『井上尚弥vs中谷潤人』世紀の一戦、その直前に起きていた“トラブル”…トレーナーが怒りあらわ、控室はものものしい雰囲気に包まれていた
◇記者コラム「Free Talking」 東京ドームで5月2日に行われた日本ボクシング史上最大マッチ、世界4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥(33)=大橋=と前WBC・IBF統一バンタム級王者・中谷潤人(28)=M・T=で、試合直前にトラブルがあった。井上陣営が中谷陣営のバンデージの巻き方に違反の疑いがあると指摘し巻き直しになったのだ。 ◆父はプロ野球選手…タイトなワンピースで堂々の”デビュー”「世紀の一戦」でラウンドガール 問題視されたのは指の付け根のナックルパートを保護する通称「あんこ」部分。ガーゼを折り畳んだものが主流だ。だが、大橋ジムでカットマンとして長年バンデージを担当し、当日現場でチェックした佐久間史朗トレーナーは、中谷陣営のルディ・エルナンデス・トレーナーがひねりを加えていたという。ねじって固めれば違反となる。 バンデージは国はもちろん、米国では州でも規則が違う。エルナンデス・トレーナーはカットマンとして世界的な名声があり総合格闘技を含め多くのローカルルールに対応してきた。日本でも毎年何試合も行ってきたため「この巻き方で30年やっている」と怒気をあらわにし、控室はものものしい雰囲気になった。 佐久間トレーナーも「間違ったことは100%言っていない」と一歩も引かない。M・Tジムの村野健会長は「ルディは拳を保護するためにやっていることを言われて心外だったようです」と説明。結局、中谷の右手が巻き直しとなり、佐久間トレーナーがあんこが固くなっていないことを確認し決着した。 日本ボクシングコミッションの安河内剛本部事務局長は「バンデージは職人的。十人いれば十通りで衝突はよくある。両陣営も立会人も見ている前で巻くので、最終的にはそこで確認するほかない」と説明する。ともに、選手を守りたい思いからの衝突だったことは間違いない。 ただ、選手にとっては試合直前の精神を研ぎ澄ませているタイミングでのトラブル。試合に影響してもおかしくない。 だが、中谷は全く動じなかった。佐久間トレーナーは「中谷君がすごくいい子なのは知っているので『(気を散らせて)ごめんな』と言ったけど『全然大丈夫です』って。平気でニコニコしてました。試合もすごかった。尚弥の勝ちは間違いないけど、中谷君、強かった」と称賛を惜しまない。思わぬトラブルだったが、日本史上最高の試合に水が差されることはなかった。(ボクシング担当・藤本敏和)
中日スポーツ