「婚活」

 

今の世の中は、何にでも「活動」というラベルを貼りたがる。 かつてのノリトは、「向上心」という免罪符を掲げて職を転々としてきた。営業、開発、研究、そしてレギュラトリー。その都度、目の前には「就活」という名のゲートが立ちふさがり、彼は流行り言葉へのアンチテーゼとして、まるでおまじないのように「向上心」という言葉を吐き捨ててはゲートを潜り抜けてきた。

 

 

だが、ふと立ち止まると、今の自分が「根無し草」であるという事実に突き当たる。 現在の精緻な品質マネジメント業務と、当時の行き当たりばったりな人生設計。その矛盾したログが脳内で複雑に絡み合い、ノイズを発生させていた。

 

 

相変わらず、ブラックコーヒーとMacBookを相棒に、淡々と不具合を修正する毎日。 かつては、そんな彼の背中を面白がり、愛用の鉛筆でササっとスケッチしていた口下手な努力家のデザイナーがいた。だが、そのキャンバスはもう白紙に戻り、部屋の空気は無機質な静寂に支配されている。

 

 

ノリトは、誰の背中も借りず、ただ独りで一歩を踏み出す決意を固めた。 これから迷い込むのは、合理性と非合理がグチャグチャに混ざり合った「婚活」という名の大迷宮だ。

 

 

生来、女性関係に関しては「致命的な仕様不足」を抱えているという自覚はある。 だが、エンジニアとして、このまま孤独死という名のシステムダウンを待つわけにはいかない。

 

 

ノリトは、未知のプログラムに立ち向かう騎士のように、一枚のMacBookを抱えて戦場へ向かった。 そこにあるのは、かつてのアイロニーと、今の彼を支える血の通った「成果主義」。 そして、自分を再定義するための、新しい人生のコンパイル作業だった。

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