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理論と実践の狭間で漂流する数学趣味人の記録

応力テンソル

物体に働く力は大きく分けて2種類あります。一つは物質に直接働く重力や電磁気力などの体積力、もう一つは物質の境界を通じて働く力である面積力です。今回は面積力である応力テンソルを取り上げたいと思います。

応力テンソルの定義

定義 (E,V) を3次元ユークリッド空間*1ME を開部分集合とする。いま点 PM において 面分 abV2a,bVab0 を満たす、つまり平行ではないとする)を通じて力 FV が掛かっているとき、点 PM における応力を (ab)F で与える。ただし内積線型空間としての自然同型 VV による同一視の下、(ab)F(V)2V と見做す。従って応力は共変テンソルC(M,(V)2V) の要素である。

 

応力を反変テンソルC(M,V2V) ではなく共変テンソルC(M,(V)2V) で考えるのは、応力に関する具体的な計算に古典的なベクトル解析ではなく微分形式の理論を使うためです。

 

力のつり合い

ME に働く応力と体積力のつり合いを考えます。

はじめに応力について考えます。σC(M,(V)2V) を応力テンソル場、(x1,x2,x3)M における直交座標とするとき、σ

σ(P)=i,jσij(P)(dxi)P(dxj)P

と表されます。ここで (dxi)P のホッジ作用素 による像 (dxi)P(V)2 は力が作用する作用面を表しています。また (dxj)P は力の方向を表します。

各面分 (dxi)P に働く応力 jσij(P)(dxj)PnV 方向成分は jσij(P)(dxj)P,n なので、PM における全ての面に関する応力の n 方向成分は

ijσij(P)(dxj)P,n(dxi)=σ(P)n

と書くことが出来ます。ただし右辺は特定の座標に依存しない式であり、 (V)2VLin(V,(V)2) という同一視により σ(P)Lin(V,(V)2) の元と見做しています。

よって XM を中心とした半径 δ>0 の球形の領域 Uδ(X) に掛かる応力の n 方向成分は、2形式の積分

Uδ(X)σn

で表されます。

次に体積力について考えます。FC(M,V) を力の1形式とすると、F,nC(M)FnV 方向成分なので体積要素に掛かる体積力は3形式 F,nC(M,(V)3) で与えられます*2。従って Uδ(X) に作用する体積力の n 方向成分は

Uδ(X)F,n

と表されます。

ここで面積力と体積力のつり合いを以下で定義します。

定義 点 XM に掛かる面積力と体積力がつり合うとは任意の δ>0nV に対して次式が成り立つときを言う:

Uδ(X)σn+Uδ(X)F,n=0.

 

Gauss-Stokes の定理により上式は

Uδ(X)(d(σn)+F,n)=0

となります。さらにこれが任意の δ>0 で成立するので、点 XM

d(σn)+F,n=0

が成り立ちます。XM の任意の点より、上式は M 上で成り立ちます。

ここで

d(σn)=i,jdxj,ndσij(dxi)=i,jσijxjdxj,n

より、つり合いの式は座標を使って

i,jσijxjdxj,n+jFjdxj,n=0

と書くことが出来ます。さらに、これが任意の nV で成り立つことから、

iσijxj+Fj=0,j=1,2,3

となります。

*1:ユークリッド空間の定義はひずみテンソルの記事をご参照下さい。

*2:dx1dx2dx31 に等しいことを利用しました。