「AIにできない仕事は残る」のは本当だけど、それはUber Eatsの配達員みたいな仕事になるかも

こんにちは!

最近、YouTubeで質問を見ていると、「AIに残される仕事って、結局なんなんですか?」みたいなやつが相変わらず多いです。

まあ、どんどんと進化している上に生活とかに直結するので、一番気になりますよね、と。

んで、少し前までは、例えば「ラストワンマイルの作業とか、ウェットな現場対応とかじゃないですかね」と答えていたんですが、

最近、そうだとしても、さほどハッピーでもないかもしれない、と思い始めました。

というのも、

  • AIに残される仕事は、結局AIに呼び出される側の仕事になる

  • 呼び出される側のモジュールは、安泰ではない

  • その仕事は、Uber Eats 配達員みたいな仕事の形になっていく

みたいな感じじゃないのかな、と思ったのです。

今日はこれを順番に書いていきます。

なお、以下の記事に大いに刺激を受けておりまして、マジでそうだなと思っているので、重複するところとかもあります。

ちなみに、上記の記事を書いた深津さんや、IT批評家の尾原さんと共に「今後どうしたらいいんだろうね」みたいな話を本で書いたので、よければ読んでくださいね、と。

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「人間にしかできない仕事は残る」はある

まず、よくある話のおさらいからです。

一般論として、「AIには、ラストワンマイル(最後の締めの部分みたいなやつ)の実作業はできない」「現場のウェットな対応はできない(土下座とか)」「業界の暗黙知や、人間関係の機微はわからない」という意見があります。

だから人間の仕事は残る、というやつですね。

これ自体は、たぶん本当でして、、AIが配送トラックを直接走らせるのはまだもうちょっと先だし、介護現場で高齢者の方の手を握るのもAIにはできないわけです。

クレームの窓口で頭を下げて謝るのも、人間がやったほうがやはり納得感が高そうです。

というわけで、「AIにできない仕事は残ります」と言うとき、それ自体はその通りだなあ、と思いつつ、

なんか「残る」の意味が、たぶん多くの人がイメージしているものと、ちょっと違うかもしれないんですよね。残るというと、「今のまま温存して、今のまま働ける」という感じになっちゃうんですが、そうではないのではないかと思っています。

というわけで、さっきいった「さほど人間がハッピーじゃない世界になるのでは」というのの3つの背景を説明したいなと思います。

①:AI企業はすでに「現場に降りる」モードに入っている

最近のAI企業の動きを見ていると、これがけっこうあからさまです。

すでに話題ですが、OpenAI は、自社のAIを企業の業務に直接組み込むための「deployment company」というものを新しく立ち上げました。

約150人のエンジニアやコンサルが企業の中に入り込んで、業務の中核にAIを差し込んでいく、という会社です。AI導入支援会社、みたいな感じで言えばいいでしょうか。

https://openai.com/index/openai-launches-the-deployment-company/

Anthropicも、Blackstone、Hellman & Friedman、Goldman Sachs と組んで、企業向けAIサービス会社を作ると発表しました。

Claude を企業の中核業務に入れるためのサービス会社で、Anthropic 側のエンジニアもそこに合流して動くそうです。

ここから何がわかるかというと、「APIを売って使ってもらう」というのが中心だったAI企業が、

「企業に入り込んで、どう使えばいいのかまでサポートしていく」モードに切り替わった、ということだと思っています。

ちょっとややこしいんで、わかりますかね・・・。

つまり、「会社の人が、AIを導入しようとして、APIで呼び出して、その機能を使う」みたいな時代から、

AIが現場の意思決定や業務設計の中心に座って、そこから周辺の作業として人間が呼び出される構造を、AI企業自身が作りにいっている、

と言えるんじゃないかなと。

もちろん、そこまでAI企業の人たちも言っていないんですが「こうやって、こういうビジネスプロセスにして、AIをこうやって使って、この辺りは人間に任せた方がいいっすよ」というふうなことをやる可能性が極めて高いと思うんです。

結局「どこをAIがやって、どこを人間がやるか」というのを、人間中心で作られた株式会社が設計しようと思っても、どうしても人間中心でやろうとするとバイアスがかかるのですが、AI企業がサポートすると、それを超えて、より高い生産性が出せるようになると思うんですね。

もちろん、このコンサルを受けて、AI中心で回る会社になっても「AIにできない仕事」は残るんですけど、それは「人間が主役のままで続けられる仕事」というより、「AIが指示者として座っていて、そこから呼ばれる外部モジュールとしての仕事」になっていくんじゃないかと思っています。

②:呼ばれる側のモジュールは、別に安泰ではない

①を聞いて、「いや、呼ばれる側でも仕事はあるんだからいいじゃん」と思う人もいると思うんですが、、

ここに、もうひとつの罠があります。

AIから見れば、人間も、海外の人材も、別のAIも、ロボットも、ぜんぶ「呼び出せるモジュール」に過ぎません。例えば、コスパが悪い、レスポンスが遅い、エラー率が高い、と判定されたら、呼び出し先を切り替えるだけです。

例えば、AIが10個あった時に僕らも「これはコスパ悪いな」とか「これは回答が良くないな」と思ったら切り替えるじゃないですか。AI側から見ても「この人間はなんかコスパ悪いな」とか「パフォーマンスが低いな」と思ったら切り替える、みたいな感じになるのかなと。

つまり、「AIに代替されない仕事」=「ずっとあなたに発注され続ける仕事」とイコールではない、ということなんです。

「真面目に長く続けていれば、仕事は安定する」というのは、たぶん20世紀後半とか21世紀前半くらいまでの前提で、僕らはその時代をよく知っているのでそれが変わるのをイメージしづらいですが、まあ、今後はそうなるだろうなと。

雇用契約があって、終身雇用に近い慣習があるとか、職人として腕を磨けば固定客がついて、みたいなやつは終焉するんじゃないかと。ちょうど、産業革命の時に、ギルドはほぼ全滅したみたいなことは起こったので、近いような動きになるのかもですね。

何が言いたいかというと、AI主導の発注構造になると、「呼び出される側」は常に他の候補と比較され続ける状態に置かれる、ということなんです。

コスパが悪ければ、別のモジュールに差し替えられる。仕事は残っているのに、ずっと不安定みたいな感じですね。

③:そして仕事の中身は、Uber Eats 配達員モデルに近づく

んで、これに近いのがすでに起きていて、Uber Eatsの配達員の方とかがそうじゃないかなと。

アプリから「ここで受け取って、ここに届けてください」と指示が来て、その通りに動く、同僚と雑談する時間も、上司から「よくやったね」と褒められる瞬間も、お客さんと顔なじみになる機会も、ほとんどありません。

完全にUber側から呼び出されているモジュール、部品見たいな扱いです。

雇用形態も正社員とかではないので安定していないですし、評価はアルゴリズムが決めます。レビューが悪ければ、案件が回ってこなくなる、とか起こります。

これは別にUber Eatsを批判している話ではなくて、、これにより、すぐに働ける、合間時間に働ける、学歴とか年齢とかに関係なく仕事ができる、などのメリットもありますし、ユーザーも助かっている部分が大いにあります。

んで、これみたいな働き方がグッと増えていくんじゃないかなと思っています。「AIに最適化されたあとの残る仕事」としてイメージしやすいなと。

つまり、仕事は確かに残るが、その仕事のまわりに昔あったもの、たとえば、

  • 同僚と一緒にお昼を食べる時間

  • 上司に評価されて昇進する階段

  • お客さんと長く付き合って関係を作る感覚

  • 業界の中で名前を覚えてもらう実感

  • 仕事を通じて成長していく手応え

こういうものは、ほとんど剥がれていくので、「なんかさほど働いていて、幸せじゃないなあ」となるんじゃないかと思っています。お金はもらえるんですけどね。

「AIにできない仕事が残ります」というとき、たぶん多くの人がイメージしている残るは、ここまでドライなものではないと思うんですよね。「ちょっと変わるけど、基本は今と同じ」みたいな感覚で受け取られていることが多い気がします。

でも、実際にAI最適化が進んだあとに残る仕事は、このUber Eatsのような形にどんどん近づいていく予感があります。仕事はある。でも、仕事のまわりにあった人間関係・仲間・成長感・キャリアの階段は、薄くなる、みたいな感じです。

さらに予後が悪いのが、「自動で配送してくれるロボットとかが出たら、モジュールは人間からロボットにすぐに切り替わる」とかが起こるところです。安定とは程遠いですよね、、

もうUber Eatsは日本でもデリバリーロボットが走っているので、ある時期を境目に一気にロボット化しする可能性は高いです。

人間の仕事の場所は3つに分かれそう

そんな感じで、ここまでで、「AIに残る仕事は残る、ただしUber Eats化された仕事として残る」という話をしてきました。

じゃあ、そうならない場所はどこか?を考えたんですが、長くなってきたので、サクッと紹介すると、、

これからの仕事の場所はだいたい3つに分かれていきそうだなあと思っています。

① AIを呼び出す側

AIを設計し、運用し、何をどこまで任せるかを決める側。意思決定と責任設計が中心になる場所。AI企業やAIコンサルが入った企業になる可能性はあるが、一部の人たちの仕事は残りそう。経営層や株主は比較的安泰。

② AIから呼び出される側

先ほどのUber化された場所。仕事はあるが、付随する仕事の価値は剥がれていく。また固有性がなければ、いつでも差し替えられるが、仕事は意外と長期に存在しそう(人間は安いし壊れづらい、という観点で使われ続ける、など)。

③ 呼び出し構造の外

自分でお客さんを持っている人。自分のIPを持っている人。自分のコミュニティを主催している人。AIの呼び出し関係の外側で、自分の地面に立っている人。効率化とは別の構造の中にいる人たち。

僕の感覚だと、これからの個人の戦略は、①に少しでも回るか、③に立つか、あるいは②でも替えのきかない固有モジュールでいるか、のどれかを意識的に選ぶ話になりそうだなあ、と思っています。

余談ですが、誰かが「○○教の、人に説教をしたり説明したりする人みたいなのは残るのでは」と言っていましたが、これも「AIによって、一番最適な説教をしたり、コミュニケーションをすることで、信者の獲得や維持、寄付金の獲得などを効率化する」とか起こるんじゃないかとは思っています。そうすると、もう単に「コンテンツを発信するUIに成り下がる」みたいなことはあり得てしまいそうです。

というわけで

ここまで書いてきて、どうすりゃいいねん、ということなんですが、「努力する方向を変えた方がいいよね」とは思っていて、こんな本を出します。

プロンプトを覚えよう、とか、AIのニュースを追いかけよう、とかはかなり筋の悪い努力だと思うので、メタスキルを身につける方向がいいんじゃないか、という趣旨うですね。

サブタイトルの「努力の価値が変わる」とあるんですが、まさに「真面目にやれば仕事がある、という前提が崩れたあとに、どこに努力を置くか」の話と読めるので、今日書いてきたテーマみたいなことが書いてあります。

というわけで、「AIにできない仕事は残ります」というのは確かに本当なんですけど、それは「人間が主役のまま、今までどおりの仕事が残る」という話ではなくて、

「AIから呼び出される外部モジュールとして残る」「しかもいつでも差し替えられる」「しかも仕事のまわりの人間関係や仲間や成長感は剥がれる」という、ちょっと厳しめの残り方になる予感があります。

真面目にやれば仕事がある、という常識が、静かに終わりかけているのかもなあ、と思った話でした。

では!

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