PhoenixCall 2.0着弾前に初代を聴き直す Celest Phoenixcallは“本気で上を狙った”一本だった
PhoenixCall 2.0 を買った。
だからこそ、その前に一度、初代 Celest Phoenixcall をちゃんと聴き直しておきたかった。
実を言うと、初代 Phoenixcall はすでに一度手放していた。
でも、2.0 が来る前に比較できる状態を作っておきたくて、今回はあらためて買い直した。発売当時にこの機種をどう受け取っていたのか、そして今の耳で聴き直すと何が見えてくるのか。そこをもう一度確かめておきたかったからだ。
懐かしさだけで振り返りたかったわけではない。
むしろ逆で、PhoenixCall 2.0 が来るからこそ、初代が Celest の中でどういう位置にいたのか、何を目指していた機種だったのかを、今のうちにちゃんと言葉にして残しておきたかった。
Celest には、価格や構成で思い切り攻めたモデルがいくつもある。
その中で初代 Phoenixcall は少し違って見える。単に“安くて面白いモデル”ではなく、より上の価格帯とも勝負できる完成度を、手の届く範囲で本気で形にしようとした一本。少なくとも自分には、初代 Phoenixcall はそういう機種に見えている。公式も Phoenixcall を、弾力のある低域、自然な中域、明るくクリーンな高域、そして自然な音場を持つモデルとして説明しており、Celest の中でも明確に“少し本気寄り”の設計思想が感じられる。
Celestの中でPhoenixcallは少し特別な存在だった
Kinera グループの中で、Celest は比較的手に取りやすい価格帯を担うラインとして見やすい。
一方で、単なる廉価ラインというだけではなく、神話や伝説上の存在をモチーフにしながら、デザインと音作りの両方で独自色を出してきたサブブランドでもある。公式でも Celest は “Legends of Mountains and Seas” を背景にした世界観を掲げている。
このグループ全体をざっくり見ると、QoA はカクテル、Kinera / Kinera Imperial は神話性や装飾性の強い路線、そして Celest は神獣や伝説生物寄りのラインとして整理すると分かりやすい。
その中で Phoenixcall は、Celest の“遊び心”や“価格帯の自由さ”を残しながらも、それだけで終わらない一本だったと思う。
1DD + 2BA + 2 micro planar という構成自体がかなり意欲的で、少なくとも「低価格帯の変わり種」で片付けるには惜しい。実際、公式の説明も単に派手さを強調するのではなく、全体として明るい傾向、自然な中域、クリーンな高域、自然な音場といった方向へ寄っている。つまり Phoenixcall は、Celest が“安くて面白い”だけではなく、上位機が目指す方向をこの価格帯でどこまで表現できるかに挑戦したモデルとして見た方がしっくりくる。
自分の中では、Celest のモデル群は大きく二つに分かれて見える。
ひとつは、価格や構成の面白さでまず惹きつけるライン。
もうひとつは、そこから少し踏み込んで、ちゃんと“上”と戦いたい意思が見えるライン。
Phoenixcall は明らかに後者の入口にいる。
Phoenixcallは見た目でもCelestらしさを体現していた
Kinera 系の魅力を語るうえで、デザインを無視するのは難しい。
このグループは、音だけでなくフェイスプレートや世界観の作り方にもかなり意識的だ。
Phoenixcall も例外ではない。
複数のレビューではフェイスプレートが hand painted として言及され、鳥たちが呼び声に応じて集まる情景を表していると説明されている。音の名前と外観のモチーフがきちんと結びついていて、単に模様がきれいというだけで終わらない。
もちろん、Kinera Imperial のような上位ラインほど“所有体験そのものが豪華”という方向ではない。
その意味では、Phoenixcall の所有感は同グループの上位機と比べると一段控えめだと思う。
ただ、それでも同価格帯で見れば、Celest が見た目にかなり気を使っているのは明らかで、Phoenixcall はその良さがちゃんと伝わるモデルだった。
音の話とは別に、**「手に取ったときに、ただの量産機ではないと感じさせること」**も、この価格帯ではかなり大事だと思う。Phoenixcall はそこをきちんと押さえていた。
低域はあるが主役ではないという絶妙なバランス
Phoenixcall を聴いてまず分かりやすいのは、低域がちゃんとあるのに、主役ではないことだった。
最初の印象としては、低音が少し軽く感じる。
最近のイヤホンに慣れていると、どうしても最初はそう受け取りやすいと思う。
ただ、よく聴くとそれは“消えている”のではない。ちゃんと鳴っている。しかも他の音に圧倒されていない。量感で前へ出てくるのではなく、音源の中にあるべき位置で自然に聞こえてくる。
サブベースはしっかり存在感があるし、質も悪くない。
ミッドベースも他の帯域に潰されずに聞こえる。けれど、Phoenixcall の音を決めているのは低域ではなく、もっと上の見通しや整理の上手さだと思う。
だから basshead 向けかと言われると違う。
低音好きでも楽しめるが、Phoenixcall の魅力はそこに集約されない。
むしろ、「低域もある。でも主役はそこじゃない」というバランス感覚こそが、この機種の個性だと感じる。
ここは公式の方向性ともかなり噛み合っている。Phoenixcall は deep and elastic bass と説明されているが、同時に overall bright sound を前提にしていて、低域で押し込むより、あくまで土台として機能させる設計に見える。
Phoenixcallの本質は高域の見通しと整理の上手さにある
Phoenixcall の中域はかなり優秀だ。
ボーカルが聞き取りやすいのはもちろんだけど、本当に価値が出るのは、むしろ楽器数が多くて混雑しやすい曲の方だと思う。
音が増えても崩れにくく、かなり多くの音や周波数が自然に見えてくる。
「このボーカルが良い」というより、全体の中でどの音がどこにいるのかを把握しやすい。
そのせいか、Phoenixcall は気持ちよく流すというより、気づくと自然に分析的に聴いてしまう。これは単なる解像感の高さというより、整理の上手さに近い。
高域もまた、この機種の大きな魅力だ。
伸びはあるし、存在感もある。
でも、ただ派手にキラつかせているわけではない。押しすぎず、引きすぎず、結果として「全体のバランスがかなりいい」と気づかされる。曲によっては少しピーク感を覚える瞬間もあるが、それが致命的な刺さりになるわけではなく、むしろ見通しの良さや空気感として機能している印象が強い。
レビューでも “clear, bright and clean highs” や “excellent separation and positioning” といった評価が見られ、あなたの印象とかなり重なる。Phoenixcall は高域で驚かせるための機種ではなく、高域の整理感を通じて全体の視界を開く機種として理解した方が自然だと思う。
音場よりも分離と定位の強さが印象に残る
Phoenixcall は、いわゆる“広大な音場”を売りにするタイプではない。
けれど、分離感と定位感はかなり分かりやすい。
特に左右に振られた音、LRの違いがはっきり出る曲では、この機種の面白さがすぐ分かる。
音場を大げさに広げて気持ちよくするというより、限られた空間の中で音の位置関係を濁らせずに見せる方向の強さがある。
だから Phoenixcall の空間表現は、
“広い”というより “見やすい”。
この感覚がかなり独特で、結果として「高域が強い」「分離がいい」だけではない、もう少し上位機寄りの面白さにつながっていると思う。
S12とLegatoを並べるとPhoenixcallの挑戦が見えてくる
Phoenixcall を当時の競合と並べるなら、自分の中では Letshuoer S12 と 7Hz Legato がかなり分かりやすい。
S12 は、平面系の代表格として解像度、レスポンス、全体の完成度で広く評価されてきた機種だ。
Phoenixcall がハイブリッド構成で空間表現や音の配置、独特の高域の見通しで勝負していたのに対して、S12 はもっとストレートに 高解像度・高スピード で押してくるタイプとして見やすい。発売当時の比較でも、この二つはしばしば並べて語られていた。
一方で Legato は、もっとはっきり 低域の魅力 を前に出したモデルだ。
厚みのある低音、7Hzらしい気持ちよさ、そして明確な方向性。
Phoenixcall の低域も悪くないけれど、Legato のようにそこを主役にしてはいない。
だから、Legato と並べると Phoenixcall の「低域はあるが主役ではない」というキャラがむしろよく見える。
この三つを並べたとき、自分の感覚ではこうなる。
好きなのは Legato
完成度で一番強いと感じるのは S12
でも、一番挑戦的だったのは Phoenixcall
この“挑戦的だった”というのが大事で、Phoenixcall は単に音がいい・悪いで片付けにくい。
1DD + 2BA + 2 micro planar という構成をこの価格帯で持ち込み、しかも単なる変態機に終わらせず、ちゃんと実用的なまとまりに持っていこうとしていた。
その意味で Phoenixcall は、当時の同価格帯の中でもかなり野心的な一本だったと思う。
Phoenixcallはどんな人に向いていて、誰にはズレるのか
Phoenixcall は、エンドゲームになるような万能機ではない。
それはたぶん事実だと思う。
ただ、低価格帯のイヤホンだけを持っていて、そこから違う方向の音を試したい人にはかなりいいモデルだ。
特に向いているのは、
高域の見通しや解像感を重視したい人
分離や定位の良さを楽しみたい人
低域特化ではないハイブリッドの面白さを知りたい人
上位機が目指す方向性を、まだ無理のない価格帯で体験したい人
逆に、
とにかく低音を主役にしたい人
暖色感や厚みを最優先したい人
一聴で分かりやすい気持ちよさを求める人
には、少しズレるかもしれない。
言い換えると Phoenixcall は、「安いイヤホンから、ちょっと上の世界へどう繋がるのか」を見せてくれる一本としてかなり価値がある。
だからこそPhoenixCall 2.0には完成度の上積みを期待したい
PhoenixCall 2.0 を買った今だからこそ、初代をもう一度しっかり聴き直しておきたかった。
理由は単純で、2.0 が来たあとだと、どうしても“完成版”の視点から初代を見てしまうからだ。
でも本当は、初代 Phoenixcall には初代でしかない役割がある。
Celest の中でも外せない代表作のひとつであり、このラインが本気で上を狙った時の、最初の説得力ある一本だったと思っている。
そして PhoenixCall 2.0 には、
初代の個性を残しつつ、そのまま完成度を高めて、より広く評価される一本になってほしい。
そう思えるからこそ、まずは初代がどんな機種だったのかを、2.0 が届く前にちゃんと残しておきたかった。
初代 Celest Phoenixcall は、Celest の歴史の中で、ただの一機種として流してしまうには惜しいモデルだと思う。


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