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「王道にして最新」へ。発売52年の「明治ブルガリアヨーグルト」が、いまブランドを問い直す理由|あの商品の裏側?!

“日本初のプレーンヨーグルト”として誕生した「明治ブルガリアヨーグルト」。子どもから大人まで幅広い世代に親しまれ、発売から50年以上にわたり家族の健康に寄り添う、朝食の定番となっています。
 
多くの人がそのパッケージを思い浮かべるとき、まずイメージするのは“青と白のパッケージデザイン”ではないでしょうか。ただ、長年親しまれてきたこの配色は、いつしか社内でも“ブランドそのもののイメージ”として定着し、本来の価値が言語化されないまま受け継がれてきました。そこで立ち上がったのが、「明治ブルガリアヨーグルトの価値を再定義する」プロジェクトです。
 
プロジェクトを通して見えてきた“明治ブルガリアヨーグルトらしさ”とは……!? 異なる立場から関わった3人に、プロジェクトの経緯やブランドの目指す姿、新パッケージが生まれるまでの裏側を教えてもらいました。

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【プロフィール】
(写真左)田崎 聖子
株式会社エフアイシーシー ブランドマーケティング事業部マネージャー、ブランドプランナー。
今回のプロジェクトでは、明治ブルガリアヨーグルトの価値を再定義するワークショップの設計とファシリテーションを担当。
 
(写真真ん中)南 りえこ
株式会社 明治 価値創造本部 価値創造開発部 デザイン戦略G アートディレクター。
「カール」をはじめ、「きのこの山」「たけのこの里」「果汁グミ」「明治ミルクチョコレート」などの菓子部門を経験し、現在は「プロバイオティクスヨーグルトシリーズ」「明治ブルガリアヨーグルト」「メルティーキッス」「濃密果」などのパッケージデザインを担当。
 
(写真右)田中 彩華
株式会社 ブラビス・インターナショナル クリエイティブ・マネージャー。
「明治ブルガリアヨーグルト」を約7年間にわたり担当し、歴代パッケージのデザイン開発に携わる。

発売から50年以上で変わったデザインと、変わらなかったもの

――「明治ブルガリアヨーグルト」といえば、ヨーグルトの定番・王道というイメージですが、どんな経緯で生まれた商品なんですか?

南:きっかけは、1970年の大阪万博でブルガリア館を訪れたスタッフが、本場のプレーンヨーグルトを初めて口にしたことです。当時、日本のヨーグルトは寒天やゼラチンで固めて甘みを加えたデザートタイプが主流で、無糖のプレーンヨーグルトは販売されていなかったんです。

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南:ブルガリアには長寿の人が多く、その背景にプレーンヨーグルトの食習慣があるともいわれています。明治はこの食習慣を日本の食文化に取り入れようと、1973年に健康をサポートする商品として「明治ブルガリアヨーグルト」を発売しました。
 
――歴代のパッケージデザインを見てみると、「青と白」という配色は変わっていませんね。

南:そうなんです。発売当初はプレーンヨーグルト自体が一般的ではなかったので、「色の印象」で商品のイメージを定着させようとしたそうです。
 
当時から、味の核となる乳酸菌はブルガリア由来のものをずっと使用しています。混じり気のない純粋なプレーンヨーグルトということで、“ピュアさや健康、自然由来のやさしさ”を表現する「青色」と、それを引き立てる「白色」の組み合わせが採用されました。

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1973年からのパッケージ。中央上部には“安心・安全”を感じさせるロゴを配置
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1980年代のパッケージ。1981年からはフルオープンタイプの容器を採用し、開封後も保存しやすく、家族でも食べやすい仕様に

田中:1990年代には印刷技術の向上によって、繊細な表現が可能になりました。細いラインのグラデーションで、ヨーグルトの“爽やかさ”や“なめらかさ”を表現しています。

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(写真左)1991年、(写真右)2000年からのパッケージ。“王道感やおいしさ、品質の高さ”を象徴する赤色を取り入れ、斜めのラインで大量陳列時の視認性も高めている

――途中からは、楕円形のデザインになっていますね。
 
南:“本物、正統、自然”というイメージを表現するために、2003年からブルガリアサークル(楕円形のモチーフ)を取り入れているんです。

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2010年からのパッケージ。内容をわかりやすく伝えるため、楕円内に情報を集約した

南:こんなふうにパッケージデザインは変化してきましたが、「青と白」の世界観で表現する“ピュアさ”や、赤いリボンに象徴される“王道感”といった要素は一貫して受け継がれてきました。
 
その一方で、ブランドの象徴である「青色」の色合いは、時代やデザインの変化に合わせて少しずつ変化しています。
 
田中:初期の頃は、明度の高い青色や水色が多く使われていますが、次第に「濃紺」の印象が強くなってきましたよね。

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南:だから、社内でも「ブルガリアの紺」と呼ばれるほど、「濃紺と白」がブランドのアイデンティティとして定着しています。
 
ただ、“明治ブルガリアヨーグルトといえば青”という視覚的にわかりやすいものに引っ張られすぎて、「“ブランドとしてどこを目指すのか”という方向性が、社内で十分に共有できていないのでは?」という課題も見えてきたんです。

“明治ブルガリアヨーグルトらしさ”ってなんだろう?

――何がきっかけで、その課題を感じるようになったんですか?

南:2024年に発売した「HOME MADE STORY(ホームメイドストーリー)」という商品を開発したことです。若い世代を中心に明治ブルガリアヨーグルトへの認識が「青っぽいパッケージのヨーグルト」というイメージにとどまっていたので、ブランドの原点である“本場感”を改めて打ち出そうと、新商品ではブルガリアの“民族的な印象”を感じさせる「えんじ色」や、“高品質”を表す「金色」を取り入れたパッケージデザインを企画しました。

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本場ブルガリアの伝統製法を模した製法で作った「HOME MADE STORY」のデザイン案

南:ところが社内からは、「明治ブルガリアヨーグルトといえば青じゃないか?」「ブルガリアサークルは必要じゃないか?」といった声もありました。しかし、担当者間では「“王道感”もブランド価値の一つだから、必ずしも青色を使う必要はない」という認識で一致していたので、チーム一丸となり、社内を説得して、現在のパッケージデザインで発売することになりました。
 
ただ、その後のシリーズ商品のパッケージデザインでも同様の声が上がり、明治ブルガリアヨーグルトのデザインに対する社内とチーム内の認識にズレがあるのではないかと議論になりました。そこで、配色やロゴといった“ブランドイメージの表現手段”に縛られるんじゃなくて、「そもそもお客さまが感じる明治ブルガリアヨーグルトらしさとは何か」というブランドの目指す姿を改めて整理し、言語化する必要があると感じました。そうすることで、商品開発やデザイン、広報など、すべての活動で一貫性を持たせることにもつながります。
 
そこで、以前からお付き合いのあったFICCさんに「ブランド価値を再定義するためのワークショップ」をお願いすることにしました。

――ワークショップを設計するうえで大切にした考え方を教えてください。

田崎:“インサイド・アウト”という考え方です。これは組織にいる一人一人が「どんなブランドにしたいか」という自身の思いや経験などの内発的な動機から答えを導き出す方法で、外部環境が変化しても、お客さまの記憶に残るために大切な一貫したブランドイメージを伝えられるようになります。そこで、毎回のディスカッションでは、 “ブランドとして何を届けたいか”や“自分たちは何にわくわくするか”といった思いをとにかくたくさん発散していただきました。

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――その結果、皆さんそれぞれが考える「明治ブルガリアヨーグルトらしさ」はどのようなものでしたか?

田崎:実際に話し合ってみると、「おいしいものを届けたい」「食で人を喜ばせたい」という純粋な思いが皆さんに共通していました。ただ一方で、「明治ブルガリアヨーグルトはこうあるべき」という周囲の声に縛られ、「変えなければいけないのに変えられない」という課題も同じように抱えていたことが分かったんです。

南:それぞれが本当はやりたいことを持っているけれども、「こうでなければならない」という固定観念にとらわれていたんですよね。そこからディスカッションを重ねるうちに、“王道にして最新”というキーワードが出てきて、「そうそう、それだ!」と皆で納得しましたね。

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南:「明治ブルガリアヨーグルト」は、日本にヨーグルトという食文化を根付かせてきた“王道”でありながら、伝統的な味を守りつつ、独自の特許技術で“最新” に挑戦し続けてきた存在でもあります。それこそが「明治ブルガリアヨーグルト」らしさだからこそ、時代に合わせてどんどん挑戦してもいい。ただし、やみくもに新しさを追うんじゃなくて、「“食場文化”で常に皆を幸せにするかどうか」を軸に判断していこう、という共通認識も生まれました。
 
田崎:ブランドの新しい価値として、朝食の定番を超えた、“新たな食場文化をつくること"も言語化されたんです。

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ワークショップの様子

田崎:ワークの中で出てきた、「明治ブルガリアヨーグルトはコミュニケーションが生まれる、言葉の代わりになる食べ物だ」という言葉がとくに印象的でした。家族の食卓で食べられてきたヨーグルトだからこそ、私の実家でも母親が冷蔵庫に、翌朝用の明治ブルガリアヨーグルトを小分けして用意してくれたことがよくあって。そうした目に見えない思いやメッセージをさりげなく届ける存在として、多くの人の記憶に残っている食べ物だと思うんです。
 
「明治ブルガリアヨーグルト」にはおいしさや栄養、健康はもちろん、“心も体も満たす”価値があります。その価値を朝食の場にとどめず、さまざまなシーンにもっと広げていこうというブランドが今後目指していく方向性も共有されました。

“王道感”はそのままに。明るい気持ちを表した“最新”のパッケージができるまで

――“明治ブルガリアヨーグルトらしさ”が反映された、2026年3月からの新パッケージについて教えてください。
 
南:まず、「毎日食べるたびに新しい自分になれる」というコンセプトからスタートしました。「明治ブルガリアヨーグルト」特有の“ピュアさ”や“爽やかな酸味”が「内側から元気になれる」「食べたときに気持ちが上がる」といった変化をもたらす“リバイタライズ(再活性化)”の体験を大切にしたい、と考えています。

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水色のグラデーションリングで、“内側から元気になること”をイメージ。シンプルなデザインにすることで、形状の異なるシリーズ品でも統一したブランドイメージを同じクオリティで表現できるようにこだわった

南:「毎日、気分をリセットして新しい自分になる」という状態を表現するために、これまでの立体感や影などの装飾的な要素はすべて取り除き、フラットで軽やかなデザインへと一新しました。ただ、その中でも明治ブルガリアサークルの左上に、朝日をイメージしたやわらかなグラデーションをさりげなく入れることで、食べるたびに気持ちがパッと明るくなるような感覚も表現しています。
 
また、フラットなデザインには店頭での見え方を意識した狙いもあるんです。装飾を抑えた分、中央に配置したブランドロゴや要素が際立ち、大量陳列されたときにも視線を集めやすくなります。実際にデザインを決定するときには、大型店舗での陳列を想定して複数個を並べ、現行品と見比べながら、新パッケージのほうが強い見栄えになることを確認したうえで最終決定としました。
 
田中:ワークショップで整理された“王道にして最新”というブランドの軸も、このデザインに反映しています。“王道感”を表現するため、中央のブランドロゴと赤いリボンはそのまま引き継ぎました。一方で、令和のトレンドに合わせた“最新”のブランドとして装飾的な要素を削ぎ落とし、フラットでシンプルなデザインへとアップデートしています。

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(写真左)2026年3月までの現行パッケージ、(写真右)新パッケージ

南:一見するとシンプルなパッケージデザインですが、だからこそ細部の調整が難しくて、試行錯誤を重ねた結果、現在のデザインに落ち着いたんです。

“伝えたい思い”を軸に、明治ブルガリアヨーグルトを伝えていく

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――これからの「明治ブルガリアヨーグルト」が目指すところを教えてください。

南:ワークショップで導き出したとおり、心も体も満たすことを通じて、さまざまな食の場をこれからも幸せにし続けることです。乳酸菌などの機能面や品質を守りながら健康を支えることはもちろん、一人一人のライフスタイルに寄り添い、「食事そのものを大切に思える時間」を提供できる存在であり続けたい。そのために、デザインや中身、マーケティングなどをこれからも改良し続ける必要があると考えています。
 
――そのなかで、これまでの象徴でもあった「青と白」はどのような位置づけになるんですか?
 
南:シリーズ品の中で、“ピュアさや健康、自然由来のやさしさ”を表現したいときには、これからも使っていきたい色ですが、伝えたい価値によっては「青と白」以外の色を選択する可能性もあります。

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南:そう考えると、発売当初にパッケージデザインを手がけた方が「青と白」を選んだのは、本質を捉えた素晴らしい判断だったなと。日本で初めてプレーンヨーグルトを口にした人たちの印象と配色がぴったり重なったからこそ、この組み合わせがブランドの象徴として長く受け継がれ、今では「プレーンヨーグルト」というカテゴリーの王道カラーとして定着しています。お客さまの記憶にも深く根付いているからこそ、大切にしなければいけない要素だと思うんです。
 
ただ、その一方で、表現手段である青色に頼り続けると、本来伝えたいイメージが崩れてしまう可能性もあります。そうならないように、「明治ブルガリアヨーグルト」として何を伝えたいのかという軸はぶらさずに、その価値に合った色を選びながら、私たちの思いをお客さまに伝え続けていきたいです。

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