「検証サイト」で相次ぐ指摘、調査中の論文の訂正 大学による「研究不正調査」の構造的な課題とは
科学論文は通常、複数の専門家が新規性や妥当性などを審査する「査読(ピアレビュー)」を経て出版されるが、出版後にも公開の場で研究者が検証しあう「出版後レビュー」の仕組みがいくつかある。
その中で最も広く定着しているのが、非営利団体が運営する「パブピア(PubPeer)」というサイトだ。主に匿名で問題点が投稿されており、過去にはこのサイトでの指摘がきっかけとなって研究不正が発覚した事例も多い。
4月以降、パブピア上で、JIP論文に関する計4件の新たなコメントが相次いで掲載された。いずれも匿名で、公開情報に基づいて検証したとみられるが、京都大学調査委員会の調査対象となっていた疑義と重なる部分もある。
連載第3回では、その疑義の内容を紹介するとともに、JIP論文の不正調査の問題点について改めて考える。
須田桃子(科学ジャーナリスト)
パブピアで指摘された内容とは
パブピアに投稿された4件のうち2件は、連載第2回の後半でも取り上げたマウス実験と、それに基づいて作成された生存曲線の図(図4I)と体重増減の図(図4H)についての指摘だ。
実験のコードやデータを公開するサイトに登録されたエクセルファイルのデータから検証した内容になっており、グラフの作成にあたり、複数の個体が除外されていることにも言及している。
残りの2件は、別の実験の結果に関する指摘である。第2回で解説したように、JIP論文は、「JIPというペプチドが上皮組織のバリア機能を担うタイトジャンクションの形成を誘導する」と主張する内容だが、その誘導の仕組みに迫ろうとした実験だ(下図の「主な主張」の5つ目)。
筆頭・責任著者である小田裕香子教授は、細胞内でタイトジャンクションの形成に関わっている「G13」というタンパク質をJIPが活性化するという仮説を立て、試験管内の実験で検証した。
論文では、市販の実験キットとG13タンパク質を使って実験した結果、JIPがG13をまさしく活性化したことが確認できたとしている。
ところが、パブピアの投稿では、タンパク質の製造元で入手できるG13はそもそも「生物学的活性がない」とされる製品だと指摘。製品情報に照らし合わせると、活性があったとする論文の結果は「予想外」だとして、実験の詳細を尋ねている。
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