「クマ ここなら撃てる」青森県八戸市・商業エリアでの緊急銃猟 ハンター緊迫の40分
大型連休最終日の6日、多くの市民が行き交う青森県八戸市の商業エリアで、普段なら耳にするはずのない銃声が4発響き渡った。県内初の緊急銃猟が実施されたのは、飲食店やショッピングモール、温泉浴場などが集まる地区。「一般市民にクマを近づけるわけにはいかない」。クマ捕獲のために臨場した市鳥獣被害対策実施隊のメンバーが7日、同市江陽の捕獲現場で緊急銃猟決行までの緊迫の40分間を振り返った。 「新しい個体が出てきたかもしれない。住宅地が近い」。5日夕方、市畜産林政課の職員から、実施隊員を務める県猟友会八戸支部副支部長の吉田功一郎さん(56)にクマ出没の連絡が入った。連絡の直前、同市市川町でクマの目撃情報が確認されていた。 翌6日朝、吉田さんら実施隊メンバーは市川町に箱わなを設置。その直後、同市八太郎から、そして商業施設が立ち並ぶ同市沼館から目撃情報が相次いだ。 実施隊として最初に臨場した吉田さんが現場の沼館緑地公園に到着したのは午後1時半。先に臨場していた警察関係者に状況を確認したが、既にクマの行方は分からなくなっていた。「一般市民も多く、一人でカバーするにはエリアが広すぎる」。吉田さんは市側に、招集する捕獲者(射者)の追加を要求した。 同公園付近ではクマが見つからなかったため、現場指揮を執っていた吉田さんは、商業エリアに隣接する市下水道事務所方面にクマが逃げたのでは-と読み、実施隊員とローラー作戦をかけながら同事務所の敷地内に移動。その間に、市側は緊急銃猟を可能とする条件が整っていることを熊谷雄一市長と確認していた。 最終的に実施隊から集まった吉田さんら射者5人は全員、クマ捕獲経験があるベテランハンター。大型動物の狩猟に使われることが多いスラッグ弾を装塡(そうてん)した散弾銃を構え、同事務所敷地内でクマを追った。 現場は倉庫ややぶなどの物陰が多く、どこからクマが飛び出してくるか分からない状況。何度かクマの姿を確認しては銃口を向けたが、「バックストップ(遮蔽=しゃへい=物)がない。撃てない」とそれぞれ発砲機会をつかみ切れずにいた。 緊迫の捕獲作戦は40分ほど続いた。射者5人で、バックストップを背にした位置にクマを追い込み、射程距離にクマを捉えた一人が発砲。午後3時48分、出動した関係者を含め、負傷者が出ることなく緊急銃猟による捕獲が完了した。 吉田さんは当時を振り返り、「緊急銃猟を決行する市側の判断が早く、スムーズに進んだ成功事例だと思う。ただ、自然が相手なので常にうまくいくとは限らない。自治体や警察を含めた関係機関との意思疎通の大切さを改めて実感した」と語った。