眠れない夜に「横になって目をつぶる」は逆効果…どんどん脳が冴える"不眠恐怖"を断ち切る意外な解決策
■最強のリラックス法は呼吸に隠れている 「今日の会議で変なことをいってしまったかもしれない。明日から職場で浮いてしまう」「老後のお金が足りなくなるのではないか。子どもに迷惑をかけたら嫌だ」。このように必要以上に悲観的になる。そして誰もが辿りつく終着点は、「今日もまた眠れなかったらどうしよう」という不眠恐怖です。 こうなると、頭が冴えてきて休まりません。「横になって目をつぶっていれば体は休まりますから」と医師がアドバイスをしていたことがありました。 しかし、目をつぶって横になっていても、眠ることのできない苦しさ、眠れないために抱える心配や不安から逃れることはできず、リラックスできません。とくに不眠恐怖を持ってしまうと、心も体も休まりません。睡眠に関する不満足感がますます高まります。 そこで、寝床から出て、リラックスするほうがいいという考えが出てきたのです。眠れない場合は、布団に入らずに、リラックスする。たとえば、ストレッチやヨガをしてみる。しかし、こういったことは、眠れなくなってから取り組みを始めても、効果が表れるまでに時間がかかります。習得しようと焦ると、かえって緊張が高まってしまうこともあります。 ぜひ本日から取り入れていただくことをお勧めします。もっとも簡単なものは、息をすーっと吸ってゆっくり吐くこと。 ■睡眠の悩みと決別するシンプルな習慣 不安やストレス、心配事がある時、緊張している時は、自然に呼吸は浅くなり、それらがない時は一回一回の呼吸が深くなります。これは本能的な反応ですが、それを意識的に行うのです。ポイントは3つで、腹式呼吸を行ってお腹を膨らませること、息を吸うよりも吐く動作にリラクゼーション効果があるため吐くことを意識すること、そしてゆっくり行うことです。 重要なことは、あまり難しく考えないことです。今紹介した呼吸法は、私のオリジナルではありません。万人に効くわけでもありません。自分自身がいちばんリラックスできる方法を、できる範囲でやればいいのです。 それと、すぐに簡単にできるものをお勧めします。複雑な方法だと、眠れないという追い込まれた状況では、スムーズにできないためです。不眠に悩む人は布団の中で眠れない経験を繰り返します。すると、無意識に布団の中を緊張する場所と認識するようになります。睡眠のことで悩んでいない人が布団に入ると自然に眠るのとは反対の条件づけが生じるのです。 ますます目が冴えて、不眠恐怖になり、眠れなくなります。眠れないなら、布団に入らず、リラックスして眠たくなるのを気楽に待ちましょう。 ---------- 内山 真(うちやま・まこと) 東京足立病院名誉院長 1954年生まれ。80年、東北大学医学部卒業。 東京医科歯科大学神経精神科、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所部長を経て、日本大学医学部精神医学系主任教授(2006~20年)、日本睡眠学会理事長(17~21年)を務める。厚生労働省の睡眠や睡眠障害研究班等の班長を歴任し、検討会座長として「健康づくりのための睡眠指針2014」の作成に尽力した。2020年からこころの医療と高齢者医療を専門とする東京足立病院院長を務め、外来診療も担当。2026年4月より 同病院の名誉院長に。著書に『睡眠のはなし』(中公新書)、『眠りの新常識』(KADOKAWA)、『睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版』(じほう)など。 ----------
東京足立病院名誉院長 内山 真