Photo by Shinya Nishizaki
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トランプ現象とファシズム

浅田 この機会に復習しとくと、ファッシってのは束、ファシズムはいわば結束主義で、国民共同体の一致結束を目指す。それは階級闘争を軸とする社会主義・共産主義に対して出てきたわけ。ナチスの国民社会主義ってのも文字通りそう。

もちろん古き良き国民共同体の結束なんてのは幻想なんだけど、その幻想に基づき、それを脅かす外来のウイルス、たとえば金融資本主義や社会主義・共産主義を排除しようとする。そこで「金貸しはユダヤ人の生業だった、金融資本主義を越えると称する社会主義・共産主義もユダヤ人マルクスの思想だ、ユダヤ人を排除しろ」って話になったりするわけね。

資本主義と社会主義・共産主義なら一応理性的な論争が成り立つのに対し、古き良き国民共同体の結束ってのは幻想だから論争にならない。もっぱら感情に訴えかけ、ついには暴力に走ることになる。

こうしてみると、トランプ現象もファシズムに近いところがあるんだよね。キリスト教徒白人男性が威張ってられた「古き良き偉大なアメリカ」が、金融資本や社会主義・共産主義、さらには有色人種、女性や性的マイノリティ、非キリスト教徒、その他の外来ウイルスに蚕食されている、こういうウイルスを駆除して「偉大なアメリカ」を再び取り戻そう、と。

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浅田 だけど、そんな「偉大なアメリカ」は実際に存在したことのない幻想に過ぎないんで、結局は怪しげな陰謀論を振りまいて感情に訴えかけ、暴力に走らせるほかない。

トランプ現象の最も危険な部分は、論争と選挙で決着を付ける、敗者は敗北を認めるっていう当然の前提さえ覆し、2020年の大統領選挙は民主党が不正に勝利を奪ったっていう無根拠な大嘘で支持者を議会襲撃にまで走らせたところにある。

それがいまも続いてて、10月31日には民主党のナンシー・ペロシ下院議長の自宅にトランプ支持者が乱入して82歳の夫の頭蓋骨を割るって事件まで起きた。ナンシーが家にいたら膝の皿を割って思い知らせるつもりだったっていうから恐ろしい。

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大統領になってから政局とは距離を置いてきたジョー・バイデンも、中間選挙のキャンペーンが本格化してきた8月25日の民主党集会で過激なトランプ派の思想を「セミファシズム」って呼んだけど、トークショー・ホストたちがそれは間違いだって言ってたよ、「セミ」をつける必要はないって(笑)。

さらに、同様な文脈で言えば、「西側の干渉によって損なわれたロシア・白ロシア・ウクライナのスラヴ民族の栄光を再興する」っていうロシアのウラディーミル・プーチン大統領も、「西洋列強や日本の干渉によって損なわれた偉大な中華民族の栄光を取り戻す」っていう中国の習近平国家主席も、虚構の「失われた栄光」を取り戻すため暴力の行使も辞さないって意味でファシズムにつながりかねないところがある。

日本の安倍晋三元首相殺害はまた別の文脈で考えなきゃいけないけど、世界が総じて危険な方向に向かってるってことは意識しとくべきだと思うね。

この対談は連続対談のPart4です。
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