー・サマーズ氏とポール・クルーグマン氏が行った有名な議論を覚えています。サマーズ氏はそのとき、この支出は少なくとも9,000億ドルから1兆ドルは多すぎると指摘していました。
さらに、FRBの対応も遅れてしまい、2022年の夏頃にはすでに手遅れになりつつありました。その結果、どうなったかというと・・・
想像してみてください。上位10%の人々は資産を持っていて、株式市場は好調でした。一方で、下位50%の人々は資産がなく、さらに負債を抱えていました。クレジットカードの負債は膨らみ、住宅ローンの負担も重く、家の価格はCOVIDの影響で急騰し、マイホームの購入は非常に困難な状況になりました。
こうした状況は、まさにアメリカン・ドリームの終焉を象徴していたと思います。そして、その後もこうした格差の影響は続いています。
(4)アメリカン・ドリームの変化と社会の分断
[チャマス・パリハピティヤ]
スコットさん、今のアメリカン・ドリームとは、どのようなものだとお考えですか?
[スコット・ベッセント]
私は、アメリカン・ドリームは昔から変わらないものだと思っています。ただ、第二次世界大戦後は、米国の家庭の90%で、子どもたちが親よりも多くの収入を得ていました。今では、それが50%程度になってしまったんです。
アメリカン・ドリームとは、家を持つこと、経済的な安定、ある程度の快適さ、そして仕事におけるやりがいを持つこと。家族を養い、選択肢が持てること・・・ たとえば、2つの仕事を掛け持ちしなくても暮らしていけること、そういったものだと思います。
先週か2週間ほど前に、私はニューヨーク経済クラブで、アメリカン・ドリームは安価な商品に支えられているわけではない、と話したんです。すると、マイク・ペンス氏がそれをからかうような発言をしてきました。「いや、それこそがアメリカン・ドリームだ」と言うんです。
でも私は、「ペンス副大統領、この“テレビさえ買えれば満足だ”という経済政策は人々が求めているものではありません」と言いたかったんです。人々が望んでいるのは、中国製の安価な商品ではなく、もっと本質的なものです。
[デイビッド・フリードバーグ]
人々が求めているのは「前進」なんですよね。
以前、ジョナサン・ハイト氏の研究で、幸福度は毎年の純資産や収入の変化によって測られるという話を読んだことがあります。絶対的な収入の多さではなく、自分が少しずつでも前進していると感じられるかが重要なんです。
ただ、その「前進」を目指して、私たちは少し歪んだシステムを作ってしまったのではないかと感じます。つまり、すべての人が持ち家を持つべきだという考えに基づいて、住宅を持つことがアメリカン・ドリームの象徴になりました。
結果として、多くの人が自分の純資産の大部分を住宅に費やすようになった。確か、中間層の純資産の60%は住宅に結びついていると言われていますよね。
さらに、「前進している」と感じさせるために、ローン制度や経済・財政政策を利用して、住宅価格が毎年上がる仕組みを作ってきたわけです。
その結果、今では住宅価格が上がりすぎて、多くの人が家を買えないという持続不可能な住宅バブルに陥っています。
この点で、私たちは何を間違えたのでしょうか? そして、これからのアメリカン・ドリームはどのような姿であるべきだとお考えですか?
[スコット・ベッセント]
そうですね、私はこの問題の多くは、希少性に起因していると考えています。
たとえば、サンフランシスコのような地域では、非常に厳しい用途制限があるため、住宅の供給が限られていて、結果的に住宅が希少な存在になっています。
また、アイビーリーグの教育についても同様です。より多くの人にアイビーリーグの教育へのアクセスが開かれ、さらに留学生も増えましたが、ハーバード大学、イェール大学、プリンストン大学などで授与される学位の数自体は、1950年代からほとんど変わっていません。
こうして、希少なものへの需要が高まる一方で、手に入れられない人々の間に不安が生まれてしまったのです。さらに、こうした状況は「絶望感」にもつながっているのではないかと思います。
[デイビッド・フリードバーグ]
自分には手が届かない・・・ そう感じる人が増えてしまったのではないでしょうか。
学生ローンは一生かかっても返済できない、マイホームなんてとても買えない、収入が増えてもそれに見合った生活ができるようにはならない。
そんなふうに、多くの人が将来に希望を見いだせなくなっているのだと思います。
[スコット・ベッセント]
そうですね。
[デイビッド・フリードバーグ]
その解決策としては、規制緩和がカギになるのでしょうか?それとも…
[チャマス・パリハピティヤ]
私は、まず最初にデータの問題があると考えています。
今回のトランプ2.0政権で注目している点の一つは、データの信頼性に対する認識が以前の政権よりも深いのではないか、ということです。
これまでの政権では、データを都合よく解釈して、自分たちがやりたいことを正当化するような傾向が見られました。いわば、自分の行動を正当化するためのデータを探してくるという姿勢です。
この問題の背景には、経済の現状を正確に把握するのが難しいという点があります。
たとえば、GDPの数値は信頼できるのでしょうか? 非農業部門の雇用統計は本当に正確なのでしょうか?
そうしたデータが十分に信頼できるものでない限り、米国の将来を左右する政策を安心して判断するのは難しいのではないかと感じています。
[スコット・ベッセント]
いや、そうではないんです。こうしたデータは、時間が経つにつれて大幅に修正されることがよくあります。
バイデン政権が犯した大きなミスの一つは、まさにその点です。そして、ある意味ではそのおかげで状況が見えてきたとも言えます。バイデン政権は、人々が実際に感じていることではなく、公表された数値に固執してしまったんです。
彼らは「いや、これは単なる感覚の問題で、あなたたちはどれほど恵まれているか理解していないんだ。これも実現したし、あれも実現した。」と言い続けていました。でも、実際にはそうではなかった。
昨日、『ミート・ザ・プレス』に出演した際に、米国民はドナルド・トランプが経済に対して十分な対応をしていないと考えているという話が出たんです。
そのとき私は司会者にこう言いました。「一つだけ言いたいのは、私は『国民は分かっていない』なんて答えるつもりはない、ということです。私は彼らの感じていることに敬意を払うべきだと思います。そして、その不安の原因が何なのかをしっかりと振り返る必要がある。そこに向き合わないといけない」と。それが、私たちが取り組むべきことなんです。
[チャマス・パリハピティヤ]
さらに深掘りさせてください。人々の不安の根本原因は何だとお考えですか?
連邦政府が管理できる部分で、この圧力を和らげるために活用できる政策のレバーはどこにあるのでしょうか? そして、どの部分は、市場の働きに任せて解決を待つべきものなのでしょうか?
(5)政府支出削減と経済成長戦略
[スコット・ベッセント]
そうですね、私たちは3つのことをしようとしていると思います。先週かその前の週にその話をされたかもしれませんが、「3本の柱」という表現がありましたね。外から見て、その点はとてもよく理解されていたと思います。そこに少しだけ補足をさせていただきます。
[デイビッド・フリードバーグ]
それを聞きたかったんです。私が合っていた部分と間違っていた部分を教えてください。
[スコット・ベッセント]
だいたい合っていましたよ。
[デイビッド・フリードバーグ]
そうですか。
[スコット・ベッセント]
まず1つ目ですが、私たちはこの莫大な連邦債務を減らそうとしています。ただし、一度にすべてを削減するのではなく、コントロールしながら進める必要があります。大統領との個人的な会話はあまり話さないようにしていますが、今回は特別にお話しします。なぜなら、この話が彼の考えをよく表していると思うからです。
私が初めてマー・ア・ラゴで大統領にお会いしたとき、ドアを開けるなり彼が「スコット、この債務と財政赤字をどうやって景気後退を引き起こさずに減らしていくんだ?」と聞いてきました。まさに今の状況がそれです。どうやって債務と赤字を減らしつつ、景気後退を避けるかということです。
そのとき私は「大統領、あなたが勝利した時点で、これはあなたが引き起こした問題ではありません。2028年までに目標を定めましょう。長期平均(the long-term average)に戻るように、ゆっくりと債務を減らしていきます」とお伝えしました。
[チャマス・パリハピティヤ]
長期平均というのは、GDP比で財政赤字が約3%ということですね。
[スコット・ベッセント]
そうです。およそ3%から3.5%の財政赤字対GDP比です。いつも言っているのですが、米国は、売上の問題ではなく、支出の問題があるのです。具体的に言うと、連邦政府の収入はだいたいGDPの18%くらいです。しかしバイデン政権は支出を25%まで膨らませてしまいました。通常はおよそ21%から21.5%のあたりです。
2%のインフレ率、名目GDP成長率が3.8%になると、実質GDPが約18%となり、すべてがうまく整うという計算です。
[デイビッド・フリードバーグ]
そうですね。
[スコット・ベッセント]
実は先週、シンガポールの政府系ファンドの幹部の一人がこちらに来ていました。驚くことに、シンガポールはGDP比で3%の財政赤字もなく、支出は18%に抑えています。彼はこう言っていました。「私たちはトランプ政権と多くの共通点があります。小さな政府を目指し、不法移民を好まず、個人の安全を重視しています。」これがとても興味深いと感じました。
[デイビッド・フリードバーグ]
すみません、確認させてください。政府支出を抑えることが重要ということですが、大きな課題は、現在30兆ドルあまりの債務が積み上がっているという点ですよね。その債務の利息が増え続けており、今や年間1兆2000億ドルもの利払いが必要になっています。その結果、連邦政府の予算の中で利払いが大きな割合を占め、他の政府プログラムへの支出が減らされるという状況になっています。つまり、これまで以上に支出を削減する必要があり、そのために大きな困難と痛みが伴うということですね。
このように高い利払いと膨れ上がった債務がある中で、議会が必要な行動を取るように働きかけることは現実的に可能なのでしょうか?
[スコット・ベッセント]
この共和党の議会の中で、私自身、正直に言うと、財政赤字を厳しく監視する人とは何かよく分かりませんが、おそらく自分はその一人に当てはまるのだと思います。そして、多くの共和党議員にはむしろ私の方から、そんなに急いではいけませんと説得しなければならないことが多いのです。
2週間ほど前に議会の予算委員会のメンバーと話した際、彼らは本当に急いで削減しようとしていました。そのとき私は、3千億ドル削減するごとにGDPの約1%に相当するのは分かっていますか?と伝えました。つまり、私たちは飛行機を着陸させるように、慎重に進めなければならないのです。
今日ぜひ話したかったのが、その計画についてです。それには3つの計画があると考えています。
まず1つ目は、政府の支出を抑えることで政府の債務を減らします。そのために、政府内の過剰な人員を削減することも含めています。
次に2つ目として、金融システムの規制を緩和します。これまでの規制は、いわば規制のコルセットのように金融システムを締め付けていました。規制を緩和することで、民間部門が再び資金調達しやすくなります。
つまり、政府は債務を減らし、民間部門は再び資金調達を活発化させ、政府から離職した人々は...
[デイビッド・フリードバーグ]
より生産的になるということですね。すみません、これは本当に重要な点で、私が最も大切だと思っていることです。今日こうしてお話しできて本当によかったです。なぜなら、これらの話題はそれぞれ別々に語られることが多いのですが、実はこれらは相互に関係しています。
政権が目指しているのは、インフレを引き起こさずに持続可能な経済回復を実現し、さらに人々が今はまだ手にしにくいアメリカン・ドリームを再び手に入れられるようにすることなのですね。
[スコット・ベッセント]
そうです。ですから、物価の高騰問題を解決するための一部としては、どこで価格を下げられるかは重要です。ご希望があれば後で詳しくお話ししますが、どの分野で価格を抑えられるのか。例えば、卵のようなものは比較的簡単です。しかし、物価を下げるだけでなく、労働者の実質賃金を上げることも重要です。
実質賃金を上げるには、「メインストリート対ウォールストリート」の関係に立ち返る必要があります。そのための2つ目の計画は、国際貿易システムの再編成と、製造業の雇用を米国に取り戻すことです。
さらに、中間層の活性化も欠かせません。そのためには、必要に応じて関税を活用し、他国の行動を是正することが重要です。
[デイビッド・フリードバーグ]
そして、特定の産業やサプライチェーンを国内回帰させるための経済的なインセンティブを設けることも必要ですね。
[スコット・ベッセント]
そうですね。関税に加えて、政権の中心的な取り組みとして、ほかに3つの方法があると考えています。
1つ目は、低く予測可能な税制を整えること。2つ目は、大幅な規制緩和です。規制は...
[デイビッド・フリードバーグ]
民間の投資資金に対する障壁のようなものですね。
[スコット・ベッセント]
それから、規制の予測可能性を高めること、そして安価なエネルギーの確保も重要です。
[デイビッド・フリードバーグ]
そうですね。すみませんが、税制の見直しと、GDP比で3%から3.5%の財政赤字達成との関係について教えてください。
[チャマス・パリハピティヤ]
特に、CR(継続予算決議)が残念ながら、関係者に免罪符を与えてしまったのは問題です。次の予算に向けて2兆ドルの上限が維持されてしまったのですから。
[スコット・ベッセント]
しかし、私たちは...私はこの建物に来てまだ7週間目です。トランプ大統領がホワイトハウスに戻ってからも8週間です。ですから、実際に物事を進めるには時間が必要です。
CRに不満を持つ人は多くいますが、政府を閉鎖することは、政治的にも経済的にも生産的ではなかったと思います。
[デイビッド・フリードバーグ]
それでは、税制の見直しは関税で補うのでしょうか?それとも政府支出の削減で補うのでしょうか?
[スコット・ベッセント]
税制の見直しについては、税制改革と規制緩和によって経済成長の軌道が変わることになります。これまでの成長率が1.8%だったとして、それを3%以上に引き上げることができれば、成長の軌道そのものが大きく変わります。
さらに、支出を現状維持に抑えるか、あるいは思い切って支出を削減することができれば、本当に大きな変化を生み出せるのです。
[デイビッド・フリードバーグ]
これは重要なポイントですね。すみません、確認させてください。つまり、政府の支出が減り、経済成長が加速すれば、GDPに対する政府の歳入の割合は低くても問題ないということでしょうか?
[スコット・ベッセント]
その通りです。
[デイビッド・フリードバーグ]
その関係性を理解することはとても大切ですね。単独で見れば、減税は歳入を減らす可能性がありますが、政府支出の削減、規制緩和、そして国際貿易モデルの再編成と組み合わせることで、理論上、経済成長が加速し、税率が低くても最終的には政府の歳入が増えるという、、これが基本的な考え方ということですよね?
[スコット・ベッセント]
その通りです。正直に言いますが、これは私自身の反省でもあります。私は投資業界に35年いました。その間、自信を持って「CBO(議会予算局)の評価ではこうなっています」と話していましたが、実際に政府側の立場になってみると、CBOの評価がいかに複雑で非現実的なものかが分かりました。正直、驚くほど混乱した仕組みです。
[チャマス・パリハピティヤ]
つまり、かなり操作しやすい仕組みということですね。
[スコット・ベッセント]
そうなんです。非常に操作しやすい仕組みです。特にその中でも最も操作しやすい部分のひとつが、通常のCBOの評価方法です。たとえば、私たちは、減税を延長したいと言っていますが、実際のところ、今の税制をそのまま維持するという話なのです。
[チャマス・パリハピティヤ]
そうですね。
[スコット・ベッセント]
実際には、現在の税制を単に延長するというだけの話です。
[チャマス・パリハピティヤ]
その通りです。
[スコット・ベッセント]
ところが、期限が切れた後には旧税率に戻るとみなされるんです。一方で、支出は変わらず、しかも支出には、再評価という仕組みがありません。
私はシステムがどのように機能し、どのように破綻するのかを考えるのが好きなのですが、この支出の再評価が不要という仕組みこそが、支出の膨張を引き起こしている要因の一つだと思っています。
[デイビッド・フリードバーグ]
おかしな話ですよね。問題は、議員が代表する支持層が政府支出によって利益を得ている場合、その支持層は、「再選したいなら、私たちの収入を守ってさらに増やしてくれ」と言うわけです。結果として、毎年、議員たちは自分の地元により多くの予算を確保することを最優先にするわけです。これは民主主義の制度上、避けられない流れですよね。この根本的な問題をどう解決すればいいのでしょうか?その点についてはどうお考えですか?
[チャマス・パリハピティヤ]
実際、そのことが本当の問題だと思われますか?ほとんどの政治家が地元の利益のためにお金を取ってくるだけの存在だと?
[デイビッド・フリードバーグ]
いい質問ですね。
[スコット・ベッセント]
ええ、結局のところ、他人のお金ですからね。でも、彼らは...
[デイビッド・フリードバーグ]
ダニー・デヴィートの映画にそんな話がありましたね。
[スコット・ベッセント]
ええ。でも、地元に利益を持ち帰るのは、優れた政治家だと見なされることもありますよね。いわゆる地元に貢献したってことですから。CR(継続予算決議)については、多くの人が不満を持ちましたが、その理由のひとつが特別枠が含まれていなかったことでした。まるで、どうしてそんなことをするんだ?という反応でした。[mt1]
[デイビッド・フリードバーグ]
その通りです。
[チャマス・パリハピティヤ]
いわゆるクリスマスツリー法案と呼ばれるものですね。最後の最後に駆け込みで登場する法案です。
[デイビッド・フリードバーグ]
そう、結局はみんなが少しずつ何かを得られる仕組みですよね。
[スコット・ベッセント]
ええ、まさにそうです。
(前編おわり)
2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
All-In Podcastより
(Original Published date : 2025/03/19 EST)
[出演]
アメリカ合衆国 財務長官
スコット・ベッセント(Scott Bessent)
All-In Podcast
デイビッド・フリードバーグ(David Friedberg)
チャマス・パリハピティヤ(Chamath Palihapitiya)
3. 関連コンテンツ
御礼
最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。
だうじょん
免責事項
本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました




コメント