女子枠などのアファーマティブアクションを肯定する人々に散見される陰謀論
今の日本は、一部の大学の女子枠などのようなアファーマティブアクションが広まりつつある。
2026年1月27日、「サチコと神ねこ様」や「ゆかぴ船長」や「だんな様はひろゆき」などの漫画制作に関与している漫画家のwako氏が、以下の文章をポストした。
このポストを読み、筆者は大きな疑問を抱いた。
それは、「中学から高校まではわりといる数理に強い女子がじょじょにごっそり減らされる社会の意図って、具体的に何を指しているのだろうか?」という疑問である。
もしかしたら、wako氏などのように女子枠を肯定している方は「一部の親や教師が、理系学部の進学を望んでいる女子学生に『女の子は理系学部に行かなくていいよ』や『理系学部は男子の割合が高いから女子学生は浮いちゃうよ』等の話をする」などといった光景を想定しているのかもしれない。
だが、言うまでもないことだが、そのような一部の親や教師は日本社会から何らかの裏金をもらって、理系学部の進学を望んでいる女子学生に、そういった話をしている訳ではない。
つまり、「日本社会は中学から高校まではわりといる数理に強い女子をじょじょにごっそり減らそうとする意図を持っている」などと考えるのは陰謀論であり、妄想なのだ。
理系に進む女子学生を増やしたいならば、「女子だけが一般枠よりも低い難易度で合格できる女子枠」を設けるよりも、理系の魅力を女の子に伝えていって理系に興味を持つ女の子を増やしたり、理系進学のキャリアにおける利点などを教師や保護者らに周知していくほうが健全ではないだろうか。
なお、筆者は「だんな様はひろゆき」という作品名を見て、2024年ごろに、ひろゆき氏が或るネット番組で社会学者の瀬地山角氏と議論していた件を思いだした。
一時期、牛角という焼肉チェーン店は「女性だけ一部のメニューが半額となるキャンペーン」を実施していた。
そのキャンペーンに対して「男性を差別しているのでは?」という声が殺到し、ひろゆき氏と瀬地山角氏が議論を交わしていた。
「2ちゃんねる」開設者で元管理人の「ひろゆき」こと西村博之氏(47)が5日までに配信されたABEMAの報道番組「Abema Prime」にリモート出演し、焼き肉チェーン「牛角」で9月に展開されている、男性3938円に対し女性が半額の1969円とした食べ放題のキャンペーンについて「女性優遇しすぎ」などの声が起きていることについて議論した。
番組ではキャンペーンについて「男性差別」との声があがっていることを紹介。一方で牛角側は差別の意図はなく「女性の注文量は男性に比べ4皿少ない」などのデータに基づいているなどの情報も伝えた。
ひろゆき氏は「営利企業が利益をあげるために女性を優遇して男性を差別するのをOKだよね、となると、女性の給料低くて良いよね、女性は出世させなくて良いよね、だって営利企業の判断だから、ってなっちゃう。だからどんな差別でもなくすべきである、と弱者は言った方が良いんだけど、なぜか女性が女性を優遇する差別はあり、とか言っちゃうと差別は残り続けちゃうので、短期的にしかモノを考えられない人って長期的に損することを選ぶんだな、と思ってみてます」と持論を展開。
「女性を優遇するというのは男性を差別することなんですけど『それは差別ではなくあくまで優遇である』という論者の人がいて、そこは僕は分からない」と語った。
一方、社会学者の瀬地山角氏は「私はひろゆきさんと意見が全く違いまして」と前置きし「焼き肉屋のマーケティング戦略の話だけなので、その差別の範囲というのは、例え民事訴訟を起こしたとしても受忍の範囲だろうと思います」とコメントした。
ひろゆき氏は反論し「アメリカで白人と黒人で、黒人の方が焼き肉を多く食べます、だから白人優遇です、って言ったら、普通に人種差別じゃないですか」と言うと、瀬地山氏は「それはできないですね」と応じた。ひろゆき氏は「それと一緒という話を僕はしてます。人種という変えられないことで、メチャメチャ食う女子もいる。だから一般的にこう、というのがあったとしても、性別によって待遇を変えるのは差別ですよね、っていう話です」と続けたが、瀬地山氏は「社会的に何がどう認められるか、という話で、法的な話とはレベルが違う。今あげられた例の話は、アメリカでは絶対に認められない。それと日本の焼き肉屋の女性の話とを混同するのはおかしいです」とかみ合わなかった。
ひろゆき氏は「日本の社会でも差別として、認められないですよね、という話をしてます。法が準備されていないというのは、単に法が不整備だから」と返したが、瀬地山氏は「それはそうは思いません。単にこの程度の価格差…」と牛角の話題に戻した。ひろゆき氏は「価格差の問題じゃないんです。やっちゃいけないことかどうかの話です」と口をはさんだが、瀬地山氏は「受忍の限度、という判断です。例えば訴訟を起こしたときに、十分受忍の限度に入るはずなんです」と指摘。
ひろゆき氏が「じゃあ、受忍できるのであれば、多少の差別はOK?」と問いかけると、瀬地山氏は今回のケースについては「そうです。この程度の違いというのは受忍すべき違いに過ぎない。数百円とか1000円違うとか、しかも毎日食べるわけではない」とした。
ひろゆき氏は「受忍の限度で決めるのであれば、女性が出世できないのも『当然だよね』『受忍の限度だよね』というのが今の日本の社会」とした上で「女性が一生懸命やっても管理職になれませんでした、という会社はいくらでもある」と例をあげると、瀬地山氏も「現実にそういう会社があるのはそうですね」と同調。
ただひろゆき氏が「それが良くないと言っている」と言うと、瀬地山氏は「それはその会社が努力すべきことで、焼き肉屋の値段(の話)とは全く違う」と語った。
瀬地山氏は「日本中の居酒屋でこんなことが起きたら問題です。いちチェーン店が、一定期間、この程度のキャンペーンをやることについて『男性差別』であるという議論を持ってくるのは、そもそも性差別の議論として間違っている」とも言及。
今回のキャンペーンについて「男性差別」の声が多いことについて「理解してない人が多いんだな、というだけですね」とし、その背景について「男性側が、履いている下駄の高さに気が付いていない」とした。
ひろゆき氏は「焼き肉屋で(男性が)どんな下駄を履いているんですか?」と突っ込んだが、瀬地山氏は「焼き肉屋の話ではない」と説明。
ひろゆき氏は「焼き肉屋の話です。焼き肉屋の中で男性はどんな下駄を履いているのか教えて下さい」と繰り返し、瀬地山氏は「焼き肉屋の話だとしたら、年間に焼き肉屋に何回行くんですか、と。それで累積の価格差がいくらになるんですか、と。それで民事訴訟でもやってください、という話です」と語った。
ひろゆき氏は納得しない様子で「焼き肉屋でどんな下駄をはいているのか教えて下さい」と堂々巡りに。瀬地山氏は「今、下駄の話は、もうちょっと引いた(視点)」と説明したが、ひろゆき氏は「焼き肉屋の話です、とおっしゃいましたよね」と再度確認した。
筆者は、ひろゆき氏のファンではないし、彼の言動には賛成できない点も多いと考えている。
ただ、この議論で鋭いと感じた箇所がある。
それは、「焼き肉屋の中で男性はどんな下駄を履いているのか教えて下さい」という問いかけである。
例えば、「かつて、一部の私大医学部で男子受験生が女子受験生に対して下駄を履いているという状況が起こっていた」というような主張であれば正しい。
何故なら、2010年代の末頃に一部の私大医学部で「女性受験生らの点数を下げる不正入試問題」が行われていたケースがあるからだ。
このように、具体的な事例やエビデンスをもとに、属性による差別を主張するのであれば、その主張の是非を検討することが出来る。
だが、「現代日本の焼き肉屋のなかで男性が下駄を履いている具体的な例」を挙げられる人は果たしているのだろうか。
ひろゆき氏に「焼き肉屋の中で男性はどんな下駄を履いているのか教えて下さい」と問われた瀬地山氏も、「年間に焼き肉屋に何回行くんですか、と。それで累積の価格差がいくらになるんですか、と。それで民事訴訟でもやってください」などと要領を得ない回答に終始し、最終的にネット番組で「現代日本の焼き肉屋のなかで男性が下駄を履いている具体的な例」を挙げることは出来なかった。
世の中には「コロナワクチンはマイクロチップが仕組まれている」や「思考盗聴から身を守るためにアルミホイルを頭に巻くべきだ」などといった出鱈目な陰謀論を唱える連中が存在する。
「日本社会は中学から高校まではわりといる数理に強い女子をじょじょにごっそり減らそうとする意図を持っている」という陰謀論を真に受ける必要はないし、「今の日本で男性は焼き肉屋で下駄を履いている」と考える必要もない。
結局のところ、「男性は女性よりも下駄を履いている」と主張する人が現れた場合は、その下駄が具体的に何なのかを確認してゆくことが冷静な対応なのではないだろうか。
サムネイル画像のソース:面白ツイ図鑑さん 女子枠に反対する理由(魚拓)



>理系の魅力を女の子に伝えていって理系に興味を持つ女の子を増やしたり、理系進学のキャリアにおける利点などを教師や保護者らに周知していく ということ自体も充分「女子枠的な下駄を履かせている」と思います。そうまでしないとやらない=そもそも動機が乏しいということであり、それが女子生徒…