経団連「高専や大学理系学部の拡充を」 科学技術立国へ政府に提言
経団連は11日、科学技術立国に向けた政府への提言を公表した。研究開発投資の拡大による雇用や賃金の増加、消費活性化をめざし、研究者や技術者といった「価値創造人材」の育成を訴えた。高等専門学校(高専)の新設や定員増などを提起した。
「科学技術立国戦略」を公表し、官民で研究開発への投資額を現状の20兆円強から2040年度に50兆円まで引き上げる目標をかかげた。デフレ下で長く続いた「コストカット型」の経営を、国全体で「投資けん引型」に転換すべきだとした。
理系人材の不足や国際競争力の低下に警鐘を鳴らし、高専の新設や再編、定員増への政府の支援策を要望した。高専から大学への編入も強化するよう求めた。スイスで中学卒業後に多くの生徒が活用する職業教育訓練制度をモデルにすべきだと提案した。
大学教育では学部の統廃合を通じて理系の学部と定員を増やすよう訴えた。工学、農学、薬学といった学部で経済界の実情に即した実践的な教育がなされていないと指摘。創薬分野を例示し、抗体や遺伝子治療、高分子薬といった先端技術に関する講義が不十分だとの企業側の声を紹介した。
高専や大学、地方自治体、業界団体などが連携し、分野ごとの「ナショナルトレーニングセンター(仮称)」の整備も検討するよう提言した。学生だけでなく、社会人の学び直しの機会の提供にもつなげる。
経団連の筒井義信会長は11日の記者会見で「理系教育全体の受け皿の拡充を図るということは重要だ」と述べた。
研究開発投資に関しては「世界トップ水準」への引き上げの必要性を強調した。経済協力開発機構(OECD)の推計によると、23年の日本の研究開発投資は国内総生産(GDP)比で3.42%となっている。韓国の4.96%、台湾の3.98%を下回る。日本の比率を5%に高める目標も打ち出した。
政策立案や資金配分を一体的に進めるため、政府に「科学技術省」を新設するよう呼びかけた。
高市早苗政権は人工知能(AI)・半導体、量子、造船といった17の戦略分野への集中投資をかかげる。日本成長戦略会議の分科会では理工・デジタル系の人材不足を課題にあげ、大学全体で同分野などの定員を現在の35%から40年に50%に上げる目標を立てた。
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(更新)- 山崎俊彦東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授ひとこと解説
世界の潮流をみると少なくとも博士人材重視が進んでいるなか、日本だけ大学院拡充はなかなか議論されず、学部や高専の拡充の話のみをしていることが多いという事実には違和感と歯痒さを感じます。半導体などは特に自分で作ってみて、計測してみて、駄目だったときに再度理論に立ち返るというプロセスを何度も経て初めて身につくものも多くあります。それだけ専門性特化の学びは深化・長期化していると考えるべきです。「何が何でも」「誰でも」博士をと言うつもりはありませんが、社会的な受け皿もなく、優秀な人材が博士に希望を持てずに学びを止めてしまう現状には危機感を覚えます。
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(更新) - 加藤雅俊関西学院大学経済学部教授今後の展望
理系強化は重要だが、「何を学ぶか」と並んで「どこまで学ぶか」も問い直すべきだ。学部4年間では専門知識の習得は途上であり、研究開発の最前線で即戦力となるには大学院での訓練が不可欠だ。しかし日本の大学院進学率は欧米と比べ低く、修士・博士の専門性を職務に紐づけて活かす仕組みも企業に乏しい。それが日本の労働生産性の低さにも表れている。AIが定型業務を代替し、AI自体を開発・制御できる人材の争奪が世界規模で激化する中、学部卒中心の人材構造では太刀打ちできない。高専や理系学部の拡充と同時に大学院進学率を高め、専門知識を発揮できる職務設計や処遇の仕組みを企業・政府が整えなければ、国際競争でさらに後れをとる。
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