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サバの価格高騰が止まらない…ノルウェーが獲らない「小さすぎる魚」まで獲りまくる日本のヤバさ

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水産資源管理制度の不備で食用にならない小さなサバも一網打尽にされる(写真:筆者提供)
  • 片野 歩 Fisk Japan CEO/東京海洋大学 特任教授

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食卓でおなじみのサバの価格が、供給不足を背景に上昇を続けています。少なくとも漁獲枠大幅減少で輸入サバの高騰が続く1〜2年は収まりそうにありません。

総務省の小売物価統計調査を基に集計すると、「さば」の小売価格は、全国79都市の単純平均で2025年3月に100グラム当たり154円だったのに対し、2026年3月には169円となりました。1年で約10%上昇し、家計にとって身近な魚だったサバは、以前より気軽に買いにくい魚になりつつあります。

さらに、サバを加工してきた水産加工会社にも、原料不足と高コストが大きな打撃を与え、地方産業にも影響を及ぼしています。サバの供給が足りず、同じ利益を確保するためには、キロ当たりの加工コスト価格も大幅に上げざるをえません。

日本の食卓や加工品に使われるサバは、国産だけでなく、ノルウェー産を中心とする輸入サバに大きく支えられてきました。ところが、その主力である大西洋サバの資源管理が国際的に揺らいでいます。国産サバの不漁に加え、輸入サバの供給不安と価格高騰が重なっていることが、現在のサバ高騰の背景にあります。

大西洋サバの過剰漁獲が進んでいた

昨秋、2026年のノルウェーを含む大西洋サバの漁獲枠を、7割削減すべきだという科学機関の勧告が出ました。実際には7割ではなく、漁業をしている関係国の大半が5割程度の削減で漁業を開始する見通しです。科学者のいうとおりに削減できていない背景には、複雑な事情があります。

もともと、大西洋サバはノルウェーとEU(当時はイギリスも含む)が共同管理しており、資源管理が機能していました。しかし、2007年ごろから回遊ルートが変わり、アイスランドのEEZ(排他的経済水域)に入るようになったことで状況が変わりました。同国やその隣のグリーンランド、さらには公海で操業していたロシアが漁獲量を増やすなど、各国の利害関係が複雑になり、過剰漁獲が進んでしまいました。

ただし、ここではっきり申し上げておきたいのは、大西洋では、成長乱獲、つまり魚が十分に成長する前に獲ってしまい、本来得られるはずの漁獲量や資源の再生産力を損なうような事態を引き起こしてしまう行為を各国はしないということです。とくに、3歳未満のサバの幼魚を大量に獲るような行為は避けられています。

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【日本で水揚げされて「食用にならないサバ」の行方】

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日本が輸入している「ノルウェーサバ」は、主に食用サイズまで成長したサバです。塩サバや加工用原料としても重宝されてきました。後述するように、日本のサバとは違って、さまざまな呼び名があるわけではありません。

一方で、日本で漁獲されたサバには、さまざまな呼び名があります。日本海や九州で水揚げされるサバでよく使われているのが、「ローソク」「豆サバ」「極小サバ」といった呼び名です。これらは、主に市場や水揚げ情報で使われます。

三陸から銚子にかけては「ジャミ」「ジャミジャミ」という呼び名で、今では成長乱獲によって獲れなくなってしまいましたが、かつては大量に水揚げされていました。そして、これらの呼び名に共通しているのは、ノルウェーでは絶対に漁獲しない「小さすぎて食用にならないサバ」であるという点です。

日本で水揚げされて「食用にならないサバ」の行方

ところで、ローソク、極小サバ、豆サバは大量に獲られていますが、店頭などで目にすることはまずありません。なぜなら、食用にならないサバは食用とは別のルートで冷凍保管された後、養殖場に直行するからです。

実際に目にすることはなくても、ネットで水揚げ情報を検索すると普通に出てきます。その最大の問題は、水揚げに占めるサバ幼魚の比率です。ノルウェーなど北欧諸国では、食用にならないサバの幼魚を避けて漁獲します。これは、漁業者や漁船ごとに割り当てられている漁獲枠が、実際の漁獲能力よりはるかに少ないからです。このため、漁業者自らが、資源の持続性と経済性を考え、将来の資源にも経済的にもよくないサバの幼魚を避けて漁獲するのです。

これは、日本のように、漁獲枠が大きすぎて、見つけたらサイズにかかわらず一網打尽にしてしまい、資源を次々に崩壊させてしまう資源管理制度とは根本的に異なります。なお、これは漁業者が悪いのではなく、資源管理制度の不備に問題があります。漁業者は魚を獲る仕事です。自分が漁業者側だったらと考えれば、すぐにわかることです。

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【高値で輸入し、低単価で小型サバを輸出する矛盾】

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サバの幼魚であっても、「枠を増やして獲らせてほしい」と漁業者団体などから圧力がかかる場合があります。背景には、海外の資源管理に関する正しい情報が十分に共有されていないことがあります。漁業を成長産業にしている国々の関係者と直接かかわることで明確にわかるのですが、漁業が衰退を続けるのは、水産資源管理についての日本の常識が世界の常識とズレているからです。

常に脂がのっていて、日本で人気が高いノルウェーサバを含む大西洋サバの価格は、前述の通り供給量の大幅減少によって高騰しています。ノルウェーサバを含む大西洋サバは、日本以外の市場でも人気が上がっており、取り合いになっています。

特に、アフリカ市場のように、安い動物性たんぱく質をサバなどの青魚に求める市場は、サバ不足で困っています。そこで皮肉にも、小さくて価値が低くても、安いことだけが強みの日本サバへの引き合いが強まり、輸出価格が上昇しているのです。

高値で輸入し、低単価で小型サバを輸出する矛盾

表は、2026年1月のサバの輸出価格をまとめたものです。日本は、自国のサバ輸出価格の約3倍の単価でノルウェーからサバを輸入し、その一方で、輸入単価の約3分の1の価格で国産サバを輸出しています。これは、単に日本が高くサバを買って、安く売っているという非合理な行為にとどまりません。

サバは3歳でほぼ100%成熟しますが、成熟する前の0〜1歳のサバを獲ってしまうことで、資源の持続性を破壊しています。卵を産めるようになる前のサバを狙って獲ってしまえば、親の魚、つまり産卵親魚が減り、資源が減ってしまうのは当然です。

なお、サバの幼魚を輸出して儲ける現在のビジネスモデルは続きません。最後は、サバの幼魚さえも獲れなくなって玉切れとなり、獲れなくなった理由を海水温上昇や外国漁船のせいだと責任転嫁することになるでしょう。しかし、獲りすぎてしまったことに気づいても、時計の針は元には戻りません。そこには、計りしれない水産資源の浪費が隠れています。

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【「将来より明日の魚」で消えていく】

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マサバ資源は、太平洋で漁獲される太平洋系群と、日本海や東シナ海などで漁獲される対馬暖流系群の2系統に分かれます。太平洋側では、獲りすぎによって極度の不漁となっていますが、九州や、鳥取県境港市の境港では、4月下旬に1日1000トンを超えるサバの水揚げが報告されています。

たとえば、4月20日には極小サバ主体・豆サバ主体で1229トン、4月22日には極小サバ・豆サバで958トンの水揚げがあったという報告がネットで見られました。境港市の市役所では、1日1000トンを超える水揚げがあると大漁旗が掲げられます。

ところで、その大漁の魚のうち、何割が食用に回るのでしょうか。ちなみに、ノルウェーサバは毎年99%が食用です。上の表とグラフを見ていただきたいのですが、ノルウェーでは昨年、400〜500グラム主体の水揚げだったため、おおよそ6〜10歳前後で、当然ながらすべて成魚、つまり3歳以上が漁獲されています。

一方で、九州や境港で水揚げされているサバは、0〜1歳のサバの幼魚が大半です。もちろん、400〜500グラム前後の食用サバも混じりますが、その比率がかなり低いことは、ローソク、極小サバ、豆サバといったネットでの水揚げ報告から容易にわかると思います。

「将来より明日の魚」で消えていく

サバをはじめ、次々に魚が獲れなくなってしまい、漁業者、加工業者、流通関係者など、資源管理の問題に気づいた方々から、「いったいどうしたらよいのか」という質問がよく届きます。誰も成長乱獲を止められない。このままでは、海外では成長産業になっていても、日本では魚を獲りすぎて消してしまうため、漁業も水産業も明るい将来など見通せるはずがありません。

資源管理が十分に機能しておらず、小さな魚まで獲りすぎてしまい、魚がいなくなっていることは、漁業者の皆様をはじめ、十分に理解されているはずです。しかし、成長乱獲を止められない。「魚は減っていない」「日本の資源管理はすばらしい」「悪いのは海水温上昇や外国船のせいだ」といった耳あたりのよい言葉でミスリードされ、かえって自分で自分の首を絞めてきていることに気づき始めているはずです。

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【残された時間は長くない】

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そうはいっても、「将来より明日の魚だ」ということになり、事態は刻々と悪化しています。漁業を成長産業にしている国々からすればありえない資源管理が、日本では続いています。そしてその結果が、紛れもなく、魚が消えていく日本の海の状態です。

残された時間は長くない

国は「国際的にみて遜色がない資源管理システムの導入」を目指しています。しかし、それがなかなか進んでいません。その理由は、日本人の水産資源管理に関する理解が、正しくない情報の蔓延によって、世界とズレてきてしまったからです。

ローソク、極小サバ、豆サバといった、日本で通常の食用にはならないサバの漁獲を認めてよい状況ではありません。資源を保護するためには、一時的な補助金も不可欠です。ただし、国の指示に従って漁獲量を減らした結果、資源が戻り、水揚げ金額が減らなければ補助金を返すといった制度、つまり収益納付も必要です。

もちろん、水産加工場や流通など、漁獲量を制限したことによって影響を受けるのは漁業だけではありません。このまま魚の幼魚を獲り続けて資源がつぶれてしまえば、その地域全体に計りしれない悪影響が及んでしまいます。漁業以外の水産加工業や流通業には、輸入水産物という代替品があります。しかし、それも年々輸入が難しくなっていきます。残された時間は長くありません。

ちなみに、ローソクサバは250グラム未満ですが、極小サバ、豆サバの重量はわかりません。ただ、共通しているのは、日本での通常の食用にはならないということです。ローソクサバの下には、ピンローソクと呼ばれるサバもいるそうです。

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