「このレースに出ないと人生終われないな」シャチに襲われた日本人セーラー、コンサル業で指南した驚きの「日本脱出テク」…日本人海洋冒険家の"偉業"を見て新たな挑戦を決意
◇シャチに襲われた日本人セーラー・鈴木晶友の"破天荒すぎる"人生航路②
シャチに襲われ、クジラに衝突して世界一周した日本人セーラー、愛称「マサ」こと鈴木晶友(まさとも、40)は、夢を達成した後、ヨット・コンサル業を“開店”した。顧客からは、有事に備えた『日本からの一時脱出』のオファーも飛び込むなど驚きや発見も多い2年を過ごした。そして、「究極の移動」へ心は強烈に引き寄せられていく。(占部哲也)=全3回連載の2回目= 【実際の動画】これは貴重映像…シャチに襲われる様子、船底の水中カメラがとらえる
◇「もうギブ・アンド・テイク」世界一周の家族を救う
2023年4月に2人乗り世界一周ヨットレース「グローブ40」を完走したマサは、帰国後、2つの“顔”を持つことになった。一つは、日本で唯一のプロチーム「DMG MORI SAILING TEAM」のコーチ。小型船のセーリング技術を次世代に伝える役目だった。もう一つ、“副業”がヨットのコンサルティング業務。希有(けう)な経験を持つマサは言う。 「ヨットを買いたい人や持っている人から直接、連絡を頂いた。海外のレースに出たい、クルージングをしたいとか。要望に合わせてチェックする。ヨットや装備の選び方、使いこなす技術などをコンサルしました。1件の期間が長いので、2年間で4件、相談にのりました。選手としてやっているときは気づかなかったけど、こんな需要があったのかと。自分の活動(世界一周)を知ってもらって、口コミでお問い合わせをもらいました」 シャチに襲われたセーラーでも驚くオーダーがあった。有事に備えた「日本からの脱出」。ヨットの動力源は風。燃料はいらない。空港が閉鎖されても国外に出ることができる移動手段だ。 「例えばコロナのようなパンデミック(世界的大流行)のときに、太平洋の南の島の近くに停泊して『1~3カ月を船上で生活する準備をしたい』という相談がありました。船にソーラーパネルをつける部分とか、発電機を回すためのタンクの大きさとか。水は海に出てしまえば真水にできる装置がある。日本の普通のヨットでは付属されていない装備などのアドバイスをしましたね」 9カ月をかけて地球を一周した経験を生かす仕事も待っていた。「メルボルン→大阪」レースに出場する顧客もいた。ヨットをメンテナンス、小笠原諸島まで同乗して最終確認、操作方法を指南したという。結局はスタート地点の南半球にも2度呼ばれて整備を手伝った。マサは「知らなかったニッチな世界が、そこにはあった。この仕事は、今後も続けていこうと思っている」と白い歯を見せた。 そして、恩返しする機会もつかんだ。2年前の夏、世界一周旅行中の家族を助けに沖縄へ向かった。ブラジル人の夫とイタリア人の妻に2人の子どもという4人家族から、グアム沖でマストにひびが入って沖縄に緊急停泊して困っているという情報が耳に入った。 「僕もアルゼンチンの船大工さんに、港についていきなり『頼むから直してくれ』と言ってて助けてもらって世界一周できた。そういう経験があるので、もうギブ・アンド・テイク。助けるときは助けないと。知り合いで83歳の職人をつれて沖縄まで飛びました。はじめは『こんなおじいちゃんに何ができるの?』っていぶかしい顔をしていましたけど、最後は神がかった技を発揮したおじいさんに感謝していました(笑)」 材料費だけもらい、移動費などは受け取らなかったという。それは、世界各国の港で“善意のバトン”を受け取っていたから。次は渡す番だった。マサは「夫人はナショナル・ジオ・グラフィックのカメラマンで、写真を撮りながら旅をしていると。夫は医療用大麻の会社を売却してファイア(早期リタイア)したと聞きました」と教えてくれた。世界は広い。いろいろなライフスタイルの人たちがいる。