職員が恐れた「ドスコイ案件」6千万円収賄容疑で逮捕、成松市議とは
熊本県八代市の新庁舎建設をめぐる一連の疑惑は、6千万円の賄賂を受け取った疑いで市議らが逮捕される事件に発展した。市議はどんな人物なのか。市や議会関係者への取材を進めると、市職員がその存在を恐れ、言いなりになっていた実態が見えてきた。
角界から市議会へ
笑顔の子どもたちを肩にのせる力士。
逮捕された、市議の成松由紀夫容疑者(54)の立て看板に描かれた絵だ。市内で営むちゃんこ店の前に置かれている。成松容疑者のスローガンは「全ては子ども達の為に!!」だ。
元力士の成松容疑者は、熊本県内の高校から名門日本大相撲部をへて、1994年にデビューした。春場所には序ノ口優勝も果たしている。
引退後は地元八代に戻り、ちゃんこ店を経営しながら中学の相撲部を指導し、05年9月に市議に初当選。現在まで6期連続で当選し、市議会議長や自民党市議団長も務めた。
だがよく知る議員は「当選を重ねるごとに権力志向が強まり、職員に対する態度も威圧的になってきた」。
成松容疑者にはこれまで、二つの問題・疑惑が表面化していた。
一つは、自身が指導する中学校の相撲部活動費に充てるとして、市幹部職員に市役所内で物品を販売させていた問題。市の政治倫理審査会は昨年12月、この行為が政治倫理条例に違反すると結論づけた。
市議会はこれを受けて成松容疑者に対する辞職勧告決議案を可決した。
成松容疑者は「地位を利用して強要をした事実は一切ない」と反論し、辞職はしていない。
百条委で証人にらみ?退場
そしてもう一つが今回の事件にもつながる、新庁舎建設をめぐる談合疑惑だった。
22年に完成した新庁舎の総事業費は約171億円。市が当初試算した118億円から大幅に膨らんだうえ、前田建設工業(東京)を中心とする共同企業体が99.9%という高い落札率で落札した。
官製談合疑惑がユーチューブ動画や週刊誌に取り上げられ、市議会は昨年12月、増額や入札の経緯を調べる百条委員会を設置した。
今年4月の百条委では、疑惑を告発した市職員が実名で証言。工事の契約後に前田側から増額の要望があり、その市とのやりとりに介入したのが成松容疑者だったと述べた。
百条委では、証人として発言しようとした女性を成松容疑者がにらみつけるなどし、その後、委員長に会場から退場させられる一幕もあった。
課長職にあった男性は、以前あいさつにいった時に、気にくわないことがあったのか、大きな声で恫喝(どうかつ)されたと百条委で証言した。「この人は普通に話してもダメなんだ」「恐怖心が先に立って、従うしかなかった」
ある市職員は朝日新聞の取材に「中村博生・前市長や市幹部と近いこともあり、ほとんどの職員が成松市議の言いなりだった」と話した。
別の市職員は「どこで本人の耳に入るか分からないので、役所内では名前は言わない。『ドスコイの案件』と隠語を使っていた」と明かした。
また、ある議員は、自身の権威を高めるためか、成松容疑者は、自民党市議団の中で自身の考えを通すために「市長もこのことは知っている」と説明して前市長との近さをアピールしていたという。
会見で金銭授受を否定
警視庁と県警は7日、成松容疑者と土木会社役員の園川忠助(61)、元市議の松浦輝幸(84)の両容疑者をあっせん収賄容疑で逮捕した。
3人は、新庁舎建設の入札で前田側が有利になる評価基準にすることや、工事利益の増額を市側に働きかけ、見返りとして21年6月ごろ、前田側から6千万円のわいろを受け取った疑いがある。
認否は明らかにされていないが、成松容疑者は逮捕前の4月15日、自民党市議団が開いた会見の中で金品の授受を否定していた。
「お金をもらったということは完全に否定するのか」との質問に対しては「当たり前じゃないですか」と語気を強めていた。
「警察も疑義があれば、私の通帳でも何でもめくると思いますよ。だから(お金をもらっていれば)捕まってますって、はっきり言って」とも述べ、強気な姿勢を崩さなかった。
容疑者の3人は8日、熊本地検に送検された。
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