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Vol.550「『戦争』の反対は『平和』ではない」

(2025.9.23)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…日本人は、「外交」とは「友好」のことだと思うほど「平和ボケ」してしまっているが、外交とはもともと「戦争」だと認識しておかなければならない。国家同士が戦い、負ければ莫大な国益を失うこともあるのだから、これは果てしなく「狭義」に近い戦争である。国家と国家は、軍事を用いるか否かに関わらず、常に戦争をしていると言えるのだ。外交も戦争だと考えれば、「戦況」は常に変化しており、敵・味方が入れ替わる可能性もあり、その観察と分析が死活問題になるということは容易に認識できる。その情勢分析についてとても参考になる本があった。ワシントン在住の投資コンサルタント、斎藤ジン著『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』(文春新書)である。著者の斎藤ジン氏によれば、今の世界は歴史的な転換点にあり、しかもそれが日本にとっては千載一遇のチャンスであるという。齋藤氏が指摘する世界秩序の転換とは?そして、そこから考える日本が採るべき対策とは何か?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…日本では、高齢化への危惧から、2003年に「国民の健康維持と現代病予防」を目的とした「健康増進法」という法律が施行されている。厚労省は、この法律に基づいて、日本人が食事からどのぐらいのエネルギーや栄養素をとるべきなのかを示した「日本人の食事摂取基準」を発表している。それと関連して、厚労省は「健康日本21」と銘打って、国民が健康になるよう具体的に実践させていく計画を立ち上げているのだ。基本的な目標は「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」だそうだが、厚労省が準備した概要資料に掲げられている驚愕のビジョンとは!?
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1. ゴーマニズム宣言・第579回「『戦争』の反対は『平和』ではない」

「『戦争』の反対は『平和』ではない」
 わしが『戦争論』でそう描いてから27年が経つが、未だに誰もそれをわかっていない。この最も肝心なテーゼすら理解されないまま、わしは死んでしまうことになるのだろうか?

 わしは『戦争論』で、「『平和』という(状態)の反対は、『混乱』という(状態)」であり、「『戦争』という(手段)の反対は、『話し合い』という(手段)」だと描いた。

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「戦争」も「話し合い」も、共に外交の「手段」のひとつである。
 わしはこれに続けて「戦争は外交の延長であり、話し合いで双方がどうしても折り合いがつかぬ場合に、やむなく用いる手段である」と描いた。
 これは19世紀の軍事学者・クラウゼヴィッツが『戦争論』で書いた「戦争は他の手段を持ってする政治の継続にすぎない」という言葉と同じ趣旨であり、本当は古典的でスタンダードな戦争観なのである。

 ここで混乱を避けるために、言葉の整理をしておきたい。
「戦争」には二つの意味がある。
『精選版 日本国語大辞典』では、こうなっている。
〈1〉 軍隊と軍隊とが、兵器を用いて戦うこと。特に、国家が他国(交戦団体を含む)に対し、政治的意思を貫徹するためにとる最終的かつ暴力的手段。
〈2〉 比喩的に、〈1〉を思わせるような激しい競争や混乱。
 どの辞書でもだいたい同じである。
 つまり戦争には、軍事力を行使する〈1〉「狭義の戦争」と、軍事を伴わない〈2〉「広義の戦争」があるのだ。
 こんな言葉を使うと、慰安婦問題で左翼の運動家が「広義の強制連行」などというインチキ用語を作ってきたのを思い出してイヤな気持ちになるが、もともと「狭義」とか「広義」とかいう言葉はこのように使うものだ。
 上に挙げた「戦争は外交の延長」という表現の場合の「戦争」はもちろん「狭義」の戦争だが、そもそも外交自体がそれぞれの国益と国益がぶつかり合う熾烈な戦いなのだから、外交そのものが「広義」の戦争だといえる。
 つまり軍事を行使しなくても、外交とはもともと「戦争」だと認識しておかなければならないのだ。
 ところが日本人は、「外交」とは「友好」のことだと思うほど「平和ボケ」してしまっているから、大問題なのである。

 外交とは戦争である。
 それも、「受験戦争」や「興行戦争」というような、比喩的な意味には留まらない。
 国家同士が戦い、負ければ莫大な国益を失うこともあるのだから、これは果てしなく「狭義」に近い戦争である。国家と国家は、軍事を用いるか否かに関わらず、常に戦争をしていると言えるのだ。
 外交も戦争だと考えれば、「戦況」は常に変化しており、敵・味方が入れ替わる可能性もあり、その観察と分析が死活問題になるということは容易に認識できる。
 そして、その情勢分析についてとても参考になる本があった。ワシントン在住の投資コンサルタント、斎藤ジン著『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』(文春新書)である。

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 著者の斎藤ジン氏は「ジョージ・ソロスを大儲けさせた伝説のコンサル」とも呼ばれながら、これまで表舞台には登場しなかった人物だ。だが、今の世界は歴史的な転換点にあり、しかもそれが日本にとっては千載一遇のチャンスであるということを知らせるために、初めて本を書いたという。

 齋藤氏が指摘する世界秩序の転換とは、この30年余りアメリカが主導してきた「新自由主義的な世界観」の崩落である。
 そして今起きているアメリカにおけるトランプ現象や、イギリスにおけるブレグジット、欧州における極右や自国中心主義の台頭米中対立ウクライナ戦争などは、いずれも新自由主義に対する反乱として現れたものだという。
 齋藤氏自身は自らを「新自由主義の申し子」と称している。バブル崩壊を機に日本の大手都市銀行を退職して単身アメリカに留学し、個人の才覚で投資コンサルタントとしてのキャリアを積み、また、トランスジェンダー女性であることをカミングアウトしている氏にとっては、ビジネスにしても、生き方にしても、新自由主義の価値観が続いてくれた方が望ましいという。
 だが齋藤氏は、「希望は戦略ではない」という。望んだところで現実はそうならないことがもう見えているのだから、現実に対応していくことが「戦略」だというわけだ。

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Vol.550「『戦争』の反対は『平和』ではない」|小林よしのり
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