『社員証でピッ』の元ネタの方が高市早苗よりだいぶマシ
インターネットでアンフェが女性をバカにするときによく使うこの画像、元ネタをご存じだろうか? (実際には記事サムネのようにセリフだけ切り抜かれることが多い)
これははんざき朝未による漫画『無能の鷹』第1巻p19の一幕だ。話数にして第1話の出来事になる。
『無能の鷹』は、気弱でパッとしないが実はそれなりに有能な主人公・鶸田 (ひわだ) とITコンサル会社の仲間たちが、ぱっと見は有能に見えるが実際にはExcelもまともに使えない無能だった画像右の女性・鷹野ツメ子に振り回されながら時に本質を突かれたりいい感じに話がまとまったりするというギャグマンガだ。
今回は、せっかくネットミームの元ネタを把握したのでそのメモついでに考えたことを書いておきたい。
アンフェオタクの元ネタ知らず
このコマがネットミームとして使われるときに特徴的なのが、セリフだけ切り抜かれていることが非常に多いということだ。上で引用した画像が元々の1ページ分だが、SNSで使用される画像は不自然にセリフだけが切り取られ、鷹野の「あと筆記試験ないところ」という付け足しや鶸田のリアクションがすっぱりなくなっている。
というか、SNSで回ってくる画像ではセリフしか見えず、背景すらわからないためどういうシーンなのか、どういう文脈なのかすら全然わからなくなっている。オタクがSNSに無断アップロードする漫画の画像は、多くの場合1コマ単位で綺麗に切り抜かれる。当該のコマはページを縦断する変則的なものではあるが、鷹野の顔と付け足しのセリフくらいまでならさほど違和感なく処理できるはずだ。では、なぜそうなっていないのか。
オタクは流れてきた画像をわざわざ保存し、必要に応じて貼り付けるという手間のわりになんの創造性もないことをやりがちだから、最初に流行った画像がその形だっただけという理由がもっともらしい。だが、もっと別の理由があるのではないかとも思う。
それは、鷹野の見た目が邪魔だったというものだ。
SNSでこのコマが使われるときは、決まってアンフェが女性の仕事を軽んじバカにする文脈である。そのとき彼らが想定しているのは、港区女子みたいな外見とか、スイーツ(笑)みたいな雰囲気のOLとかだ。
(ところで、一昔前に甘味のことをスイーツと表現する向きをバカにするインターネットの風潮が一部にあった。当時すでに甘味をスイーツと呼称する文化は一般的で、いまとなっては猶更である。彼らは何と戦っていたのだろうか?)
だが、鷹野はそういうアンフェが馬鹿にしたい雰囲気のOLとは全く違う見た目をしている。派手さはないがばしっと決まって有能そうな外見をしている。それが鷹野ツメ子であり、そのことは当該のコマにも表れている。そもそも『無能の鷹』自体がそういう外見と内面のズレを茶化す漫画なのだから、鷹野が世間一般の「無能なOL」像と合致していたら成立しない。
そういうわけで、アンフェにとって鷹野の存在は非常に都合が悪く、彼女の存在を消し去って不自然な画像を作る動機となったのだろう。元々、アンフェオタクたちは自分の都合のいいように漫画の一部を切り取って流通させては顰蹙を買っていた。著作権の無視もさることながら、漫画が伝えたいメッセージを歪めて毀損しているからだ。『無能の鷹』の1コマを使った投稿はその極地だといえる。メッセージを歪めるばかりか、漫画家が描いた部分をほとんど切り取って都合のいい言葉だけを使っているのだから。
もっとも、皮肉なことに、そんなアンフェの行動はむしろ『無能の鷹』的だとも言える。本作は鷹野の適当な発言に周囲が振り回されていくうちに、彼らの悩みや見栄、虚飾が剥がれていくおかしみが魅力となっている。鷹野の「社員証でピッ」という何ら中身のない発言によって、アンフェたちの欲望と身勝手さが暴かれていくというのは、漫画での出来事がそのまま現実に広がったかのような一幕ですらあるといえる。
高市早苗より鷹野ツメ子の方がだいぶマシ
高市と鷹野の共通点
ところで、「社員証でピッ」というフレーズを聞くたびに、私の脳裏には特定の個人がいつも思い浮かぶ。高市早苗である。
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