『神功皇后論』発売記念 小林よしのりインタビュー
第6回「神功皇后の顔・作画秘話!」
(インタビュアー・にしやん)
ーあと先生にすごくお伺いしたかった事があるのですが、吉備鴨別がタラシヒメに会った時に「この人は常人じゃない。美しさと恐さが同居している」っていうシーンがありますよね。
私は常人じゃないオーラを、実際に愛子さまから感じるんですけど、そういうのを絵で表現するって、すごく難しいと思うんです。例えば神功皇后の顔だとか、主要登場人物の顔には、先生の中でモデルがいらっしゃるんでしょうか。
小林「いやモデルはないね。ないんだよ。やっぱり乗り移らせるしかないっていうかね。結局、漫画で顔を描いたりする時って、かなり呪術みたいなものに近いんだよね。何か自分の中から乗り移らせる、みたいなところがすごく必要になるんだ。」
ーえっ、乗り移るんですか⁈
小林「わしが本当は一番描きやすいというか、得意としているのは、異形のキャラなんだよね。つまり、ものすごく特殊な顔をしたやつ。
女だったら最終フェイスになるけどね(笑)
その方が描きやすくて、乗り移ることがしやすいんだ。平凡な顔だったら感情が入らないんだよね。
それで神功皇后が一番難しいのは、決して異形の顔ではないのに、異形だっていうことを感じさせなきゃいけないところなんだ。これが難しいの!
整った顔なのにただ者ではない、そういうものを漂よわせる為に、筆に魂を込めるという、それが難しいところなんですよ。」
ーそれは…すごいですね!でも先生、それを見事に表現されてますよね!
小林「そう言われると、本当に嬉しいし有難いよね。でもやっぱり本当に難しいんだ。
絵で迫力を出すっていうのは絶対に必要で、このコマはでっかく取って、ちょっと驚ろかせてやろうとか、絶対ここでページをめくる手を止めさせようってなると、ペンを入れる時に、感覚としてかなり力(りき)を入れるよね。
よし、良い絵ができた!と思って、それをうちのスタッフに渡すんだ。
そしてスクリーントーンとかの処理をしたのが上がってきて、それを見ると、絶妙な仕上がりになっていてるの!うちのスタッフは上手いなぁ、凄いなぁって思うんだよ。
ものの見事に、わしの意を汲んでくれた仕上がりになっているんだよね!
それを見たら、わしもまだ十分やれるなって思っちゃったりするんだよね(笑)」
ーそうなんですか!なんだか凄い秘話が聞けた気がして、感激です!
バックナンバー
第1回「古代史から現れたフェミニズム」
第2回「『日本書紀』にも捏造がある!」
第3回「漫画だから描ける、古代人の感覚」
第4回「コンプラ気にして古代が描けるか!」
第5回「『神功皇后論』に仕掛けた罠!」
漫画の絵に魂を込め、迫力を出すのがどれだけ大変なことか。
もちろん、目利きの読者はそれを無意識的にも感じ取っていくわけですが、雑誌文化が滅亡に瀕している中で、目利きの編集者というものがもう育たなくなっているのではないかということを、非常に危惧してしまいます。
それでも漫画文化は終わらない、『神功皇后論』は終わらせない!
次回もどうぞ、お楽しみに!