良心的な事業所ほど経営は苦しく――。障害ある子の居場所「放課後デイサービス」で深刻化する理念と現実の乖離 #こどもをまもる
国がテコ入れも…報酬改定に欠ける現場の視点
事業所による不正請求、利用児童に対する性暴力や事故、ビデオを見せるだけなど「療育」とかけ離れた運営は、たびたび問題になってきた。それに対し、国は、3年ごとの報酬改定で、基本単価を引き下げるとともに、質の高さを「加算」で評価するテコ入れを行ってきた。直近の2024年度の改定では、短時間利用でも一律に1日分としていた仕組みを改め、利用時間に応じた報酬体系に転換。さらに、専門職や経験5年以上の職員を配置する事業所に対し、加算を拡充した。 山口さんの事業所も、専門的支援体制・実施加算などで報酬は多少増えた。だが、国の報酬改定のあり方には、現場の視点が欠けていると批判する。 「人件費が上がり続ける中で、基本単価が下がれば赤字になります。多くの事業所は、それを回避するために、なんとしてでも加算を取ろうとします。加算が質の向上ではなく、生き残りの手段になってしまうのです。行政の指導や監査は書類が中心で、現場の実態や支援の質まで十分に評価できていません。そうした中で、書類さえ整えればなんとかなるだろうと考え、巧妙に加算を取る事業者は利益を上げていく。一方で、手厚い支援をしようと人員を増やし、無理な加算取得もしない良心的な事業所ほど経営は苦しくなるのです」 利益最優先の事業者は、障害の重い子を敬遠する。人手や設備の不足から、重度の子を受け入れる余裕のない事業所も多い。断られる経験を重ねた保護者は、たとえ子どもが不適切な扱いを受けても、声を上げにくくなる。 Aさんもそうした一人だ。息子は、都内の特別支援学校に通う6年生。知的障害を伴う重度の自閉スペクトラム症と診断されている。ある日、特別支援学校の先生から連絡が入った。送迎の車内で、息子が放デイのスタッフに頭をたたかれているのを目撃したと伝えられた。
「ショックでした。そんな虐待みたいなことがあるのかと。息子は言葉で表現できないので確かめようがない。でも、事業者に直接問いただすことは、できませんでした。ここをやめさせられたらどうしようという恐怖が先に立ってしまったんです。結局、数日後に事業所側から謝罪を受けましたが、それ以上、事を荒立てることはしませんでした」 前出のナツミさんを今悩ませるのは「お薬問題」だ。 「お薬」とは、自閉スペクトラム症の子どもの「刺激の受けやすさ」を軽減し、過度な興奮や衝動性を和らげる効果があるとされる「リスパダール」。リュウくんは医師から処方を受け、普段から服用している。だが、事業所のひとつから、頻繁に「お薬はどうしてます?」と聞かれるのだという。 「突飛な行動がちょっと増えると、すぐに『お薬は?』って。他からは言われないので、その事業所の先生たちの経験や技量不足の問題じゃないかという気もするんです。でも、追い出されると本当に困るので、迷いつつも、その事業所に行く日は、通常の量に追加して頓服させて、『おとなしくしててね』と祈るような気持ちで送り出しています」 一般社団法人「全国放課後連」事務局次長の真﨑尭司さんによれば、こうした事例は多いという。 「子どもが興奮したり混乱したりする場合、本来まずはその子が何を願っているのかを理解した上で、自分たちの支援内容や環境設定、人員配置に目を向け、改善点を探るべきです。薬が必要になる場面もあるかもしれませんが、支援のあり方についての検討をすっ飛ばして、安易に薬で解決しようとするのは、非常に由々しき問題だと思います」