「日本円の紙くず化」へのカウントダウンが始まった…高市首相が狙う「借金1342兆円を帳消しにする」禁断の処方箋
■財政健全化目標の変更が意味すること 25年11月、高市早苗首相は、財政健全化目標として掲げてきた「単年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化」を目標から取り下げました。 新たな目標は「検討事項」と発言しましたが、以前から目標の候補にあがっているのが「政府債務残高の対GDP比の低減」です。 債務残高の対GDP比は、日本政府が世界の借金王であることを確認した図表1の指標です。 この財政健全化目標の変更は何を意味するのでしょうか。 単年度のプライマリーバランスが黒字になるとは、歳出全体から国債費を除いたものが『税収+税外収入』よりも少なくなるということです。こうなるとその残高を借金の返済に充てられますので、財政健全化への第一歩となります。 しかし、それが難しいことは、先ほど見ました。税収の自然増程度では足らず、増税も難しい現状では、プライマリーバランスは赤字が続きます。実際、これまで30年以上、プライマリーバランスは赤字続きでした。 では、新しい目標である政府債務残高の対GDP比を低減することはできるのでしょうか。 政府債務残高約1342兆円に対して、GDPが約600兆円であれば、1342÷600=2.23…、債務残高対GDP比は約223%です。GDPが約650兆円になれば、1342÷650=2.06…、206%に下がります。 現在はインフレが進んでいますのでGDPは増加していきます。したがって、プライマリーバランス黒字化ができなくても、分母となるGDPが増えることで債務残高の対GDP比は下がっていくでしょう。分子の借金額はインフレになっても増えないのですから(その年の新規赤字額分だけは増えます)。 ■最悪のシナリオに備える資産防衛を 目先の目標を変えることで、財政健全化への目標を達成しやすくしたと言えますが、その先に、インフレ税、ハイパーインフレ税への深謀遠慮があるかもしれません。 高インフレが続けば、経済成長が微々たるものであってもGDPは増えます。GDPが高インフレによって600兆円から6000兆円になれば、約1342兆円の借金の返済への道筋が見えてきます。 ハイパーインフレになってGDPが6京円になれば、約1342兆円の借金などすぐに返せます。対GDP比の借金も限りなく0に近くなっていきます。先ほどのタクシー運転手の例と同じです。 7%のインフレが10年間続けば、借金の金額が同じなら、複利効果で実質価値は半分以下になります。高インフレを続けるインフレ税で借金返済の道が見えてきます。 高市首相の財政健全化目標の変更は、これからインフレを加速させる「高インフレ宣言」なのかもしれません。 約1342兆円の借金をインフレ税によって解消する政策の下準備が異次元金融緩和によってできました。 インフレ税がこれから本格的に始まろうとしているのだと私は考えています。 これらのことを理解して、インフレ、ハイパーインフレに備えておく必要があるというのが、近年、私が一貫して主張していることです。 こうした最悪のシナリオも考慮に入れておかないと、資産運用はもちろん、自分の財産を守ることはできないと思うのです。 ---------- 藤巻 健史(ふじまき・たけし) フジマキ・ジャパン代表取締役 1950年東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学にてMBAを取得(米ノースウエスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年米モルガン銀行入行。当時、東京市場唯一の外銀日本人支店長に就任。2000年に同行退行後。1999年より2012年まで一橋大学経済学部で、02年より09年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師。日本金融学会所属。現在(株)フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。2013年から19年、24年から25年までは参議院議員を務めた。2020年11月、旭日中綬章受章。 ----------
フジマキ・ジャパン代表取締役 藤巻 健史