──今回の“ヒロイン”の件は、アリーシャがヒロインであるようにも受け取れる情報が出ていたこと、その彼女がストーリーの途中で離脱すること、パーティーにいる期間がほかの仲間より短い彼女にも有料のダウンロードコンテンツ衣装などが用意されていたこと、この3点が主たる原因だったように思います。僕はこれらのことを事前に聞いたうえでプレイして、インプレッションで書いたように心から楽しませてもらったので、今回のことはなおさら残念に思ってしまうんです。率直に言って、発売前の情報でアリーシャに惹かれて本作や有料ダウンロードコンテンツを購入した人から、よくも悪くも「ええっ!?」と思われた面があるのは否定できません。

馬場 おっしゃることは、僕たちも理解しております。そのうえで、発売前の情報公開について説明させていただきますと、第1報から続報、ゲームの発売日に至るまで、ファミ通さんを含むメディアさんなどにお出しする資料の中で、アリーシャについて“ヒロイン”と記載したことは一切ありません。また、ストーリーの構成と仕掛けとしてアリーシャが途中でパーティーを離脱することをふまえ、彼女用の衣装についても開発チーム内で再三検討し、アリーシャ用のダウンロードコンテンツ衣装をロゼにも着せることができるように配慮させていただきました。ただ、アリーシャとロゼの衣装が共用できることについては、ネタバレや憶測を避けたかったため、ダウンロードコンテンツの配信開始前にその情報を公開していませんでした。

『テイルズ オブ ゼスティリア』馬場英雄プロデューサーに訊く、“ヒロイン”のこと、シリーズの“これから”のこと。_03
『テイルズ オブ ゼスティリア』馬場英雄プロデューサーに訊く、“ヒロイン”のこと、シリーズの“これから”のこと。_04

──御社から送られてきた資料の中で、アリーシャが“ヒロイン”と書かれていなかったことは僕たちも承知しています。その一方で、『テイルズ オブ アスタリア』(歴代『テイルズ オブ』シリーズのキャラクターたちが登場するスマホ向けRPG)の公式プロフィールでアリーシャが“ヒロイン”と書かれていたり、一部メディアの記事でも彼女がヒロインとして紹介されていたりと、誤解されても仕方のない情報も出ていました。
※現在は修正されています。

馬場 はい。一部のメディアさんにおいて、僕たちがお出しした資料とは異なる表現をされたことがありました。また、ほかならぬ我々が完全に誤解を招いてしまったのが『テイルズ オブ アスタリア』における公式プロフィールでした。開発組織としては『ゼスティリア』チームと別のところになるのですが、ここで事実と異なる表記が行われてしまい、これにつきましては、ユーザーの皆さまの混乱を招いてしまったことを誠に申し訳なく思っております。3年の月日をかけてゲームを開発してきた『ゼスティリア』チームの全員にとっても、胸が裂けるような思いがいたしました。

──これも結果論ですが、アリーシャの離脱を“ネタバレ”に含めず事前に公開していれば、ヒロインうんぬんやダウンロードコンテンツについても、より分かりやすく紹介できたんじゃないかと思ってしまいます……。さらに言えば、ゲームの発売から2週間後の週刊ファミ通(2015年2月5日発売号)では、『アリーシャ アフターエピソード -瞳にうつるもの-』(以下、『アフターエピソード』)の情報公開にともない、馬場さんがコメント(下に全文掲載)を寄せてくださいましたが、ここで書かれていたようなアリーシャの“思い”も、ゲーム内でもっと伝えられたのではないかと思いました。

『テイルズ オブ ゼスティリア』馬場英雄プロデューサーに訊く、“ヒロイン”のこと、シリーズの“これから”のこと。_05
▲週刊ファミ通2015年2月19・26日・3月5日合併号(2015年2月5日発売)より。

馬場 この場をお借りして、アリーシャの立ち位置について改めて補足させていただきますと、彼女はストーリーにおいて、ふたつの重要な役割を帯びていました。ひとつは、主人公のスレイを外の世界へと誘(いざな)う役割。もうひとつは、王位継承権の末席に位置するがゆえに苦悩するアリーシャの姿や、そんな彼女ひとりを満足に助けることもできないのに自分の夢を果たせるのか……というスレイの葛藤を通じて、思い通りにならない“社会”の現実をスレイが知るキッカケとなる役割。ただし、これらに関する細かな心理描写は、本作ではあえて前面に出していませんでした。

──明確に描くほうが伝わりやすい一方で、あえて“答え”を明示しないことにより、プレイヤーが想像する余地も生まれますから、一概にどちらのほうがよいとは言えませんが、アリーシャの描写については判断が分かれるところでしょうね。

馬場 アリーシャは、パーティーにいる期間こそほかの仲間よりも短いのですが、ストーリーにおいて彼女が果たす役割は、いずれも非常に大切なものです。スレイは、ストーリーの冒頭でアリーシャと出会ったことがキッカケで、イズチ(スレイが育った故郷)の外にある世界と、その状況を知ることになります。スレイが導師になった後も、アリーシャは世界をよい方向に変えるべく共に歩むパートナーとなりますが、しかしこれはやがて、導師スレイが“挫折”を知るキッカケとしての役割につながっていきます。敵の大軍を蹴散らすほどの力を手にしたスレイも、国家の思想や、人々の感情を思い通りにすることはできません。さらには、導師の力をもってしても、たったひとりの人間──アリーシャの“霊応力”(ふつうの人間の目には映らない天族を知覚する力)を補いきるには不足しており、スレイが無理を重ねた結果、その反動が自分の体に出てしまいます。余談ですが、スレイの親友であるミクリオは、早い段階でスレイの目の異変に気づいており、しかしあえて多くを語らず、ふだんの立ち位置をスレイの目の見えない側に変えて、フォローに動くようになります。そして、スレイの苦悩を悟ったアリーシャとの別れ、国家間の戦争勃発、災禍の顕主こと“ヘルダルフ”への敗北……これら一連の事件によって、スレイは、たったひとりの導師ではどうにもならない世界の現実という壁、すなわち挫折を思い知ることになりました。

──それらの経験は、スレイとアリーシャのみならず、ほかの仲間たちにも影響を及ぼすものですよね。

馬場 はい。人間と同じようには世界に関与することができないミクリオたち天族にも、少なくない危機感をもたらし、その後の行動に影響を及ぼしました。ヘルダルフに敗北した後、スレイに同行する天族たちは、心に“穢れ”がなく霊応力も強い人間であるロゼを仲間にしようと、珍しくスレイへの“説得”を行います。その性急でやや強引に思える行動も、挫折を経験したがゆえの焦りが原因だったわけです。そして、これはアリーシャの役割として最も重要なものになりますが、スレイとアリーシャの従士契約(導師の霊応力を分け与える契約)と、その反動(スレイの目の異変)を通して、導師スレイの最後の選択──すなわち本作のエンディングを暗示する役割もアリーシャは負っていました。これら複数の役割と、ストーリーを構成する仕掛けを託して作り上げたキャラクターがアリーシャでしたので、必然的に彼女がパーティーを離脱する展開になったわけです。ここでもうひとつ、従士契約についても補足しますと、憑魔(霊応力がないと見えない敵)と戦える人員を増やすことが従士契約の本意ではありません。人々から奇異な目で見られがちな導師が、一般の社会とコミュニケーションを取り、その関係を維持していくことをサポートしてもらうことが、従士を得るいちばんの目的となります。スレイとアリーシャが冒険をともにしているとき、複数の街で天族の“加護”を取り戻す過程で、まさに従士の役割がうまく発揮されるのですが、戦闘面での負担が大きかったことが災いして、スレイの体に反動が表れてしまうわけですね。アリーシャのときと、ロゼのときでは、スレイたちが従士に求めたい役割が変わっていた、という構造になっているんです。