政治家の投稿、事件誘発か 50代男性「維新共同代表のSNS引用」 赤旗記者への脅迫容疑、書類送検

 SNSに「刺されないように気をつけていないといけない」などと投稿し、「しんぶん赤旗」の記者を脅したとして、警視庁は13日、50代の男性を脅迫容疑で書類送検した。捜査関係者への取材でわかった。検察に起訴を求める「厳重処分」の意見をつけたという。赤旗によると、男性は投稿したきっかけに政治家のSNS投稿を挙げたといい、影響力のある人物の言動が事件を誘発した形だ。

 男性は、日本維新の会の藤田文武共同代表が、X(旧ツイッター)に赤旗記者の名刺画像を添えて投稿した内容を引用する形で投稿していた。藤田氏が投稿した画像では、記者の携帯電話番号は一部が加工されて読めないようにされていたが、氏名や編集部の電話番号などがわかる状態だった。

 男性の送検容疑は2025年11月5日、X上で、赤旗の30代の記者を名指しし、「顔もあちこち出ているから、調子に乗って刺されないように前後左右気をつけていないといけない」などと投稿して脅したというもの。赤旗が11月14日に、この投稿は脅迫容疑にあたるとして警視庁原宿署に刑事告発していた。その翌日、男性が署を訪れて自首し、投稿の経緯などを自ら説明したという。

 男性は容疑を認め、「書かれた立場になって見返すと、恐怖を与えてしまった」という趣旨の話をしているという。任意の調べに「自分が(記者を)刺すという気持ちは一切なく、単純に気をつけてほしいという趣旨だった」などと説明。「ストレスをネットで発散したかった」とも話しているという。

 藤田氏の投稿は、赤旗の報道に反論する中で出されたものだった。「しんぶん赤旗日曜版」は昨年10月、藤田氏側が公金を使って身内に発注した疑惑を報じていた。藤田氏はXで「恣意(しい)的な記事ですが、すべて実態のある正当な取引」などと反論していた。その後、藤田氏は身内への発注をしない考えを示していた。

 名刺を公開した藤田氏に対し、赤旗は昨年11月、「正当な取材活動を萎縮させる」として画像の削除と謝罪を求めた。

 藤田氏はこれまでの会見で「赤旗は報道機関ではない」と述べていた。投稿を削除していない。

 藤田氏は13日の記者会見で、今回の事件について「どんな理由があっても法を犯す行為はあってはならない。粛々と責めを受けるべきだ」と述べた。Xに赤旗記者の名刺画像を投稿したことが適切だったのかと問われ、「犯罪を教唆したことにはならない」などとして、撤回しない考えを改めて示した。投稿と事件との「因果関係はわからない」とも語った。(藤田大道、神野勇人)

 ■「権力による報道への攻撃」 赤旗日曜版編集長

 しんぶん赤旗日曜版の山本豊彦編集長によると、書類送検された男性と記者が4月に会い、謝罪文を受け取った。その際、男性は、投稿したきっかけに藤田氏の投稿を挙げたという。山本編集長は、藤田氏の投稿は「政権与党の幹部という特別な権力による報道への攻撃だ」と話した。

 藤田氏の投稿以降、記者のアカウントに大量の自動返信メールが届いたり、第三者から「記者を出せ」と編集部に電話がかかったりしたという。

 山本編集長は「藤田氏には改めて速やかな謝罪と投稿の削除を求めたい」と話した。

 ■「リテラシー不十分の可能性」 研究者

 SNS分析に詳しい東京大学の鳥海不二夫教授(計算社会科学)は、藤田氏の投稿について「多くの支持者を抱える政治家の発信で、閲覧者がどんな行動に出るかは一定の予測ができてもおかしくはない。できなかったとすれば、SNSに対するリテラシー(理解して使いこなす能力)が十分ではなかった可能性が高い」と指摘する。

 発信力のある人物による、支持者らの攻撃的な行動を誘発する投稿は「犬笛」とも呼ばれる。2024年からの兵庫県の内部告発文書問題にからみ、自死した元県議に関するデマを元国会議員がSNSで拡散し、元県議への中傷が相次ぐ事態も起きた。

 鳥海教授は、一連の問題で「『犬笛』のような方法の有効性が広く知られた」と話す。その上で、「責任ある立場の人はこういったSNSの性質についてきちんと理解して使うことが求められる。理解したうえで投稿をしたのであれば、一定の批判を受けることは免れないだろう」と話す。(華野優気)

「デジタル版を試してみたい!」というお客様にまずは1カ月間無料体験