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西日本シティ銀行の炎上動画、じつは2024年撮影か。企業が恐れるべきはもう防げない「過去の漏えい」

ITジャーナリスト
イメージ画像。ChatGPTで筆者生成。

 西日本シティ銀行下関支店の行員が、執務室内をSNSアプリ『BeReal(ビーリアル)』で撮影し、顧客7人の氏名や営業目標が書かれたホワイトボードが映り込んだ動画がXで拡散し、炎上しました。

 同行は4月30日に謝罪を発表(※リンク先はPDF)し、対象の顧客には個別に説明するとしています。

 今回の事案は、2026年4月に入ってから起きているITリテラシーに欠ける新入社員による一連の情報漏えい問題のひとつと見られていましたが、じつはそうではありません。

 というのも、動画は約1年半前の2024年に撮影されたものである可能性が高いからです。

ホワイトボードに映り込む「2024年下半期業務目標」、「10月目標」の文字

 問題の動画に映り込んだホワイトボードには、「2024年下半期業務目標」や「10月目標」といった文字を確認できます。また、別の動画ではデスクの上に2025年用と思われる1月・2月のカレンダーが映っています。

 このことから、おそらく撮影は2024年10月の前後だとみられます。

 西日本シティ銀行は4月30日付けの「お詫びとお知らせ」で、撮影時期については触れていません。あくまで動画内の情報から推測される時期であることには注意が必要ですが、ホワイトボードの記述を信じる限り、最近撮影されたものではないと言えそうです。

 つまり、今回拡散している動画は、撮影から約1年半が経ってから世に出てきたものということです。

24時間で消えるはずの映像が、なぜいま出てきたのか?

 BeRealは1日1回ランダムに届く通知に合わせて2分以内に撮影し、24時間だけ閲覧できる仕組みのSNSです。本来であれば、2024年10月に投稿された映像はとっくに消えているはずです。

 では、なぜ今になって出てきたのか? 考えられるのは、当時BeRealを閲覧した誰かがそれを画面録画で保存していた、というケースです。

 当時のBeRealには、スクリーンショットを撮ると投稿者に通知が届く仕組みがありました(現在は廃止済み)。しかし画面録画だとその仕組みを回避でき、実際に今回拡散している動画も画面録画とみられる形式です。

 つまり投稿者に知られないかたちで、誰かが動画を残していたことになります。

 その動画をXに投稿し拡散させたのは、社会問題全般を取り扱う暴露系のXユーザーでした。当該投稿は現在、Xのルール違反として閲覧できなくなっています。そのXユーザーが動画を当時から保存していたのか、別の誰かから提供されたのか、どこかで公開されていたものを転載したのかは現時点で分かりません。

 このあたりは刑事事件にでもならない限り、表に出てくることはないでしょう。

いまから行う研修や再発防止策では「過去の漏えい」を防げない

 この状況から見えてくるのは、企業にとって厄介な問題です。

 不祥事が起きると、多くの企業は社内研修やルールの徹底で対応します。今回の件でも西日本シティ銀行は「コンプライアンス遵守や情報管理の徹底、再発防止に努める」と発表しています。

 これらの対策は、これから起きるかもしれない問題を防ぐうえでは意味があります。

 ただ、今回の件は2024年時点に撮影されたとみられる動画です。研修を強化しても、ルールを厳しくしても、約1年半前の動画を撮影されていなかったことにはできません。

 つまり、今回のようなすでに撮影済みの情報漏えい事件で企業ができることは、炎上したあとの対応に限られます。動画がいつ拡散されるのか、誰が保存しているのかを企業側は把握することはできず、それを世に出させないというコントロールも不可能です。

 これは西日本シティ銀行に限らず、社内の様子を写真や動画などでSNSに投稿された可能性のあるすべての企業に共通する問題です。

「眠っている証拠」を前提にした社員教育が必要に

 そう考えると、社員教育の発想も少し変える必要が出てきます。

 今回のような炎上事件への対応として行われる研修は「投稿しないように」という方向が中心だと思います。そして研修を受けた社員が「もう投稿しないようにしよう」と学習したとしても、じつはすでに投稿済みの可能性が残ります。

 しかもBeRealやInstagramのストーリーズなど、短時間で消えるSNSの場合だと本人自身は「もう消えた(から大丈夫)」と思っているかもしれません。しかし、その写真や動画を周囲の誰かが保存している恐れがあるわけです。

 つまり、これから同じようなことが起きるリスクがあります。

 「投稿しなければ大丈夫」「もう消えてるから大丈夫」ではなく、すでに撮られた動画があるかもしれない、そしてそれがいつか出てくるかもしれないという前提で対応を考える必要があるでしょう。

 具体的には、過去の情報漏えいの可能性の高い投稿について自己申告できる仕組みや、漏えいが発覚した際の初動対応の手順を整えておくことが重要になります。再発防止の研修だけでは、「もう公開済みだけどまだ炎上していないだけ」という事案から会社を守ることはできません。

 今回の炎上は、「シェア」が当たり前のなかで育ってきたZ世代の新入社員による情報漏えい事件のひとつとして語られがちです。しかし本当の問題は、企業が「すでに起きてしまっているが、まだ見つかっていない事案」にこれからどうやって向き合っていくかというところなのだと考えます。

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ありがとうございます。
ITジャーナリスト

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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