Ⅰ-d 人間のイメージ

Ⅰ-d-37-ⅰ-ア 【夏】 *ɦăg➔ɦă(呉音ゲ、漢音カ)
[字源]人が冠をかぶっている情景 [コアイメージ]覆いかぶさる [意味]なつ
*図は左から金文・篆文。
[解説]
夏は四季の一つ「なつ」の意味と中国人の意味がある。古典では次のように使われている。
①原文:四月維夏 六月徂暑
訓読:四月維れ夏 六月暑に徂ゆく
翻訳:四月は夏の初め 六月は暑さがうだる・・・『詩経』小雅・四月
②原文:華夏蠻貊
訓読:華夏と蛮貊
翻訳:中国人とえびすの人々・・・『書経』武成
①は「なつ」の意味、②は中国人の意味である(華は美称)。
ほかに固有名詞として最初の王朝名(夏→殷→周と変わる)に使われている。
なぜ「なつ」と中国人が同じ音で呼ばれ、同じ視覚記号で表記されるのか。両者を結びつけるのはコアイメージである。
字源・語源から見てみよう。
篆文は「頁(頭部を強調した人の形)+𦥑(両手)+夊(足)」からできている(楷書では「ハ」が省略され「夊」が「夂」に変わる)。『説文解字』では「夏は中国の人なり」と解している。しかし金文は冠(または仮面)をかぶって舞をする人の形と解釈してよい。これで何を表すのかと言えば、「覆いかぶさる」というイメージを表すのである。
コアイメージは深層におけるイメージである。これが表層に現れたのが意味、つまり具体的文脈で実現される意味である。
四季の名は植物を象徴として造形された。植物は夏期に最も繁殖する。この特徴を「覆いかぶさる」というイメージで象徴化する。「覆いかぶさる」というイメージをもつ存在は「なつ」だけではない。家・下・仮・胡なども「覆いかぶさる」というイメージをもつ語である。季節の「なつ」をこれらの語群の一員に入れ、同じ(あるいは似た)音声でɦăgと呼び、夏という図形で表記するのである。かくて夏=ɦăg=「なつ」が結びつく。
一方、イメージは転化することがある。上から覆いかぶさると、下の覆われた分は「ふさがる」「満ちる」という状態になる。これは「隙間なくいっぱいになる」というイメージで、これから面積や範囲が大きいというイメージになる。「覆いかぶさる」から「大きい」へのイメージ転化は胡・湖や奄・俺などにも例がある。
夏の「大きい」という意味は次の用例に見られる。
③原文:夏屋渠渠
訓読:夏屋渠渠たり
翻訳:大きな建物は広々としている・・・『詩経』秦風・権輿
イメージの転化により意味が派生・展開する。「大きい」というイメージから大きな人の意味となる。これが美称となって中国人、中国という意味に転じる。夏に中央の意味を添えて中夏、これから中華の語が生じた。
〈同源語のグループ〉
d-37-ⅰ-ア 「夏」 本項。
d-37-ⅰ-イ 「榎」 「音・イメージ記号)+木(限定符号)」。夏は「覆いかぶさる」「大きい」のイメージ。夏に枝葉が大きくかぶさって、よい木陰を作る木、すなわちトウキササゲ。日本ではエノキに当てる。
d-37-ⅰ-ウ 「廈」(厦) 「夏(音・イメージ記号)+广(限定符号)」。夏は「覆いかぶさる」「大きい」のイメージ。屋根が大きく覆いかぶさる情景。大きな建物の意味。
Ⅰ-d-37-ⅰ-ア 【夏】 *ɦăg➔ɦă(呉音ゲ、漢音カ)
[字源]人が冠をかぶっている情景 [コアイメージ]覆いかぶさる [意味]なつ
*図は左から金文・篆文。
[解説]
夏は四季の一つ「なつ」の意味と中国人の意味がある。古典では次のように使われている。
①原文:四月維夏 六月徂暑
訓読:四月維れ夏 六月暑に徂ゆく
翻訳:四月は夏の初め 六月は暑さがうだる・・・『詩経』小雅・四月
②原文:華夏蠻貊
訓読:華夏と蛮貊
翻訳:中国人とえびすの人々・・・『書経』武成
①は「なつ」の意味、②は中国人の意味である(華は美称)。
ほかに固有名詞として最初の王朝名(夏→殷→周と変わる)に使われている。
なぜ「なつ」と中国人が同じ音で呼ばれ、同じ視覚記号で表記されるのか。両者を結びつけるのはコアイメージである。
字源・語源から見てみよう。
篆文は「頁(頭部を強調した人の形)+𦥑(両手)+夊(足)」からできている(楷書では「ハ」が省略され「夊」が「夂」に変わる)。『説文解字』では「夏は中国の人なり」と解している。しかし金文は冠(または仮面)をかぶって舞をする人の形と解釈してよい。これで何を表すのかと言えば、「覆いかぶさる」というイメージを表すのである。
コアイメージは深層におけるイメージである。これが表層に現れたのが意味、つまり具体的文脈で実現される意味である。
四季の名は植物を象徴として造形された。植物は夏期に最も繁殖する。この特徴を「覆いかぶさる」というイメージで象徴化する。「覆いかぶさる」というイメージをもつ存在は「なつ」だけではない。家・下・仮・胡なども「覆いかぶさる」というイメージをもつ語である。季節の「なつ」をこれらの語群の一員に入れ、同じ(あるいは似た)音声でɦăgと呼び、夏という図形で表記するのである。かくて夏=ɦăg=「なつ」が結びつく。
一方、イメージは転化することがある。上から覆いかぶさると、下の覆われた分は「ふさがる」「満ちる」という状態になる。これは「隙間なくいっぱいになる」というイメージで、これから面積や範囲が大きいというイメージになる。「覆いかぶさる」から「大きい」へのイメージ転化は胡・湖や奄・俺などにも例がある。
夏の「大きい」という意味は次の用例に見られる。
③原文:夏屋渠渠
訓読:夏屋渠渠たり
翻訳:大きな建物は広々としている・・・『詩経』秦風・権輿
イメージの転化により意味が派生・展開する。「大きい」というイメージから大きな人の意味となる。これが美称となって中国人、中国という意味に転じる。夏に中央の意味を添えて中夏、これから中華の語が生じた。
〈同源語のグループ〉
d-37-ⅰ-ア 「夏」 本項。
d-37-ⅰ-イ 「榎」 「音・イメージ記号)+木(限定符号)」。夏は「覆いかぶさる」「大きい」のイメージ。夏に枝葉が大きくかぶさって、よい木陰を作る木、すなわちトウキササゲ。日本ではエノキに当てる。
d-37-ⅰ-ウ 「廈」(厦) 「夏(音・イメージ記号)+广(限定符号)」。夏は「覆いかぶさる」「大きい」のイメージ。屋根が大きく覆いかぶさる情景。大きな建物の意味。
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