「無機質な箱」に住民は不安
一般にデータセンターの建設費は、床面積よりも電力容量を軸にして考えられます。費用の中心は建物そのものではありません。受変電設備、非常用発電機、UPS(無停電電源装置)、冷却設備、通信設備など、電力と冷却に関わる部分が大きな割合を占めます。
米国の総合不動産サービス、Cushman & Wakefieldが公表している「アジア太平洋地域データセンター コストガイド2026」を参考にすると、建設費の目安は、1メガワットあたりおよそ1000万〜1200万ドル。1ドル150円で計算すると、1メガワットで15億〜18億円です。10メガワットを必要とする施設なら150億〜180億円、100メガワットなら1500億〜1800億円。AI向けの高密度施設であれば、さらに高くなる可能性があります。
本格的なAI時代を迎え、データセンター需要も急増中で、日本政府もデータセンターの拠点整備や地方分散に力を入れています。ただ、そうした勢いの反面、足元ではデータセンターの急増に不安を持つ人々も増えてきました。
「駅前にデータセンター 住民、建築確認取り消し求め提訴 千葉・印西」——。新聞やテレビでこんなニュースが流れたのは、今年3月初旬のことです。印西市の北総線・千葉ニュータウン中央駅の近くで建設が予定されているデータセンターについて、近隣住民らが建築確認申請の許可取り消しを求め、市を提訴したのです。
印西市では2023年にグーグルが自社の拠点を開設。成田空港に近い地の利や広くて平坦な用地を確保しやすい点などが世界的な評判を呼び、アマゾンやNTTグループなども相次いでデータセンターを建設したのです。
ところが、住民らは不安を覚えています。許可取り消し訴訟の対象になったのは、6階建て・高さ53メートルのデータセンター計画。大手商社などが出資する特定目的会社の事業で、マンションや商業施設に囲まれた約1万平方メートルの敷地に建設されます。
データセンターは通常、窓や飾り気のない“無機質な箱”のような建物。住民たちは駅前の賑わいなどに重大な影響が出るのではないか、身体に何らかの影響が出ないかなどの懸念を強めています。「都市部の新たな公害ではないか」というわけです。
建設撤回を求める訴訟は、今年1月に千葉県白井市でも起きました。東京都日野市では、住民が行政不服審査請求を行い、計画を白紙に戻すよう市に求めています。のっぺらとした巨大な建造物が住民を圧迫する、それは未来にふさわしい光景なのか——。そんな考えにも配慮しつつ、考えていく必要がありそうです。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。