地方衰退の一番の原因は「人口減少」ではない…山口の超富裕層が「住民税43億円」をまるっと抱えて移住した理由
■「議員30人を300人にしたい」仰天プラン ジェームスさんの提案は、この構造を根本から変えようとするものだった。世の中のトレンドが議員を減らすという方向に走る中、「30人の議員定数を10倍の300人にする」という真逆の発想だ。 「同じ予算なら1人当たりの報酬は10分の1になる。こうなると到底、生活のために市議会議員になるという選択肢はなくなる。そこで本気で街づくりに関与するスペシャリストを集める。教育の専門家、環境問題のスペシャリスト、都市計画のプロ、建設業界の知見を持つ人材、福祉に造詣が深い人――各分野の『本物』を起用し、この街の未来を多角的に設計する」 一見、突拍子もない提案に聞こえるかもしれない。だが、考えてみてほしい。企業経営において、社外取締役や専門委員会の設置が当たり前になったのはなぜか。複雑化する経営環境において、ゼネラリストだけでは対応できないからだ。同じことが、自治体運営にも言えるはずではないか。 ジェームスさんはこうも語る。「政治家は本来ボランティアの精神で市民のことを考え、地域の実業家はその場所で稼ぎ、街を支える。このモデルが理想だ」 アメリカの地方では、実際にこのモデルで機能している小規模自治体が少なくない。市長は無給か名目的報酬で、本業は弁護士や経営者。議会は夜間に開催され、さまざまな職業の市民が参加する。日本の地方自治法がそのまま許容するかは別として、発想としては十分に検討に値する。 しかし現実には、地方議会の現場からすれば、自分たちの立場を脅かすような改革を歓迎するはずがない。面白いわけがないのだ。かくして、改革の芽は摘まれる。日本中の地方都市で、同じことが繰り返されている。これを「既得権益」と呼ぶのは簡単だ。だが、問題の本質はもう少し深いところにある。 ■「成功者」が身近にいない。だから将来を描けない ジェームスさんの主張の中で一貫しているのは、「この街の将来の生命線は、高齢の議員や役人が会議室で決めるのではなく、子供に決めさせることだ」という信念である。 地方の教育現場ではロールモデル不足が深刻だ。都市部に比べて多様な職業や生き方に触れる機会が圧倒的に少ない。東京の子供は、IT企業の社長にも、外資系コンサルタントにも、スタートアップの起業家にも出会える。親戚や知人の中に、そうしたキャリアの人がいる確率も高い。だが周南市の子供にとって、身近な「成功者」とは誰か。多くの場合、コンビナートの社員か、公務員か、地元の商店主だ。それが悪いとは言わない。だが、選択肢の幅が狭いのだ。 ジェームスさんは言う。「子供たちは『この街にいても何もない』と感じ、18歳になれば出ていく。そして二度と戻らない」 地方自治体が教育に投資しても、その投資で育った人材が流出するというジレンマ。これを「教育投資のパラドックス」と呼ぶ研究者もいる。育てた人材が出ていくなら、なぜ育てるのか。その問いに、多くの地方自治体は答えを持っていない。