独自

ノンバイナリーなのに戸籍は「長女」 高裁「憲法抵触」、抗告は棄却

有料記事

大貫聡子
[PR]

 男性にも女性にも当てはまらない「ノンバイナリー」の人が、「長女」とある戸籍を性別を明らかにしない記載に変更するよう求めた審判の抗告審で、大阪高裁(大島雅弘裁判長)は、男女以外の記載を認めない戸籍法の運用について、法の下の平等を定める「憲法14条の趣旨に抵触するもので是正すべき状態」と判断したことが5月11日、関係者への取材でわかった。

 決定は5月8日付。戸籍が社会の基本的なインフラとして承認されているとして、「具体的な制度の整備は国会の立法の過程を通じて行われるべきだ」と結論づけ、抗告を棄却した。

 抗告していたのは京都府本籍地とする50代で、性別を男性か女性かの二元的(バイナリー)に捉えられないノンバイナリー。女性として出生届が出され、戸籍の実父母との続き柄欄に「長女」と記載されたが、「男とも女とも扱われない権利を保障してほしい」として「長子」や「子」など性別を明示しない表記に訂正するよう求めていた。

 決定は、性別変更を可能とする性同一性障害特例法やLGBT理解増進法などに言及。ジェンダーアイデンティティー(性自認)は個人の人格や存在そのものに直結するため、性自認に従った法令上の性別の取り扱いを受けることは「重要な法的利益」と指摘した。その上で、現状の戸籍法の施行規則が男女にあてはまらない性自認である人の存在を前提とする表示方法を定めていないことなどは、LGBT理解増進法の基本理念に反するもので、ノンバイナリーと、それ以外のトランスジェンダーなどの間に無視できない取り扱いの違いを生じさせているとした。そうした現状は「平等原則を定める憲法14条1項の趣旨に抵触するもので是正すべき状態にある」とし、「性自認に合致する形で訂正する道を開くことが相当である」と判断した。

申立人「安堵感、言葉にできない」

 代理人の仲岡しゅん弁護士(…

この記事は有料記事です。残り322文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

お気に入りのニュースサイトをGoogleで優先的に表示できます。今すぐ「朝日新聞」をかんたん登録

この記事を書いた人
大貫聡子
くらし報道部
専門・関心分野
ジェンダーと司法、韓国、マイノリティー
  • 解説いまなら試し読み

    自分の担当した事件にコメントするのはやや恐縮なのですが、次の三点を指摘しておきます。 まず一点目は、戸籍に性別を記載するよう明示した条文はどこにあるのでしょうか?ということです。 意外と知られていないのですが、実は戸籍法には、戸籍に「性別」を書くよう明示的に定めた条文はありません。 戸籍に書くよう定められているのは「続柄」です。つまり親との関係を記載しなければならないのです。 二つ目に、「続柄」の記載によって何か法的権利が変わるのか?ということです。 長男、長女、次男、次女、という続柄の違いによって、実は親との関係での権利義務に違いはないのです。 ならば、「子」などの続柄でも特に問題ないのでは?というのが今回の事件の問題意識です。 三つ目に、現在、性同一性障害特例法によって、戸籍上の性別記載を男性から女性に変更することや、女性から男性に変更することは認められています。 しかし、「中間」への変更や訂正はできません。 これは例えるならば、「白から黒には変えられるのにグレーにはできない」という状態ですが、そこに意味はあるのでしょうか。 現代社会は、既に男女二元論のみで人間のあり方を捉えるのは困難になっています。 実際に世界では19カ国で、男女以外の記載が認められており、それで運用されています。

    2026年5月12日 08:44
  • commentatorHeader
    杉田菜穂
    俳人・大阪公立大学教授=社会政策
    視点

    誰もが持っている偏った見方・考え方への気づきがある。 教育現場でいえば、配布や掲示するなどして公開されるような名簿は原則として性別欄を外すというような実践の積み重ねもある。性的指向(好きになる性)と性自認(心の性)の多様性と権利への社会的

    2026年5月12日 12:26

関連トピック・ジャンル