バウアーが入団した謎のチーム、ロングアイランド・ダックスとは
あのトレバー・バウアーの今シーズンのプレー先が決まったようだ。
本人サイドは、日本の球団だけでなく、韓国、台湾、そして一昨年プレーしたメキシコのチームからも引く手あまただったというが、結局、35歳となるシーズンは母国・アメリカに帰ってプレーすることにしたという。
しかし、昨シーズンNPBで4勝10敗、投高打低の中、防御率4点台半ばのいわくつきの彼を引き取るMLBの球団はマイナー契約でもなかった。新たな行き先は、ロングアイランド・ダックスという日本のファンのほとんどが聞いたことのない球団だった。
ダックスが所属するのは、アトランティック・リーグ。1998年に創設された独立リーグだ。ニューヨーク周辺のいわゆるビッグマーケットを活動エリアにしていることもあり、それまで「独立リーグ最強」と言われていた中西部からカナダ国境にかけてを商圏としていたノーザンリーグをあっという間に追い越して、現在では北米独立リーグの中で最もレベルの高いリーグとされている。MLB傘下のマイナーリーグで言えば、3Aに匹敵すると言われているが、実際は3Aと2Aの中間くらい、アジアで言えば台湾のCPBLと同等くらいのプレーレベルと言っていいだろう。コロナ禍後の2021年からはMLB公認の「パートナーリーグ」のひとつとしてその地位を確立している。
MLB球団とマイナー契約を結んで飼い殺しになるよりは、シーズン途中の欠員補充として自由にチームを選べる立場をキープしたいという元メジャーリーガーの需要も高く、過去には、ホセ・カンセコ、リッキー・ヘンダーソン、王建民、ロジャー・クレメンス、フアン・ゴンザレス、パブロ・サンドバルなど、MLBで一時代を築いた選手もプレーし、このうち何人かは、このリーグからMLB復帰を果たしている。
また、そのレベルの高さからNPBとの親和性も高く、エリック・アルモンテ(日本ハム,2005年)、ブライアン・ネルソン(ダイエー, 2003年)、クリス・オクスプリング(阪神, 2006年)ら多くの「助っ人」がプレーしたほか、田島俊雄(元南海)、仁志敏久(元巨人など)、渡辺俊介(元ロッテ)らの日本人選手がここで現役生活の最後を過ごしている。
ロングアイランド・ダックスは、2000年に創設。以来このリーグでプレーしている。
ダックスの訪ね方
ダックスが本拠を置くのは、ニューヨーク州のセントラル・アイスリップ市だ。ニューヨークシティに隣接して東西に伸びるロングアイランド島のちょうど真ん中あたりに位置する町で、コミュータートレインでアクセスできる。
ニューヨークの中心にあるマジソンスクエアガーデンの地下に位置するペンシルバニア駅から東に伸びる、その名もロングアイランド鉄道の本線に乗って1時間ちょっとでセントラル・アイスリップ駅に到着する。ここからダックスのホーム球場、フェアフィールド・プロパティーズ・ボールパークへは南へ3.5キロ。歩けば小一時間かかるが、夕方ならバスが出ている。あるいは、本線の南側を走るモントーク線のアイスリップ駅からもアクセスできる。
試合後も、ロングアイランド鉄道は24時間運行しているので、深夜便に乗ればニューヨークに帰ることができる。ただし、ナイトゲーム後には、セントラル・アイスリップ駅、アイスリップ駅ともにバスはなくなっているので、駅まではタクシーかウーバーで向かわねばならない。
ちなみに、このロングアイランド鉄道は、J.F.ケネディ空港までのアクセスも担っている。ペンシルバニア駅の手前、ジャマイカ駅が空港へのシャトルの乗換駅で、ナイトゲームを見た後、そのまま空港へ出ることも可能だ。
独立リーグの楽しみ方
前述のとおりアトランティックリーグは、3A級にも匹敵すると言われているハイレベルな独立リーグだ。元メジャーリーガーも数多くプレーしている。そのような選手たちのプレーを小規模なスタジアムで間近から見ることができるという点では、非常にお得だと言える。
そのアトランティックリーグにあって、ダックスは一番の人気球団だ。昨シーズンの1試合当たりの観客動員数は4717人。リーグ平均を2000人以上上回っている。本拠地球場のキャパシティが6000人というから、毎試合スタンドは賑わっているということになる。
私がこのチームを訪ねたのは、ずいぶん前のことになるが、マスコットがところ狭しと動き回って試合を盛り上げ、「球場飯」も充実していた。
MLBもいいが、この夏は、ニューヨークに行くなら、バウアーを見に、アトランティックリーグ観戦もいいかもしれない。このリーグのフランチャイズは、ニューヨーク市内のスタテンアイランドにもあるので、こちらに足を運んでもいいだろう。
バウアーサイドは、ここでのプレーを足掛かりに念願のMLB復帰を目指すとのことだが、正直なところ、これまで日本やメキシコでいい数字を残してもオファーがなかったことや、年齢を考えると、それはかなり難しいだろう。それでもサイヤング賞投手の雄姿がアメリカに戻ることは、ファンにとっても、本人にとっても、ある意味喜ばしいことだろう。
(写真は筆者撮影)