三浦半島縦断 RUN and HIKE
3月27日、朝4時50分。普段であればまだ寝ている時間。集合場所に向かうと、太陽もまだ出ていない真っ暗な静かな街とは裏腹に、眠そうな顔ひとつしていない生き生きとした顔の子供たちが集まっていた。
今回は逗子の子供たちの三浦半島縦断チャレンジに、ミウラ・ドルフィンズのスタッフ宮﨑喜美乃がトレランコーチとしてお誘いを受けた。
冬の寒さが終わり春の暖かさを感じる日中となったが、早朝のこの時間は暖かいウェア無しではひんやりとし、街が起きる前のシーンとした空気がより寒さを感じた。子供たちと一緒に始発電車で出発地点に移動し、朝日が登るのと同時に歩き始めた。
今回のチャレンジには小学4年生から中学生までのメンバーが参加した。普段から逗子の海岸を中心に海に山に駆け回る”そっか”の子供たちと一緒に、三浦半島の山々を南から北上し逗子まで縦断するチャレンジだ。走る子歩く子のRUNチームとHIKEチームの2手にわかれ、RUNチームは三浦半島の最南端に位置する城ヶ島をスタートし逗子海岸までの30kmを、HIKEチームは、三浦富士の麓から同じく逗子海岸までの20kmをチャレンジした。
12歳前後の子供たちが長距離、長時間を動くチャレンジ。自分の12歳を振り返っても、あの時に20kmを歩く、30kmを走る、そんなことが出来ただろうか。そんなことを考えることもしなかったあの頃の自分を振り返った時、商店街で売っている大判焼きを頬張る顔が思い浮かんだ。笑
私は最初にHIKEチームと一緒にスタートし後半RUNチームに合流する、という流れで参加した。スタート前には靴紐が解けない様に結び方をレクチャー。みんな覚えがよく、見てすぐに実践できる能力が鍛えられている。大人に教えても1回でできる人は少ない。
スタート直後、それぞれのグループで歩き出す子供たち。満開の桜に興味を示す子、途中の遊具で遊ぶ子、HIKEチームなのにいきなり走り出す子。それぞれがそれぞれのペースで動きだす。その自由さを生み出せるのが ”そっか” のサポート体制だ。子供が20km、30kmの運動をするのにも驚くが、それをサポートする大人たちが多いのもこのコミュニティの素晴らしいところ。
私は女の子3名と動き出した。好きな曲や番組、ダンスなどなど、学校で何をしているのか、家にテレビのない私は子供達に流行を聞くのが毎度の楽しみ。今回はTikTokでみんなが踊っていたと言うダンスを教えてもらった。が、すでに半年前に流行っていたものらしい。笑
険しい登りも普段から山道を駆け回っている子供たちにはなんのその。小さな背中で背負う大きなザックの中身を見せてもらうと、たくさんのお菓子が出てくる出てくる。そんな子供らしさ満点な面に加えて、みんなに配りやすいお菓子を用意する優しさも持っている。お菓子の袋を開けた途端にみんなに取られて無くなることも多々。私もこっそり手を出してお裾分けをいただく。笑
すでに走り出したくなった4年生の男の子たち。RUNチームのように30kmはハードルが高いけど、自分たちのペースで走りたくて堪らない様子。先頭の子から少し遅れた男の子たちが「きみのちゃん、僕たちも走りたいから一緒に走って!」と嬉しすぎるお誘い。上りや、街中のコンクリートの道が長いと歩き出し、気持ちの良い下り坂になるとダッシュする、その様子にこちらも "走る" ことに無邪気になる。走りたい時に走る、自然体な子供達の動きが、ついつい大人の方が引っ張られて走り出してしまう。
長い階段を息を切らしながら登ると、見晴らしのいい大楠山の頂上だ。展望台に登ると三浦半島の街並みが見渡せる。木々に囲われた空間を歩いてきた時とは違う気持ち良さ。ひらけた空間に一面と広がる景色は心も身体も開放的になる。遮るものがない展望台の上で汗のかいた身体に風が通り、気持ちよさが倍増した。
下からお母様方の声がする。前日から用意してくれたというおはぎや塩きゅうり、飲み物などを担いで山頂まで上がってきてくれたのだ。快晴の気持ちの良い空の下、ほっぺたを膨らまして食べる子供たちの姿はこちらまで元気になる。のんびりとした雰囲気の中に勢いよくやってきたのがRUNチーム。HIKEチームに追いつけ追い越せと、朝別れた時の服装とは一転、半袖短パンの姿にみんなで驚き賞賛した。各自、マイカップで飲み物を注いでもらい、少し長めの休憩に入った。
腹ごしらえをしたら、いよいよ後半戦。前半の疲れを感じるRUNチームのみんなに ”行くぞー!エイエイッ” と声をかけると揃って ”オー!”と答えくれた。まだまだ元気。むしろここからが自分たちが初めて走る距離にワクワクしている様子。
RUNチームは普段から逗子の山々を走っているので、後半の山は慣れている。コースを伝えると「こっちだよ!」と頼もしい。天気もいいこの日はハイカーさんも多いが、声かけに道の譲り合いも慣れている。一人の子が 「上りが優先ってきみのちゃんが教えてくれたよね!なんでだっけ?”」と質問してくれた。
山登りは基本、登り優先だ。理由はいくつかあるが、1つは上りより下りの方が転びやすく、下りは落石を起こしやすいので上ろうとしている人に怪我をさせてしまう危険性が高いこと。2つ目に、上りの人は目線が地面を向きやすく視界が狭いため人の存在に気づきにくい。上りの人に比べて下りの人の方が先を見やすく早く気づいてあげられるから。ただし、場所によっては下りが先に通った方が安全な場所もあり、体力ある走る側が待ってあげたり、時と場合によりけり、譲り合いの心が大切だ。他にもマナーがあるので、ガイドブックをぜひ読んでもらいたい。
”山を走る”ことは一般的にはハードルが高いものと感じる。けれど、”そっか” の子供たちを見ていると、それが普通のことであり、お兄ちゃん、お姉ちゃんのその姿を見て小さい子たちも走りだすのもまた、普通のことになっている。
かと言って、私はみんながみんな走って欲しい、と思っているわけではない。歩く事で感じる足元の小さな発見、走る事で感じる風の冷たさ、座ることで感じる音の静かさ、鳥の声、写真を撮る事で感じる光と影によって作られる世界。一つに囚われず、いろんな側面から自然に触れる事で、それぞれに大事なものが生まれてくる。だから走ってみる、その気持ちになってくれるのが何より嬉しい。
いつも見る景色が近づいた時 ”思ったより近かった!” "またすぐ来れるね!" と話す子供たち。初めての距離に疲れた顔を覗かせていたが、逗子海岸で待ってくれた親御さんの声にスピードが上がる。ゴール地点で用意しくれた味噌汁やドーナツに”美味しい〜!”とさらに笑顔な子供たち。車や電車など乗り物を使わずとも、自らの足で繋いだその足跡は、チャレンジした人のみが与えられる勲章。
半袖でも汗ばむようになったこの季節。次の冒険は何をしようか。どこへ行こうか。春というのは何かをチャレンジしたくなる時期でもある。私も子供たちに負けずに、この4月にひとつ挑んでみたい。


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