国宝「称名寺聖教」の欠落部分、魯山人旧蔵品から発見

松沢奈々子

 鎌倉時代の仏教書群である国宝「称名寺聖教(しょうみょうじしょうぎょう)」の欠落部分の写本など約10点の関連写本が、芸術家北大路魯山人(1883~1959)の旧蔵品などから新たに見つかった。4日から神奈川県金沢文庫横浜市金沢区)で始まる特別展で初公開される。担当学芸員は「鎌倉の仏教文化を知る上で重要な発見」と話す。

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 称名寺聖教は約1万6千点超の仏教書群で、2016年に国宝に指定された。鎌倉時代の浄土宗や禅宗などの鎌倉新仏教と、真言宗を始めとした旧仏教の歴史や文学など、武家文化の解明に欠かせない第一級の史料だ。

 所蔵する金沢文庫は、鎌倉時代中ごろ、北条氏の一族である金沢北条氏の武将、北条実時(1224~76)が建立した古寺・称名寺に隣接して建てられた武家の文庫で、地名の由来にもなった。称名寺を菩提(ぼだい)寺に、現在は中世の歴史博物館として調査研究を行っている。収蔵品の多くが金沢北条氏と称名寺に伝来するものだ。

 今回見つかったのは称名寺聖教のうち、さまざまな仏像について図を付けて解説した密教図像集の「諸尊(しょそん)図像集(ずぞうしゅう)」に関する写本約10点だ。諸尊図像集は、鎌倉地方で編集された可能性があり、他の密教図像集にはない仏像が複数含まれるなどの独自性がみられるとして、称名寺聖教にしか存在しないとされてきた。

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 ところが、北大路魯山人の旧蔵品に称名寺聖教に似た密教図像集があるという情報を得たことで、数年前から調査研究を進めてきた。「不動絵巻」と呼ばれたその図像集は、その価値ゆえに1955年に約40点に分割され、全国各地に散逸。全体像が不明のなか、同文庫が情報を集めて再調査した結果、画風が似ていることなどから、約10点が「諸尊図像集」の欠落部分を補う写本や関連する写本とわかった。火炎を背にした「降三世明王(ごうざんぜみょうおう)」と「烏枢沙摩(うすさま)明王」の図が魯山人の旧蔵品と確認したほか、すでに知られていた「不動明王」や「帝釈天」に関する別の写本も見つかったという。

 同文庫の主任学芸員瀬谷貴之さん(49)は、これらはかつて称名寺にあった可能性が高いと話す。「称名寺で写されたものが色々な経緯で魯山人の手に渡ったのだろう。意外な広がりがわかり、鎌倉時代の仏教史にとって重要な発見です」

 4日から金沢文庫で始まる特別展「東アジア仏教への扉」で初公開される。来年1月末まで。午前9時~午後4時半(入館は午後4時まで)で、原則として毎週月曜日と年末年始休館。一般400円、20歳未満及び学生250円、65歳以上200円、高校生100円、中学生以下無料。問い合わせは045・701・9069へ。

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