覇権コンテンツ投入で巻き返しを期待 カバー株式会社 2026年/Q4決算展望[2026.5.10]
はじめに
2026年5月14日にVTuberグループ・ホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社(証券コード:5253)2026/Q4決算発表が予定されております。
当記事ではプレスリリースやIR情報などの公開情報を基に、決算における注目ポイントの事前整理や今後の動向を考察していきたいと思います。
※当記事内で記載している内容は必ずご自身で正確性・信憑性をご精査ください。
また、当記事の内容によりいかなる不利益を被ったとしても一切の責任を負いません。投資をする際は必ず自己責任でお願いします。
1.今期の振り返りと株価動向
今期は上場以来続く増収増益が継続される会社予想である一方、メタバース事業"ホロアース"を始めとする減価償却や物流拠点の集約費用、人員の再配置などを始めとする先行投資の影響により、売上高は前期比+21.0%、営業利益は+2.5%の見通しとなっています。
上期は米国の相互関税の影響によって海外顧客からの受注が伸び悩み、売上高は会社想定より約10億円ほど未達の着地。劣勢を強いられる場面はあるも、米中関税対立の緩和によって徐々に回復傾向にあり、Q4では影響を最低限に留められる状況と推察されます。
利益面では相互関税による減収をカバーし若干の上振れが生じておりますが、Q2に在庫商品の評価損を5.5億円計上。
評価減商品の対象は2023年以前に発売された在庫商品であることが中心と説明されており、Q4にも同規模の評価減計上が会社側から示唆されておりますが、Q2と比較し大きく上振れる可能性は低いものと想定しています。
続いて株価動向を確認していきます。
2025年2月から長い下落トレンドに陥る中、2026年リリース予定のスマホゲーム"hololive Dreams"の詳報を手掛かりに年初から幸先の良いスタート…となるものの、利益確定の圧力に押され再び下落。
3月には所属タレントの個人事務所設立のリリースを契機として、長らく意識されてきた1,500円の抵抗線を割り込んでおり、厳しい状況が続いています。
2.2026/Q4業績予想
筆者の2026/Q4業績予想です。
配信/コンテンツ分野は引き続き堅調な着地を想定。メンバーシップ収益を軸とした売上構成に加え、10月から開始された公式ファンクラブの会員費約5~6千万円の上積みを期待。
ライブ/イベント分野では"hololive SUPER EXPO 2026 & hololive 7th fes."を今年も3月に幕張メッセにて開催。
これまでの2日間開催から初の3日間開催となったことから動員数の増加を見込みます。具体的には、EXPO約5.25万人(前年比+1.75万人)、fes約6万人(±0万人)の計11.25万人を想定。
EXPOは会場キャパが若干増加していること、fesはスポーツ紙の記事において「昨年は計約6万人を記録。関係者によると今年はそれ以上の集客を見込んでいる」といった旨の記述があることから、実際にはもう少々の上振れが期待できるものと想定されます。
この他、K-Arena横浜で人気ユニットである3期生の2DAYライブおよび星街すいせいさんのソロライブを開催。アメリカでは2名のタレントによるライブを2日間開催するなど、例年以上のスケジュールが組まれております。
マーチャンダイジング分野はここまで「hololive OFFICIAL CARD GAME」が堅調に寄与している一方、米国の相互関税影響による北米向けグッズ販売の足踏みや、通常商品の店頭販売が増加したことにより従来のECから小売店への販売チャネル変化が発生。
商品の発送をもってP/Lへ反映される前受金はQ3時点で約75億円と若干減速の兆し。前年同期は約88億円と見た目上では10億円以上の減少となりますが、前期は24年8月に卒業したタレントの卒業グッズ前受金が約10億円生じており、本来の実力ベースでは横ばい~やや微減程度と推察。
会社側の見解では受注グッズのトレンドに変化は無く、TCGやライセンスアウト商品といった受注グッズ以外の商流が拡大するといったプロダクトミックスの変化が全体構造に影響を与えているとの認識であり、現状ではネガティブな状況ではないとの内容です。
個人的には会社側の見解も十分理解できる一方、記念日グッズをはじめとした受注商品の主要顧客は比較的コアなファン層が中心であると推察されることから、一例として配送期間の短縮等を伴わない前受金の減少は基本的にネガティブな傾向の可能性を思慮。
前期および今期はタレントの卒業もあり単純な比較が難しい状況にありますが、動向は引き続き注視する必要があると認識しています。
ライセンス/タイアップ分野はYoYで順調に収益拡大基調にあり、年度末となるQ4では過去最高の着地を想定。例年EXPOの貢献が収益を押し上げる傾向にあり、引き続き堅調な内容が期待されます。
若干保守的ではありますが、売上高は会社側の通期予想を僅かに未達となる可能性がありそうです。
ライブ/イベント分野やマーチャンダイジング分野の上積み次第では会社予想通りの着地も十分可能性としてはありますが、大きな上振れが生じるような要因は乏しく無難な内容となることを見込みます。
営業利益
今期は31億円規模の成長投資が重荷となり利益率を押し下げる要因となっており、各四半期約7~8億円が平均的に消化。
Q2は過去に生産された在庫商品の評価損を約550百万円を計上しており、Q4でも同規模在庫評価損が見込まれることから、利益水準は若干の調整を想定。
在庫商品の評価損計上規模に左右されますが、通期営業利益は8,062億円と会社期初予想の未達を考慮。保守的な見方であるため、実際には期初通りの内容に纏めてくると思われます。
3.ソフトウェア資産の減損リスク
①商品在庫の評価減および②ソフトウェア資産の再整理について、第3四半期の決算説明会資料へスライドが追加。
①商品在庫の評価減については先述の通りであり、決算説明会では「精査中」とのコメントがありましたが、筆者が確認した限りではQ2と概ね同水準(約550百万円)の規模感を想定。
②ソフトウェア資産の再整理は開発を進めるホロアースおよび社内のERPシステム等が対象となっており、減損損失の可能性を示唆。
ホロアースは上場前から進めるメタバースプロジェクトであり、2025年から正式リリースを開始。所属タレントのオンラインライブ機能を始め、RPGゲーム"原神"のような世界観をイメージしたオープンワールド型のゲーム機能を搭載。正式リリースと併せUGC機能の追加や"降臨祭"と称した所属タレントとの交流イベントを実施するも、いずれも盛り上がりは一過性でありユーザーの定着には課題感を要している様子が窺えることから、開発スケジュールの見直しは遅からず必要になる状況が生じるものと推察。
ここまで具体的な内容を事前に織り込ませる動向は同社としては珍しく、Q3時点では精査中としながらも本決算を迎えるタイミングで減損損失を実施する可能性は高く、十分警戒をする必要があります。
現在のソフトウェア資産は約37億円、ソフトウェア仮勘定は約11億円と最大50億円弱の資産が対象。このうちホロアースには30億円超の資金が投下されており、減価償却は約10億円程度の進捗であることから、最大20億円程度の減損計上を考慮する必要があります。
現段階では全額が減損計上されることは考え難いですが、ERPシステムと併せ約10億円前後が対象になり得えるため、今回の決算で最も留意すべき点と捉えています。
4.2027年3月期について
MarketScreenerを参考に、来期のコンセンサスは売上高595.8億円(+13.5%)、営業利益106億円(+29.3%)、純利益73.4億円(+28.9%)と増収増益の見通し。(括弧内は今期会社予想比)
売上高のCAGRは鈍化基調な一方、利益面では先行投資支出の影響を受けながらも売上の増加に応じて利益も増加するとの見方です。
コンセンサス予想の内訳を筆者の感覚で分析して見ると、売上高としては今期から約70億円ほどの積み増しが必要となりますが、ライブ/イベント分野では公演数の増加等を中心に+10~20億、マーチャンダイジング分野では+30~40億(TCG+15~20億、EC・実店舗+15~20億)、ライセンス/タイアップ分野+20~30億(ホロドリ+10~15億)でおおよその達成ラインとなるため現実的な水準感であると受け止めます。
このうち、本稿のタイトルにも記載している"hololive DREAMS"の収益はライセンス/タイアップ分野へ計上されると推察。大手証券会社では初年度の収益寄与を約10億円程度として想定しているアナリストもおり、おそらく会社側も同程度の規模感を期初時点の業績予想に織り込んで来ると予想。
詳細は後述しますが、筆者としては"hololive DREAMS"の貢献による来期業績の上振れを期待。現状コンセンサスとしては10億円程度しか織り込まれていないと推察できますが、過去の作品を参考とすると保守的に想定して約30億、標準シナリオとしては約50億円程度の業績貢献に期待したいと思います。
利益面については難しいところですが、仮にホロアースを始めとする減価償却がこれまで同様に実施された場合の年間あたり償却費用は約15億~20億円を想定。
今期と同様のカーブにて原価や販管費が推移した場合、コンセンサスベースでの売上高595.8億円(+13.8%)に対し、営業利益120億円(+46.3%)程度を獲得するポテンシャルは有していると考えます。
またここにhololive DREAMSの貢献が強く生じた場合、期待値としては売上高630億~650億円(+20.0%~+23.8%)、営業利益140億~160億円(+70.7%~+95.1%)程度が想定可能なラインと考えます。
筆者のシナリオベースが実現する場合、会社の期初予想は保守的→徐々に上方修正を重ねていくイメージ感です
一方、先般発表された所属タレントの個人事務所設立に伴い、来期は当該タレントに関連する一部収益が剥落。一時的な減収要因になる見通しが会社側の見解で示されており、筆者の勘定では前期(2025年3月期)ベースで最大約20億円程度が剥落する可能性を想定。
ライブ関連は他のタレントやユニット単位にて穴埋めが一定程度可能と推察しますが、記念日商品の売上分はほぼ完全に剥落すると考え、実質的には5~10億円程度の減収要因を推察しています。
本件については当該タレントの所属経緯が特殊な事情もあり、他のタレントに適用される可能性は限定的と推察。基本的にデビュー時から同社プロダクションに所属するタレントIPは会社側に帰属しており、同様の事象が生じる可能性は現時点において低い状況と認識しています。
5.覇権コンテンツ候補"hololive Dreams"
2025年3月に開催された"hololive SUPER EXPO 2025"において当該スマホゲームを開発中との発表があり、2026年1月にティザーPVを公開。
2026年3月5日より開始された事前登録者数は開始から10日間で50万人を突破。本稿の投稿時点では90万人に達しており、既存のファンを中心に注目度は高い状況にあります。
正式なリリース時期は未発表ですが、過去の決算説明会では2027年上期中のリリースを予定と発言。開発が順調であれば早ければ6月中、遅くとも第2四半期中のリリースが見込まれます。
一部証券会社のレポートでは8月末投入予定と記載
アプリを開発するのはサイバーエージェント子会社のQualiArts(クオリアーツ)。
2024年にはバンダイナムコエンターテイメントと連携し、スマホゲーム"学園アイドルマスター"をリリースすると、ユーザーから高い評価を獲得し当該期の最終利益は前年比+6,114%の31億700万円と大幅増益を達成。
同社の前期最終利益5,000万円であったことから、リリースから決算月となる9月までの僅か約5か月間で大きな業績貢献を及ぼした様子が窺えます。
セルランデータを提供しているGame-i様のデータを参考に、24年5月~12月の収益は約172.41億円。Sensor Towerが提供するデータでは約1.5億ドル(約225億円)と記載があることから、両サイトの良いとこ取りで若干の補正を実施。
Game-i様提供データでは2024年5月~9月の収益を119.37億円としており、Sensor Towerの値を参考に補正を行うと、同期間の課金総額ベースを約140~150億円程度と推定。
このうちPF手数料として30%(約40-45億円)が発生した場合、運営側が得られる収益は約100億円。仮に5:5のレベニューシェア型の契約であった場合は双方に約50億円程度の分配であり、純利益31億円の数字と概ね合致。
実際にはQualiArts側の費用負担が大きいと想定されるため、QualiArts側の配分が若干大きくなり6:4程度となっている可能性も考えられそうです。
通期で寄与したQualiArtsの2025年9月期決算と当てはめても同程度の水準感で纏まっており、考え方の一つとして抑えられるものと思います。
注目は"hololive Dreams"がどの程度ヒット作品となるかについて。
当然ただの予想しか出来ませんが、同社の抱えるファンベースやスマホゲームとの親和性を考慮すると、初年度は学園アイドルマスターと同程度の売上寄与は少なくとも見込めるのではないかと推察しています。
元々は"音ゲー(リズムゲーム)"として発表されていましたが、直近で公開された情報を確認すると、リズムゲームだけに限らず各キャラクターを操作するRPG要素や編成・育成といった拡張性も搭載。
「少なくともファンなら楽しめるのではないか」といった構成が随所に見られることから、どんぶり勘定ではありますが相応の期待をしています。
仮に学園アイドルマスターと同等の課金推移および収益分配が行われた場合、リリース時期にもよりますが2027年3月期の業績に与える影響として最大80億円程度を予想。
課金総額やQualiArts側との契約にもよって大きく変動するため、標準シナリオとして50億円、更に保守的なシナリオでは30億円程度を予想。
よっぽど大コケorとんでも契約でない限りはポジティブな業績寄与を期待します。
最後に
本決算を前にどんぶり勘定ながらもポジティブな来期の業績予想を行いました。同社のホルダーとしてのバイアスが掛かっているという部分もありますが、過去の数字をベースに紐解いていくとどうしても強気なシナリオを組まざるを得ませんでした。爆死したら申し訳ございません。
改めて申し上げますが、本決算発表時に大きく留意すべき点が2点あります。
1点目はソフトウェア資産の減損について。Q3で決算説明会資料へ減損を匂わせるスライドがあり、ホロアースを始めとするソフトウェア資産の減損が生じる可能性が高くあります。その場合は特損として計上されると見込まれ、一時的にEPSが前期比で大きく下がる可能性を想定しておく必要がありそうです。
2点目は"hololive Dreams"の業績寄与について。会社側は期初時点ではかなり保守的な見通しを組まざるを得ない可能性という点です。まだリリースもしていないゲームの業績予想を強気に組むのは難しく、前回の決算説明会でも「段階で相当程度大きく見込むことは難しく、やや控えめに織り込む必要がある」といった発言がありました。この部分はもう仕方がないと思いますので、ヒットの祈願と今後の上方修正に期待するしかないかなと思います。
これらを踏まえると、本決算時点ではいったん様子見を行い、減損の悪材料やホロドリのリリースを確認後、徐々に買い向かう戦略でも十分ではないかと個人的には考えます。
現在の市況環境的にも実際のホロドリ貢献がP/Lへ現れるまで株価が大きく上向くとは考え難く、リリース後のセルランを確認しながらでも良さそうかなと思うところです。
"会社計画はコンセンサスを下回る可能性がある"と補足されたアナリストレポートもありました
一方、筆者の想定シナリオがハマり株価が上向いた場合、中期的には出口戦略も重要になると考えます。有名処では"ウマ娘"のサイバーエージェント、"ポケポケ"のDeNAと作品のヒットに合わせて株価も大きく上昇しましたが、上昇一服後は反動により苦戦を強いられた場面が続きました。
実際、先述した学園アイドルマスターにおいてもリリースから半年程度で課金総額は落ち着いた傾向にあり、仮に"ホロドリ相場"が到来した場合においても、株価がオーバーシュートした場合は容赦ない売り浴びせが生じる可能性は避けられない状況になると推察します。
最も、そのシナリオを考慮する必要が生じるのは幾分先の時間軸になりそうです。
まずは本決算の今期着地、および来期見通しに注目して良い1年になることに期待したいと思います。
最後までお読み取りいただきありがとうございました。
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X(旧ツイッター):@karuta_54




いつも中立的で、精緻な分析ありがとうございます。 構成もとても勉強になります。 TOPIX採用候補銘柄なので10月前の株価動向に一番期待しています。 その頃にはホロドリの収益寄与度も明確になっているんでしょうね。
ありがとうございます! 新TOPIXへ採用されるには8月時点で候補の上位約50社にいる必要がありますが、現状浮動株時価総額で見ると結構際どいラインにいるのが気掛かりな点ですね。 決算ミスって時価総額が下がると厳しい可能性が高まるので、Q1決算までには株価上昇を願いたいところです。 TOPIXに…