【ファクトチェック】他自治体の要綱改正をめぐる赤澤記者の発言は誤り
はじめに
フリー記者・赤澤氏の発言がSNS上で拡散されている。
その内容は、斎藤知事が「他の自治体でも法改正を踏まえた要綱改正などが行われている」と説明した点について、事実と異なるのではないかとするものである。
本稿では、一次資料である記者会見や委員会の議事録をもとに、この指摘の妥当性を検証する。
結論
議事録を確認したところ、赤澤記者の指摘は、都道府県と基礎自治体という対象範囲の違いを踏まえておらず、誤りである。
問題の所在
本件の争点は明確である。
斎藤知事は、2026年1月14日の記者会見にて、公益通報者保護法の法改正を踏まえて「他の自治体でも要綱改正などの対応が行われている」と説明した。
これに対し赤澤記者は、「担当部局が『知らない』と述べている」として、その説明に疑義を呈している。
すなわち、担当部局の発言をもって、他の自治体における対応の存在を否定したといえるのかが、本件の中心的な論点である。
知事の発言
問題とされている知事の発言は以下の通りである。
「他の自治体においても、現時点で要綱改正などしているところもございます。」
ここで確認しておくべき点は二つある。
第一に、「自治体」という語は市町村を含む広い概念であること。
第二に、「要綱の改正“など”」とされており、対応の内容が要綱改正に限定されていないことである。
赤澤記者の根拠とされる発言(2月13日)
赤澤記者が「担当部局が『知らない』と述べている」と根拠としているのは、2月13日の総務常任委員会における県政改革課長の次の発言である。
「他県においては、この法改正の内容を反映して、先に改正しているということは、今のところは聞いておりません。」
では、実際の2月13日の総務常任委員会の発言です。
— 東京ファクトチェック協会(TFA) (@tokyo_factcheck) March 25, 2026
県政改革課長:
「他県においてはですね、この法改正の内容を反映して、先に改正しているということは、今のところは聞いておりません。」 pic.twitter.com/oedlkhQ7H1
この発言は一見すると、先行事例が存在しないことを示しているようにも読める。
しかし、ここで注意すべきは、発言の対象が「他県」、すなわち都道府県に限定されている点である。
この点を整理すると、以下のようになる。
知事の発言:自治体(市町村を含む)
課長の発言:県(都道府県)
両者は対象とする範囲が異なっている。
したがって、「他の都道府県で確認されていない」という事実から、「自治体全体でも存在しない」と結論づけることはできない。
追加議事録(令和7年8月18日)の内容
さらに重要なのが、令和7年8月18日の総務常任委員会におけるやり取りである。
県政改革課長は、3号通報の体制整備の検討状況について、
「ここで詳細は言えないが、先行している事例もある」
と述べている。
その後の質疑において、次のように説明している。
「都道府県レベルでは確認は取れていないが、基礎自治体レベルではあった。」
この発言により、少なくとも基礎自治体においては、先行事例が存在することが明らかになっている。
議事録から確認できる事実とその含意
以上の議事録から確認できる事実は以下の通りである。
都道府県では先行事例は確認されていない
基礎自治体では先行事例の存在が確認されている
すなわち、「自治体」全体として見た場合、先行して対応している事例が存在すること自体は確認されている事実である。
もっとも、これらの議事録において確認できるのは、あくまで3号通報体制整備に関する文脈における先行事例の存在であり、「要綱改正」が明示的に確認されているわけではない。
したがって、「要綱改正が行われている」と断定することはできないが、少なくとも法改正を踏まえて「対応が先行している自治体が存在する」という点は裏付けられている。
そもそも、知事の発言は「要綱の改正“など”」とされており、対応の内容は要綱改正に限定されていない。
この点を踏まえると、「要綱改正」に限定して先行事例の有無を論じること自体が、発言の射程を狭めた評価であると言える。
また、議事録では調査の状況についても言及されている。
具体的には、電話による聞き取り段階であり、公表の可否も確認されていないため、団体数は明らかにできないとされている。
これは、各自治体の状況が正式な照会に基づくものではなく、非公式な把握にとどまっていることを意味する。
したがって、この時点では、具体的な自治体名を挙げて説明できる状況にはない。知事が個別事例を示さなかった背景には、このような調査上の制約があると考えられる。
評価
以上を踏まえると、赤澤記者の主張は、都道府県に関する情報をもとに自治体全体について結論を導いている点で、対象範囲の異なる情報を混同した構造になっている。
また、知事の発言が「要綱の改正“など”」とされているにもかかわらず、「要綱改正」に限定して先行事例の有無を論じている点でも、発言の射程を狭めた評価となっている。
しかし、両者は対象範囲および前提の設定が異なる以上、このような推論は成立しない。
にもかかわらず、これらの差異を踏まえずに知事の発言の正否を論じることは、議事録の文脈を適切に反映したものとは言えない。
本件の指摘は、前提の設定に問題があり、結果として誤った印象を与えるミスリーディングな主張となっている。
結論
本件において確認できるのは、以下の事実である。
・都道府県では先行事例は確認されていない
・一方で、基礎自治体では先行事例が存在する
したがって、担当部局の発言をもって、知事の「自治体」に関する説明を否定することはできないため、赤澤記者の発言は誤りである。
本件が示す構造的課題
なお、赤澤記者の指摘については、過去にも事実関係の整理に問題があったことが確認されている。
例えば、竹内元県議によるいわゆる「ゆかた祭り」事案に関しては、赤澤氏は「竹内元県議はゆかた祭りデマを広めていない」と主張しているが、これは事実誤認に基づく指摘であることが、関係者証言や時間軸の検証から明らかにされている。
この点を踏まえると、本件についても、発言の対象範囲や前提条件を整理しないまま結論を導いている点で、同様の構造的問題が繰り返されている。
さらに、赤澤記者については、斎藤知事の辞任を求めて街頭で抗議の声を上げる活動(いわゆるプロテスト)に参加し、同様の主張を掲げる人物とともに行動している様子も確認されている。
ここで問題となるのは、政治活動そのものではなく、それが会見での質疑の中立性に影響し得る点である。
兵庫県の定例記者会見は、兵庫県と記者クラブの共同開催であり、兵庫県民の税金が投入されている。
そのような公的な場において、
前提整理を欠いた指摘が繰り返され、
かつその発信主体が特定の政治的主張を掲げる活動に参加している
という状況は、会見の公平性・信頼性を損なうものであり、制度的に看過できない問題である。
適切な事実関係の整理に基づく質疑が行われるよう、会見運営の在り方も含めた改善が求められる。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
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これからもどうぞよろしくお願いいたします。



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