おかえり、ドリス。独立・高知のドリスが甲子園で登板! キレキレのフォークで前川右京を空振り三振斬り!
■ドリスが甲子園に帰ってきた
「ドリス~!」「ドリちゃぁ~ん!!」「おかえり~!」
阪神甲子園球場に声援がこだました。愛され助っ人、ドリス・ラファエル投手が甲子園に帰ってきたのだ。トレードマークのドレッドヘアに、カラフルなリボンを編み込んでるのがかわいらしい。
2016年から19年までタテジマをまとったドリス投手は、クローザーとして17年には37セーブを挙げて最多セーブ投手のタイトルに輝いた。タイガースでの4年間で208試合に登板し、13勝18敗96セーブ、28ホールド、防御率2.49の成績を残している。
そしてメジャーやメキシカンリーグを経て昨年、再び日本球界に戻ってきた。
ただ、所属するのはNPBではなく四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグス。そう。独立リーグだ。かつていた世界と比べて決して恵まれているとはいえない環境だが、それでも高知でプレーするのは「日本が大好きだから」だという。なんとも嬉しいではないか。
タイガースで背負った背番号98を再び着けているのも、虎ファンたちを喜ばせていた。
(最後にドリス投手のピッチングフォーム写真を掲載)
■タイガース関係者と旧交を温める
5月27日、阪神タイガースの野球振興室が企画した若虎との交流試合で、独立4球団の選抜メンバーとしてドリス投手はやってきた。(交流試合の詳細⇒「初めて足を踏み入れた甲子園球場に、独立リーガーたちが大興奮! 阪神・野球振興室が企画した交流試合とは」)
前日から大阪入りし、試合当日も早い時間からグラウンドに顔を出したのは、練習するタイガースの面々に会いたかったからだろう。
ファームの平田勝男監督と固く握手を交わすと、和田豊1・2打撃巡回コーディネーターや俊介コーチ、野球振興室の馬場哲也氏や筒井和也スカウト、秋山拓巳ベースボールアンバサダー(BA)ら旧知の顔を見つけては、再会を喜びあった。
そして原口文仁選手が「Remember me?」と近づくと、歓喜の声をあげてハグをしたドリス投手は、試合中継の解説に訪れた秋山BAを交えて写真撮影をし、しばらく思い出話に花を咲かせていた。
驚いたのは、前川右京選手がニコニコ笑顔で話しかけにいったことだ。あれ?かぶっていたっけ?いやいや、そんなはずはない。前川選手は4年目、2022年からだ。
何かつながりがあったのかと尋ねると、「コミュニケーションです(笑)」とニヤリ。なんというコミュ力の高さなのか!感服させられた。
ひとしきり旧交を温めたドリス投手は「なつかしい方々がみんないらっしゃったんで、あぁ戻ってきたなっていう感じはすごく実感しました」と頬を緩め、前夜も「明日は甲子園で投げるんだなっていうことを考えながら寝ました」と、どれほど楽しみにしていたかを打ち明ける。
その後、練習前に高知の投手陣から「一緒にマウンドをチェックしにいこう」と声をかけられると、「俺はもう投げ慣れているからいいよ(笑)」と断り、ゲームでのマウンドを心待ちにしていた。
■キレッキレのフォークで前川右京を3球三振に
出番は六回裏だった。名前がコールされると、冒頭のように大きな声援が飛んだ。「たくさんのファンが見にきてくれたんだな」と気をよくすると、虎時代と変わらぬフォームでボールを投げ込んだ。
先頭の福島圭音選手はセカンドゴロ、続く戸井零士選手は初球のストレートでショートゴロとぽんぽんと打ち取り、いよいよ前川選手との対決となったが、前川選手にはフォーク、フォーク、フォークと3球続けて、すべて空振りを奪った。
「ツールが兼ね備わっている選手。パワーもあるし、スイングもいい。これからまた、いい選手になるんじゃないかなって感じました」。
自身の“後輩”にあたる若虎の可能性に言及し、大きな期待を口にした。
甲子園のマウンドはお気に入りで、「僕らがやっている四国アイランドリーグplusのマウンドはすごく柔らかい。ここのマウンドは硬くて、ここで投げ慣れているので投げやすかった」と言い、ピッチングについては「コントロールも自分でちゃんとコマンドできたんで、自分の成績に対しては満足しています」と振り返る。
かつてのように160キロ超え(2017年に当時の球団史上最速となる161キロを記録)のスピードボールはなくなったが、変化球のキレやコントロールはやはり、さすがだった。
■鰹のたたきが好物に!?
そもそも2016年に日本球界に挑戦したのは、かつてカブス時代のチームメイトだった藤川球児投手の助言がきっかけだった。その後、タイガースでまた共にプレーし、昨年も藤川氏の誘いで高知に入団した。
「日本という国がすごく好き。食事もそうだし、文化もそうだし、なにより人がいいんでね。みんな迎え入れてくれて、ここで野球をすること自体がすごく楽しい。だから、日本に戻ってきてプレーしています」。
そこまで日本を気に入っていることに驚かされた。
タイガース時代、ちょっとした取材はよく藤川投手が通訳してくれて助かったことを思い出す。そのころは生魚がダメで、まったく食べられないと言っていたが…?
「お刺身も食べられるようになったよ!鰹のたたきも食べています(笑)」。
なんと!高知名物である鰹のたたきに舌鼓を打っているのか。順応性の高さに感心した。
■平田勝男監督
ドリス投手のピッチングを見た平田監督は「いいフォークを投げとった!前川もきりきり舞いやんか!たいしたもんだよ」と目を見張った。
「スピードは全盛のころよりは…。でも、コントロールとかフォークの精度とかっていうのが上がっているんでね。彼も、もう一度NPBを目指してやってるんじゃない?37歳だって言ってたよ。久しぶりになつかしかったな」。
練習中には再会を喜び、同じドミニカ共和国出身のスタンリー・コンスエグラ選手を呼んで、「アドバイスしてやってくれよ」と引き合わせるなどしていた。
■嶋村麟士朗にとっての師匠
ルーキーの嶋村麟士朗捕手は、ドリス投手とは昨年バッテリーを組んでいた仲だ。練習中もドリス投手の姿を見つけるや、ぴょんぴょんと駆け寄り、子どものようなキラキラした目で見上げながら会話していた。
「会えて嬉しかったですね。ドリスはなんも変わってなかったです。僕は『ちょっと痩せたね。体が引き締まったね』と言われました。独立のときより、ちょっと痩せているかもしれないです」。
変わらないのはベンチでの姿もそうだという。大きな声を発するドリス投手に「ベンチで声出しすぎよ(笑)!めっちゃうるさいよ(笑)!」と言ったと明かす。
ベンチから、その投球も凝視した。
「スプリットをああやってコントロールできる選手は独立リーグにはいない。去年も投手陣はドリスのスプリットのコントロールを参考にしたり、新球種でスプリットを覚えて投げだしたピッチャーがいたり、みんなドリスから学んでいました。今日も見ていて、まっすぐのコントロールとか変化球の落としどころとか、ちゃんとできていたというか、またさらに進化しているんじゃないかと思いましたね」。
あらためてそのピッチングに敬服していた。
NPB入りを目指していた嶋村捕手にとって、ドリス先輩は上の世界を知る“師匠”だった。
「配球はもちろんですけど、ドリスはメジャーリーグも経験しているのでバッティングもアドバイスしてくれました。『もっとスイングしたほうがいいよ』とか『2ストライクから当てにいくのはいいけど、それまではフルスイングしとけ』とかって、ドリスから言われた(笑)。ピッチャーのドリスから言われました(笑)。『うん、たしかにな』って思って、それは今でも自分の中に生きています。ドリスと一緒にやれたのは本当に財産やし、今後にも生きるようなことばっかり教えてくれましたね」。
ドリスと出会えたこと、バッテリーを組めたこと、一緒に過ごした時間は、嶋村捕手にはたいせつな宝ものだ。
■いつかまたタテジマ姿が見たい
盟友・藤川球児氏が、今年から古巣の監督になった。「阪神の試合は毎試合、見るようにしています。誰が投げて、誰が打ってって見ていますよ」と藤川阪神を陰ながら応援している。
そんなドリス投手自身は、今後どのようなビジョンを描いているのか。NPBを目指しているのか。
「もちろん、そこは一つのアイディアとしてあります。でも、それが叶わなかったとしても、日本で野球を続けていきたいっていう気持ちはあります。体の状態次第ですけど、これからもし5年間プレーし続けられるんだったら、やりたい。できるところまでやります」。
そこまで強烈にNPBにこだわっているわけではなさそうだが、日本で長くプレーしたいという。ここまで日本を愛してくれているなんて、嬉しい話ではないか。
今もなおオチャメでかわいらしいドリス投手。赤のユニフォームも似合っているが、またタテジマを着た姿も見たいなぁ…。
【阪神タイガース・野球振興室*関連記事】
*阪神タイガースが独立球団とタッグを組んで野球振興。石川&富山(日本海リーグ)2連戦での経済効果
*ドリスが帰ってくる! 阪神ファームVS独立リーグ連合チームの交流試合はなんと甲子園球場で明日開催!!
*初めて足を踏み入れた甲子園球場に、独立リーガーたちが大興奮! 阪神・野球振興室が企画した交流試合とは
(写真の撮影はすべて筆者)