SNKで新スタジオ設立…原田勝弘は今何を思うのか?人生の折り返しを過ぎたクリエイターがゼロから再スタートを切った理由を訊いた【インタビュー】
バンダイナムコにて『鉄拳』シリーズを30年以上作り続けてきたゲームクリエイター・原田勝弘氏が、2025年に同社を退職されました。 【画像全8枚】 その後、次のキャリアについて多くの噂が飛び交いましたが、この度、SNKの子会社として「VS Studio SNK」の設立を発表しました。 55歳の原田氏が感じたクリエイター人生の折り返しと、再スタートを切ることについての意気込みなどをじっくりとお聞きしました。 30年のゲーム開発人生を見つめ直すきっかけとは? 久夛良木氏との会話から見えてきたもの ――今回のスタジオ設立にあたり、米盛さんに声をかけた経緯を教えてください。 原田:米盛とは90年代から一緒にやっていて、『鉄拳』シリーズなどで20年ほど仕事を共にしてきました。彼は『7』まで関わった後に海外や別会社に移っていたんですが、今回「もう一度一緒にやらないか」と声をかけました。 原田:話をしたときに「面白そうだな」と素直に思ってくれたみたいで、前向きに検討してくれました。新しいスタジオで、まっさらな状態から挑戦できること、昔の仲間とまた一緒にやれることにワクワクしてくれたのは大きかったですね。正直、キャリア的にも年齢的にも大きな決断だったと思うんですが、それでも動いてくれたことは自分にとって一つの成功体験でした。 ――X上では引退と受け取られている向きもありましたが、あの頃の気持ちや、退職直後の世間の反応はいかがでしたか。 原田:完全にリタイアするつもりはなかったんですよ。どんな形であれゲームには関わり続けたいと思っていました。ただ、Xでは、特に海外のファンから「お疲れさまでした」って何度も言われて(笑)。みんな「リタイア」って言葉を使っていましたよ(笑)。 気持ちの火は全然消えていませんでしたし、むしろどこかでまたやるつもりで、バトルしながらでも復活してやろうと思っていました。ただ、こんな理想的な形でスタジオを設立できるとは思わなかったです。 ――理想的というのはどういった点でしょうか。 原田:独立には本来いろいろなリスクがありますが、今回はSNKさんの支援もあって、環境面の負担を大きく軽減してもらっています。その上で、やることや挑戦はゼロから自由にできる。このバランスはなかなか得られないものです。 ――キャリアを見つめ直すきっかけは何だったのでしょうか。 原田:シンプルに「時間は有限だ」と実感したことですね。僕は統計の本が好きで、そういったものをよく読むんですけど、当たり前ですが男性の平均寿命とか書いてあるわけですよ。 で、僕は今55歳なんですが、45歳のときに「もう俺はこの倍は生きられないのか……」と思ったことがありました。そんな人生の折り返しを過ぎたとき、残りの時間で何ができるかを真剣に考えるようになったんです。 それに加えて、板垣(伴信)さんをはじめ同世代の人たちが亡くなるケースも増えてきて、「あとでやればいい」という考えが通用しないと感じたんです。だったら今やるしかない、と。 一方で、PlayStationを作った久夛良木健さんとよく話すんですが、あの人は将来の話を当たり前のように語るんですよ。「原田君、30年後はね……」みたいな(笑)。そのとき、もうあなたはこの世界にいないでしょう?と(笑)。そういう人たちの姿を見て、「自分もこうありたい」と思えたのも大きいですね。 ――ほかに久夛良木さんとはどんなお話をしたのでしょうか。 原田:あの方は大学教授をやっていて、僕も特別講師として呼ばれるので、そういう時にちょっと悩んでいることとかについてお話をするんですけど、久夛良木さんは本当にずっと未来を見ている人で、よく「未来がライバルだ」って言っているんです。 「誰かがやるのを待つんじゃなくて、なぜ自分でやらないのか」と言われたときに、すごく背中を押されました。やっぱり時代を変えてきた人は違うなと感じましたね。 ――スタジオ名「VSスタジオ」の由来について改めて教えてください。 原田:いろいろな意味が重なっています。自分たちのキャリアの出発点に「VS開発部」というルーツがあったこともそうですし、“ビデオゲームソフト”や、ヴァンガードスピリット(先駆者の精神)の略など様々なVS省略形としての意味合いがあります。 もちろん“対戦(VS)”の意味も含まれていますが、それだけではなく、自分たちのものづくりの原点や精神を込めた名前ですね。見る人によって違う解釈ができる、ある意味ミスリードも含めたネーミングにしています。 ちなみにスタジオの場所もSNKの東京オフィスと同じビルです。どうやらスターバックスジャパンの本社もここにあるみたいですね。 ――やはり3D格闘ゲームを作りたいというお気持ちはありますか。 原田:まだジャンルを完全に絞り込んでいるわけではありません。ただ、いきなり全く方向性の違うものを出すつもりもありませんし、自分たちが得意とする“対人で競い合うゲーム”は軸になります。 ユーザーの期待、開発者のやりたいこと、そしてSNKとの関係性。そのすべてがうまく噛み合うところで最適解を探っていきたいですね。一発目から私のテイストをふんだんに盛り込んだファンタジーパズルです、みたいなことにはならないので安心してください(笑)。 ゲームに対する情熱はどんどん強くなっています。ただ、その一方で自分の体力や時間が有限であることも実感しているので、「やりたいことをやらないまま終わりたくない」という思いが強いですね。 ――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。 原田:まだ具体的なタイトルの発表はできませんが、「ちゃんと動いています」という生存確認だと思っていただければと。 今回の発表は人員募集という意味合いもあり、ベテランから若い人まで、ゲームへの情熱を持っている人は大歓迎です。少し時間はかかるかもしれませんが、忘れた頃にまた驚きを届けられるようなものを準備したいと思っています。 米盛:僕としてはシンプルに、まっさらな環境で新しい挑戦ができることを楽しみながら、良いゲームを作っていきたいと考えています。少しお待ちいただければ幸いです。ぜひ応援していただけると嬉しいです。ありがとうございます。 小田:SNKとしても「VS」誕生をしっかりと支えていきたいと考えています。素晴らしいクリエイティブをできるだけ早く発表できるよう、全力でサポートしてまいります。 新スタジオはまだ立ち上がったばかりですが、原田氏の言葉からは、これまでのキャリアを踏まえつつも“もう一度ゼロから挑戦する”という強い意志が感じられました。 SNKの支援を受けた新たな環境で、どのような作品が生まれるのか注目したいですね。
Game*Spark 各務都心
【関連記事】
- 【無料公開】“MBTI”ならぬ“DSKB”―自身の隠れた性癖も露わになりそうなドスケベ傾向診断テスト『16 DSKB Types』が話題沸騰中!
- 上半身だけのパートナーと接合した状態で旅を進める!ポストサイバーパンク・サバイバルホラーRPG『GRAFT』
- 『月姫』アルクェイドのモデルとされる人物、詳細23年越しに明らかに―海外ファンの調査、実を結ぶ
- 「にゃるら氏を外さないとアニメを中止する」『NEEDY GIRL OVERDOSE』アニメ発表直前にプロモーションから外されたにゃるら氏が声明【UPDATE】
- 『Stellar Blade』はすべての国で無修正版を提供する―公式Xが明言、同業者には戸惑いも