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痛覚を失った銀時の話/Novel by ゆらの

痛覚を失った銀時の話

8,453 character(s)16 mins

あぁ、痛みは一つでは無かったんだ

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【痛覚を失った銀時の話】



ゆっくりと瞼を開けるとそこにはもう嫌という程記憶に刻まれているあの憎らしい風景が広がっている。
右手には刀を持ち後ろからは親しい友と…あいつの声がする。
もうこんな思いはしたくないのにいくら抗おうとしても身体は勝手に動いてしまい脳裏に焼き付いて離れないあの記憶と同じ道を辿るのだ。
そして首を斬る瞬間にあの人は記憶の言葉とは違い決まってこう言うのだ。


『もうやめてくれ』と。


そんなの…こっちのセリフだ。もう何度目だろう。
繰り返し、繰り返し見る夢。
最近は、もう毎日のように見ている。
なんとか自分を誤魔化し続け何でもない振りをしていたある日。
目が覚めると、自分の首を絞めていたのだ。
あの人の首が斬れぬように、押さえるように、ぎゅっと、強く。
息苦しさに全身からは汗が噴き出していて当分は唖然としてしまい力が入らなかった。
数日、首に残る手型の痣を見る度に胸を突き刺されたような痛みに襲われた。

あれから眠るという行為がとてつもなく怖くなった。
眠ればまた夢の中であの人を殺さねばならない。それが現実に起こったことであり今も許されないことだからだ。
見るからにどんどん隈ができていき体力も落ちてきた。
こんな銀時は見ていられない。と神楽と新八に病院に連れていかれ医者から睡眠促進剤と栄養剤を貰い無理やり眠らせる事にした。
数日が経ち隈は消え、外も満足に出歩けるほどに回復した時にふと気づいてしまった。いや、気づかざるを得なかった。
道端の小石に躓き受け身が取れずそのまま顔から転んだというのに…痛みを全く感じなかった事に。

顔に触れると手にべったりと赤い液体がつきぽたぽたと地面に滴るのをただ呆然と見ていた。
遠くから「大丈夫か銀さん!派手に行ったなぁ!」「痛そう…救急車呼ぶ?」なんて声が聞こえたがそんなもの全く気にならなかった。

ただその時俺は自分から地面に滴り落ちる血液を見て、冷静にあいつにはバレないようにしていかなければ、と心に決めた。



**



「銀さん、僕達これから出かけてきますから。家にいてくださいね」

「あぁ?なんで留守番?依頼入ってんの?」


なるべく怪我をしないように気をつけて過ごしている中、今日は長谷川さんと飲みに行こうって話していてそろそろ家を出るかなぁ〜なんて考えていた時に何やら忙しなく動いてると思ってた新八が隙間からちょろっ、と顔を覗かせ神楽は手をバイバイと振ってきた。
それにひらひら、と返してやりつつ立ち上がる。

「いや、依頼は入ってないんですけど…何て言うか〜、ちょっと銀さんには万事屋にいて欲しくて…」

どこか口ごもったような怪しい言い方に首を傾げるがまぁ飲みに行くのも控えた方がいいか…と頷いておいた。

じゃあ行ってくるヨ〜と楽しそうに言う神楽とその後ろを着いていく定春、新八に気をつけろよ、と声をかけて自分はまた椅子に腰をかける。
がらがら、とドアが閉まり万事屋に静寂が訪れる。

…うーん。

「退屈ってーのはこういう事を言うんだろうなぁ…」

背もたれにぐぐーっと体重をかけ足をぶらぶらとさせて天井を見上げる。
こういう時いつもなら外に行くんだけどなぁ…
ここを出るなと言われた今、1人で無駄な行動は取れない。

「ジャンプ5週目いくかぁ〜」

溜息をつきながらゆっくりと立ち上がりどこかにぶつかり痣を作らないように気をつけながら玄関の隅に積み重ねてあるジャンプへと向かう。
1番上に置いてある今週号を手に取りさぁまたあの椅子に戻ろうと踵を返した時後ろからまたがらがら、と建付けの悪い音が聞こえた。

神楽が忘れ物でもしたのか…?と振り返ると外から現れたのはあのメガネでも目立つオレンジ髪でもなくて…


今1番会いたいようで会いたくないただ一人の男だった。


「………はぁ!?!?」

「うるせェ、さっさと茶煎れてもてなしやがれ」






Comments

  • ky34ou
    Apr 13th
  • October 24, 2024
  • November 18, 2021
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