地方衰退の一番の原因は「人口減少」ではない…山口の超富裕層が「住民税43億円」をまるっと抱えて移住した理由
■「稼ぐ自治体」にならなければ未来はない もう一つ、ジェームスさんの指摘で看過できないのが、行政の「稼ぐ」意識の欠如だ。 「市役所は『市の顔』だからと、庁舎の建築や内装に莫大な予算を投じる。立派な庁舎ができて幸せなのは、そこで毎日働く職員だけです。住民の暮らしが豊かになるわけではない」 全国の地方都市で、中心商店街はシャッター通りと化している。「この空き店舗を市が借り上げ、若手起業家に安価で貸し出す仕組みはできないのか。外国資本や県外企業に遊休地を安価で提供し、一定の雇用条件を付帯しつつ、固定資産税が長期的に回収できるスキームを設計できないのか」 私がここで問いたいのは、自治体の「主語」の問題である。従来の地方自治体は、住民から税を徴収し、それを再分配する「分配者」として機能してきた。だが、人口が減り、税収が減る時代に、この「分配者」モデルは持続可能だろうか。 GDPパーキャピタ(一人当たりGDP)の視点から言えば、人口が減少する以上、一人ひとりの生産性を高めるか、あるいは行政自体が「稼ぐ主体」に転換するしかない。市の資産、インフラ、そして何より「土地」と「自然」という地方ならではの資源を最大限に活用し、究極的には住民からの税収に依存しなくても回る自治体を目指す。 途方もない理想に聞こえるかもしれない。だが、その途方もなさこそが、今の地方に必要な発想の水準なのだ。なぜなら、「現実的な」施策は、すべて試され、すべて失敗してきたからだ。ゆるキャラ、B級グルメ、ふるさと納税の返礼品競争――どれも一時的な話題にはなったが、人口減少のトレンドを反転させるには至っていない。 ■「隣町は人口増」加熱する生存競争 周南市の人口は13万人台に突入し、減少は止まらない。だが興味深い事実がある。隣の下松市は、人口が微増しているのだ。 下松市の人口は約5万6000人。周南市の半分以下だ。だが、周南市との合併を選ばず、単独市として歩んできた。そして今、山口県内では珍しく、人口が増加傾向にある。日立製作所の関連企業が立地し、新幹線の車両の製造拠点がある。産業基盤は周南市に劣らない。だが、何かが違う。 私はここで安易な結論を出すつもりはない。下松市が成功していて周南市が失敗しているとか、合併が間違いだったとか、そういう単純な話ではない。ただ、「規模を大きくすれば栄える」という前提が、必ずしも正しくないことは明らかだ。 問われているのは、もっと根本的なことだ。誰が、この街の未来を語るのか。その「語り」に、どれだけの本気度があるか。そしてその本気度を、行政は受け止める器を持っているか。