世界一周ヨットレースで、まさかの『シャチ襲来』さらに『クジラ?激突』愛艇が"複雑骨折"、修理費がない大ピンチで放った起死回生の一手、修理頼んだ港で強制的「メッシの髪形」に
◇シャチに襲われた日本人セーラー、鈴木晶友の"破天荒すぎる"人生航路①
シャチに襲われ、クジラに衝突しながら、世界一周した日本人セーラーがいる。鈴木晶友(まさとも)。40歳。ヨット大国フランスの仲間から親しみを込めて「当たり癖がある」と言われる男は、3年前に2人乗り世界一周ヨットレース「グローブ40」を完走、3位に輝いた。少年時代に抱いた夢をかなえた後、外洋レースから離れていたが、今年から新プロジェクトを本格スタートさせた。家を売り、約1億3000万円の大型艇を購入。世界一過酷と言われる単独無寄港無補給の世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」への挑戦を公表した。ただ、2028年のビッグレース出場は大きな“賭け”。不惑で人生の大勝負に出た愛称「マサ」がたどってきた航路とは―。(占部哲也)=全3回連載の1回目= 【実際の動画】これは貴重映像…シャチに襲われる様子、船底の水中カメラがとらえる
◇「ゴールの3、4時間前に襲われたので、まだよかった」
ドン、ドン、ドン。ガシャン― 全長12メートルの船が大きく揺れ、きしむ。同乗していたイタリア人は取り乱し、恐怖の声を上げた。「マサ!やばいよ。やばいよ」。海の最強王者と呼ばれるシャチが船を取り囲んでいた。 春になり日本列島に「クマ出没」のニュースを再び目にするようになったが、海洋生態系の頂点に立つシャチ3頭と、マサが対峙(たいじ)したのは、フランスからモロッコに向かう途中だった。マサは懐かしさと恐ろしさが同居した表情を浮かべながら3年前の記憶のひもを解いた。
「あれは昼間でしたね。2キロくらい先から見えて、はじめはイルカかなと思ったけど『あ、大きいな』と思って。そうしたら、ヨットの周りを急にぐるぐる泳ぎだした。自分はちょっと余裕ぶって写真や動画を撮っていたら、同乗していたイタリア人セーラーが『やばい、おまえマジでやばいから』って叫びだして…」 全長5メートルを超える“海の王者”は、代わる代わるヨットに突進してきた。イタリア人セーラーは棒を振り回して抵抗するも、まったく効果なし。3頭のシャチがまるで「誰が最初にヨットを壊せるか」と競い合うように体当たりを繰り返してきたように思えた時間を、「あれは、もう完全に遊び。シャチは船の半分くらいのサイズはあって、本当にびっくりした。今は怖さを知ったので、水族館で見てもちょっと怖い」。最凶の遊戯は5分ほどで飽きたのか終わり、地中海へ去って行った。