「完璧」から「個性」へ。AIが照らした逆説

まず先に述べておこう。
AIが教えてくれたのは、完璧よりも"違和感"だった。

きっかけは一つの気づきにある。
AIである程度曲を作り続けていると、「あること」に気づく。

──どの曲も、どこか似ていることに。

気づいた瞬間の気分としては恐ろしい以外にない。

こいつ、まさか統計でも取ったのか・・・!!
(いや、当然ながらそうであろう)
こいつ、私の中の何かを把握しているにちがいない!!
(おいおい、半分当たりで半分シャレだろう笑)

実際仕上がった曲を見てみるとコード進行は整っていて、メロディは耳なじみがよく、展開も破綻がない。
完璧だ。
というより直球の「王道」路線を最もわかりやすい形で突いてくる。

彼らはつねにヒットを打つホームランバッターだ。
うまく使いこなすとそれが可能になる。

これはアスリートが練習に練習を重ねて本番で良いプレイができるのと同じく、AIで作った曲には多かれ少なかれ共通項が見えてくる。

「共通項が見えてくる」と書いたが、これはじつは誤りであり、実際のところは私たち自身が感性という一貫して不変に似た要素を持った尺度で物事を選択し決定し続けているという原理が根底に働いている。

すなわち、選曲は私たち作り手自身が行うプロセスである。
そのなかで共通したものが見えてくるのは不思議ではないという見方もできる。

コードもメロディもリズムも展開も、AIによって似たものが出来上がるというよりは没個性化が促されるといったほうが正しいかもしれない。

だからまとめて聞くとどこか似た感じにもなりやすい。
個別に聞くとまた違うが、同じプラットフォーム上に寄せ集めて並べてみると、案外に似通っているなと感じることは多々ある。

このように、AIを使った楽曲制作は個人の没個性化を促進させるとともに、量産型の楽曲を作り続ける結果にもなり得ることを申し上げたい。

ここに差別化といった言葉の出番はない。

なぜなら区別すら取っ払われてしまっている世界であるからだ。

AIで作ったもの=1
これは100通りにも1000通りにもならない。

だが、ここに結果をガラリと変えてしまう要因が一つだけある。
「音楽的経験」である。

音楽経験者であれば、これとこれは同じ配列だなという風にまとめたり、同じ記号や流れから生まれているなと認識したりすることができるだろう。

彼らは区別の仕方を知っている人たちでもあるし、多数の音楽接触を通じて耳が育っている人たちでもあるからだ。

つまり「同じ」に気づきやすい。
どこか似た感じにもなってしまっていることにも当然ながら気づくことだろう。

ここがAIでの楽曲制作の真の出発点になる。
何事も質よりまず量というのは楽曲制作でも変わらない。

まず「気づく」こと。
AIによる制作においても音楽経験者の方がまったくの未経験者よりも有利になるのはそこにある。
(ただし、ほとんどの音楽経験者においてはAIを使わなくても曲作りができるので、使わない選択を取る人も多いのが現状だ。くわえてAI反対派も多い)

キャッチーで整ってはいるしかなり完成形に近いけれどその量産になってしまう危機感。このような感覚をおそらく一般の利用者は持っていないのではないだろうか。

私はこの感覚を違和感と呼ぶ。

違和感の先。本当の面白みは気づきの向こう側にあって、築き上げた山をいかに「崩す」かにある。

どう崩して新しい山を築いてどんな景色を描くはその人次第。

ただし、そこまで行くには山登りのごとく、コツコツ量を作り続けること。
試しにでいい。

そうまでしてやっと「あれ? これとこれって似てないか?」という気づきのかけらが落ちてくる。

そう。成功に見えたものは並列されたトラック(曲)だったのかもしれない。

それを個性とは言い難い。
オリジナリティだと勘違いしてはいけないのだ。

この手前で「これは自分の作品です」「これは自分の個性だ」と言う人もいるだろうが、それはそれでいいと筆者は思っている。
もちろん、リスナーである受け手のほうが「この人の楽曲は個性的でオリジナリティがある」と評価する場面も多数あると思うし、それはそれで構わない。
いわゆる「何をやってもキムタク」と同じ理論だ。

ただ、その一歩先へ進むとより面白くなるのではないかと思われる。


では最後に、テクノロジーを使いつつ個性を引き出す方法について簡単に記しておこう。

AIを使用して蓄積したモデリングを分析し、それを人間的に組み替えて再構築することでやっと出てくるものが個性である。
個性が出てくるということは並列化と量産化の群れから逃れる唯一の方法である。

もうここまで来れば躊躇うことはない。

さぁ、AIの先へようこそ。






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