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イラン危機が問いかける「脱・石油」の未来とは─日本主導のイノベーションで持続可能な世界へ─ #エキスパートトピ

科学ジャーナリスト
写真:ロイター/アフロ

 米国とイスラエルによるイラン攻撃により、ホルムズ海峡が実質的に閉鎖され、世界的な石油危機が生じています。日本でも原油価格の高騰や供給不安が進み、プラスチック製品やナフサ由来の化学製品の供給不足が深刻化する恐れが高まっています。

 今回の危機により、原油依存、化石燃料依存に陥っている世界の脆弱性が改めて浮き彫りになりました。新型コロナ禍でも危機が過ぎると、瞬く間に以前のような成長至上主義の経済システムに戻ってしまいました。今回の危機を、私たちは果たして教訓にできるのでしょうか。

ココがポイント

日本はエチレン原料の95%をナフサに依存し、その4割超を中東から調達している。
出典:LogisticsToday 2026/3/27(金)

価格を下げれば、かえってガソリンの消費が増えかねないため、むしろ節約を呼びかけるべきだ
出典:TBS NEWS DIG 2026/4/4(土)

中東ホルムズ海峡の事実上の封鎖を受け、国内でナフサの供給が不足している。首相は「中東以外からのナフサ輸入量を倍増する」と
出典:日本経済新聞 2026/4/5(日)

エキスパートの補足・見解

 今回の危機では、コロナ禍のような短期的な痛みで終わらせず、脱・石油のイノベーションを進めるべきです。ポテンシャルを持つ日本がこうした技術革新を主導すれば、資源輸入国としての脆弱性を変え、世界の持続可能なモデルをも変える可能性があります。

 石油代替技術として、プラスチック分野ではバイオベース素材(海藻由来ポリマー、キノコの菌糸体複合材、植物セルロース由来の生分解性プラスチック)などがあります。ナフサの代替には、バイオナフサ(廃食用油や植物油由来)、廃プラスチック熱分解油、MTO(メタノールからオレフィン)プロセスがあり、全く別の技術として人工光合成があります。ただし、一部の医療機器や特定の電子部品など代替が難しい製品は残りますが、これらでも必要最小限の使用と高度リサイクルを組み合わせるアプローチが可能です。

 戦争は最も深刻な環境破壊をもたらします。イランで戦争は続いていますが、日本が持つ技術力を政策的に推し進め、需要削減、循環型経済、代替素材の開発を加速させれば、環境保全と経済安全保障、そして持続可能な経済活動が可能になります。日本は資源輸入国として、世界を変えるチャンスをリードできる存在でもあるのです。

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科学ジャーナリスト

法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科博士課程満期退学、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。「科学と技術をわかりやすく」をテーマに幅広いジャンルの記事を書いている。日本医学ジャーナリスト協会会員。サイエンス系単著『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュース『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)など。

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