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ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始から、2026年2月で4年が経ちました。状況は混沌としており、いまだ先行きが見通せませんが、安全な学びの場を求めて、ウクライナから秋田大学に留学してきた学生がいます。今、どんなことを学び、どんな将来を夢見ているのか、その思いを聞きました。(写真=秋田大学提供)
安全な場所で日本語を学びたい
秋田大学大学院国際資源学研究科に在籍しているアナスターシャ・ホロブニャさんは、ウクライナ北西部の都市、サルヌイで生まれ育ち、2021年にウクライナの首都キーウにあるボリス・グリンチェンコ記念キーウ市立大学(以下、キーウ市立大学)の日本語学科に入学しました。しかし、入学からわずか半年でロシアによる軍事侵攻が始まり、安全な環境で学業を継続することが難しくなってしまいました。
そうした時に、秋田大学がウクライナの学生や研究者を受け入れて支援するプログラムを設置していることを知り、2023年3月に来日しました。
「いずれは日本に留学したいと思っていました。でも、キーウ市立大学に入学して半年で軍事侵攻が始まり、安全に学ぶことができなくなってしまいました。日本の大学の中には、ウクライナ人学生を受け入れるプログラムがいくつかあり、私も応募したものの、返事がありませんでした。諦めかけていた時に母が『もう一度探してみたら』と言ってくれ、再度探してみたところ、秋田大学のプログラムを見つけることができました」
当時、秋田大学では学長を筆頭に、ロシアによる軍事侵攻で安全な学習や研究の場を奪われたウクライナ人学生たちに、広く門戸を開けて積極的に迎え入れようという意見が持ち上がり、大学の方針として打ち出されました。これまでに10人のウクライナ人学生を受け入れ、現在も3人が在学しています。
自然を愛する心が共通点
ホロブニャさんが日本語に初めて触れたのは高校生の時でした。「日本語を聞いた時、めっちゃ美しい言語だと思った」と振り返ります。それまで英語やフランス語を学んでいましたが、新たな言語に挑戦したいと思い、日本語を選択しました。高校では、日本の文化について学ぶ授業もありました。
「ウクライナと日本の共通点について勉強しました。どちらの国も自然が好きで、自然を守ることを大事にしていることを知りました」
日本に来ることに不安はなかったのでしょうか。
「家族と離れて日本に来ることは大きな決断でしたし、不安もありました。でも、両親が『安全なところで勉強したほうがいい』と言ってくれたこともあり、来日しました。暮らし始めてみると、秋田の人たちはとても親切で、私たち留学生を温かく迎え入れてくれました。友達もたくさんできて、不安は小さくなっていきました。皆さんのサポートのおかげで、困ったことはほとんどありませんでした」
ウクライナで日本語能力試験のN4(基本的な日本語を理解することができる)に合格していたため、来日した時点で、秋田大学教育文化学部での日本語による授業はだいたい理解できました。4カ月後の7月にはN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる)を受けて合格、2024年12月にはN2(日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる)を受けて、こちらも合格することができました。
国際資源を学ぶ大学院に
秋田大学で学ぶのと並行して、キーウ市立大学の授業もオンラインで受講しました。昼は秋田大学に通い、夜はオンライン授業を受ける毎日で、現地の授業が終わるのが午前3時頃ということもありました。そしてキーウ市立大学の卒業資格を得て、2025年10月に秋田大学大学院国際資源学研究科に進学しました。
「ウクライナにいる時から、修士課程に進学したいと思っていました。学士では日本語を学び、修士では国際関係について学びたいということも、以前から決めていたことです。だから、秋田大学大学院で国際資源について学べることを知った時は本当にうれしかったです」
秋田大学の国際資源学部は、資源学に特化した国内唯一の文理融合学部として知られ、秋田大学の伝統的な学びの特徴でもあります。大学院国際資源学研究科では、地球科学や資源開発、環境保全などの広範な知識を身につけ、資源問題の解決を図るグローバルリーダーの育成を目指しています。ホロブニャさんは、研究テーマに「欧州安全保障協力機構における環境平和構築」を掲げ、学んでいます。
「これからの世界にとって、資源はとても重要なテーマです。天然エネルギー、国際協力、経済活動など、さまざまなことに関係するからです。ウクライナの将来にとっても、国際資源に関することや、欧州での環境平和の構築は重要だと考えています」
柔術を習い、英会話の講師も
学部生の時は北海道旅行を楽しみ、現在は秋田市内の柔術道場に通うなど、日本での生活も楽しんでいます。
「ウクライナでは総合格闘技をしていました。秋田大学で柔道の授業を受けたことがあり、友達が柔術の道場を紹介してくれたので、1回体験してみたらすごく楽しくて、通うことにしました」
また、英語の能力を生かして、秋田大学The ALL Rooms(学生が主体となり、英語のみ「公用語」となる空間で、英会話や英語学習を行う自律的言語学習室)のスタッフとしてアルバイトもしています。
日本人の学生たちも、語学のみならず、国際的な視野を広められるいい機会になっています。
日本での食生活は、ウクライナにもラーメンやすしなどの日本食レストランがあったこともあり、すぐになじめました。秋田市での暮らしも4年目となり、四季の移り変わりが好きになりました。
「春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪と季節によって景色が変わり、それがとても美しいです。でも、秋田の冬はとても寒いです。ウクライナの私の地元では冬はマイナス20度になりますが、秋田のほうが風がきつい分、すごく寒く感じます」
来日前は、日本にはウクライナに関心がある人は少ないのではないかと思っていましたが、日本で暮らしてみて、ウクライナに心を寄せる人や支援する人が多くいることを知りました。
「将来は大使館や国際機関で働き、日本とウクライナの両国の懸け橋になりたいです。秋田大学で学んだことを生かして、持続的な平和づくりに貢献したいと思っています」
軍事侵攻から4年となった今も、ホロブニャさんの両親と16歳の弟は、戦時下のウクライナで暮らしています。両親は軍隊で働いていて、弟は学生寮での生活を送っているので、心配は尽きません。毎日のように連絡を取っているものの、一日も早く平和を取り戻したいと願っています。
「私がウクライナの大学に入ってから半年間は、人生で一番うれしい時間でした。でも、半年後に侵攻が始まり、平和が当たり前ではないことを知りました。私と同世代の日本の皆さんには、友達と遊んだり、勉強したり、新しいことに挑戦したりできる、今ある日常は本当にかけがえのないものだということを知ってほしいです。私も将来、平和に貢献できることを願って、勉強を頑張っています」
(文=吉川明子、写真=秋田大学提供)
【写真】ロシアの侵攻から4年 留学の夢消えかけ…秋田大学へ ウクライナ人留学生の決意
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