「私が王なら人々が国旗を燃やすことを許さない」。米連邦最高裁で強硬な保守派として知られたスカリア判事の言葉だ。だが、星条旗を燃やしたデモ参加者に対する1989年の最高裁判決では無罪の多数意見を支持した▲その理由を聞かれ、言論の自由を明記した米憲法修正第1条は「特に政府を批判する言論を対象とする」と語り「私は王ではない」と付け加えた▲中国が国旗の損傷に刑事罰を科す国旗法を施行したのは翌90年。学生らが民主化を求めて弾圧された前年の天安門事件を受け「国旗の尊厳を守り、愛国主義を発揚する」と明記した▲そんな米中の隔たりが縮まっている。トランプ米大統領は昨年、可能な限り国旗焼却の立件を求める大統領令に署名した。習近平国家主席との相性の良さを強調するのもうなずける。日本もそこに加わるのか。国旗損壊罪創設の議論が進む。自民党は国旗を損壊する動画投稿も罰したいらしい▲表現の自由にも関わる。ベトナム戦争に抗議しニューヨークで星条旗を燃やしたパフォーマンスは草間弥生さんの芸術活動の一端をなす。謎の路上芸術家、バンクシーさんはろうそくの火が星条旗に燃え移る作品をSNSに投稿し、米国の黒人差別を批判した▲言論や表現の自由をあまりに軽々しく扱っていないか。「国旗の特別な役割を守る方法は異なる考えを持つ人々を罰することではない」「批判を容認することが我々の強さの証し、源泉である」。冒頭の判決で示された多数意見の一部である。
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