時浦兼(トッキー)

「漫画だから描ける、古代人の感覚」神功皇后論インタビュー・第3回

時浦兼(トッキー)

2026年5月1日 16:43

『神功皇后論』発売記念 小林よしのりインタビュー
第3回「漫画だから描ける、古代人の感覚」

(インタビュアー・にしやん)

小林よしのり最新作!神功皇后論

小林「神功皇后の時代は、そのシナ儒教の影響がない、もっと前の時代。
その時代は合議制だからね。血縁とか関係なく、合議制で決めていた。
ということは、やはり神功皇后はものすごく優秀だったんでしょう。しかも呪術も使える!神秘的でミステリアスだったんですよ。しかもなおかつ、体が凄くいい‼︎(爆笑)
だから羽白熊鷲(はしろくまわし)は、いつも覗き見ばかりしているということになっちゃうわけだよね(笑)

小林「いや、本当に覗き見していましたとは日本書紀には書いてないよ、そりゃあ(笑)」

小林「羽白熊鷲は最終的に神功皇后と敵対することになるんだけど、熊鷲は地元のヒーローだからね。
筑紫平野のその土地に行けば、神社などには羽白熊鷲の伝承が実際にあって、そこでは翼があって空を飛ぶ人になっている。」〈※1〉

小林「でも人間が空を飛ぶなんて、絶対あるはずがない。古代に人が飛んでたらおかしいでしょう?
だから最初はどうやってそれを描こうかなって思ったんだ。グライダーみたいなのものを付けて飛ぶ…ってしたらリアルだなと思ったの。それを付けて高いところからバーッと降りていく、そういう描き方にするかなと思ったんだけど…」

小林「でも伝承では『空を飛んでいた』となっているんだ。昔の人が書き残した記録がちゃんとある。
わしはそれを、つまり今を生きる人間が、全部変えてしまっていいのか?と考えたんだ。それでやっぱり今の驕りでは描けないなと思った。だから結局、本当に空を飛ぶ人を描こう思ったわけよ。
しかし、じゃあ一体どうしたらいいんだろうかと。これはもう仕方がない、羽が生えてる人間にするしかないなって思ったんだよ。
ただ、飛んでいるんだったら、絶対上からタラシヒメの行水を覗いてたなって(笑)それはもう男の願望だなっていう(爆笑)」

小林「神功皇后の名前の『オキナガタラシヒメ』は漢字で書くと『息長帯比売』(書紀では『気長足姫』)と書くんだ。息が長い、と。当時は音しかないから、カタカナで書くしかない。でも、後になってなるべくその意味合いに近い漢字を当てるんだよね。だから漢字ってすごいよ。」〈※2〉

小林「そう。だからオキナガタラシヒメ(息長帯比売)は、すごく潜水できたんだなって思っちゃうわけだよ。エピソードの中にもあるんだよね。潜水したというような話が。しかも人前でパッと飛び込んだみたいな話もあるんだ。
あぁそうなのか!と。だったらいちいち衣を脱いで下着になんかなるわけないだろうと。
バッと脱いでバッと飛び込むぐらいの女だったんだなとわしは思っちゃうわけね。
古代の女性が、しなしなと衣を肩から脱ぐ、みたいなことがやるわけがないよ。
だからやっぱり絶対バッといってバッだなと(爆笑)。

小林「わしが描いたのは、空想的だし殆ど妄想ですよ。
けれども実際はわからないよ?もしかしたらこれが現実だったかもしれない。リアルだったかもしれない。
そしてこういう表現は、やっぱり漫画っていう媒体だからこそ活かせるし、描けるわけでしょ? 古代人の感覚でね。
(つづく)

〈※1〉羽白熊鷲伝承は、現在の福岡県朝倉市矢野竹を中心に分布する。日本書紀に書かれた「反逆者」としてではなく、製鉄技術などに長けた郷土の豪族として称えられ、屈強で翼を持ち、空から兵を襲うため、神功皇后も容易には勝てない存在だったとも伝わる。

〈※2〉神功皇后は記紀では息長宿禰(おきながすくね)王の娘とされており、「オキナガタラシヒメ」の「オキナガ」は、現在の滋賀県米原市・長浜市周辺、特に天野川(息長川)流域を本拠とした豪族「息長氏」の出身であることを示しているとする説が有力。

バックナンバー
第1回「古代史から現れたフェミニズム」
第2回「『日本書紀』にも捏造がある!」